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アオマスの小説

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どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。
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2021年11月の記事一覧

紡がれたハンカチ (小説)

1 『不思議なおばあちゃん』  空はずっと青い。小さい頃、僕は両親にそんな幻想を教わった…

蒼乃真澄
2年前
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蒼いユニフォームを纏って 8

 あれから七年ほどが経ち、モーゼスは見事に夢を叶えた。  試合が終わった後、明日は休日だ…

蒼乃真澄
2年前
3

蒼いユニフォームを纏って 7

 モーゼスは再び校庭でサッカーができるようになった。 「僕も日本人なんだ。そう思えるよう…

蒼乃真澄
2年前
2

蒼いユニフォームを纏って 6

「真島。それは『差別』といって、絶対に言っちゃいけない言葉なんだぞ」  諭すように、それ…

蒼乃真澄
2年前
3

蒼いユニフォームを纏って 5

 ある日の帰り道。その日はポツポツと雨が降っていて、僕もモーゼスもまっすぐ家へ帰ろうとし…

蒼乃真澄
2年前
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蒼いユニフォームを纏って 4

 来る日も来る日もサッカーに没頭していた僕らだったが、ある日突然、モーゼスだけが放課後に…

蒼乃真澄
2年前
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蒼いユニフォームを纏って 3

 それから僕たちは放課後になると、毎日のように小学校にある校庭でサッカーに明け暮れていた。僕らだけでなく、クラスの生徒はもちろん、他のクラスの生徒や他学年の生徒まで、総勢五十人以上で校庭を元気に駆け巡っていた。  その中でも一際目立っていたのがモーゼスだった。彼は大地を猛烈な速さで走るヒョウの如く相手を抜き去り、ダンスをするようなステップでフェイントをかけて騙していく。そして隙が生まれたら、すかさず矢を放つような鋭いシュートでゴールネットを突き刺していった。 「やべえよ。

蒼いユニフォームを纏って 2

 それは桜が散って路肩にかき集められた頃。四年生になったばかりの僕がいた教室に、突如転校…

蒼乃真澄
2年前
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蒼いユニフォームを纏って 1

『左サイドにはモーゼスが張っていた。さあ、ここから一気にドリブルで駆け上がるぞ。三人抜い…

蒼乃真澄
2年前
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加味、合わず (短編小説)

「海斗、朝ごはんできたよ」  お皿が机に乗せられる音がして、僕は食卓へ向かう。食卓には、…

蒼乃真澄
2年前
4

黄金の卵 (短編小説)

 北風が吹き荒れ、グラタンが恋しくなるほど身体が冷え切っている。妻から買ってもらった腕時…

蒼乃真澄
2年前
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パン屋さん (短編小説)

「今日から働かせていただきます、大野です。よろしくお願いします」  俺は売り場でパートリ…

蒼乃真澄
2年前
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最期の迷子 4(完)

 三ヶ月後。大寒のが過ぎた頃のとある日にキクミちゃんから連絡があり、先日キクゾウさんが亡…

蒼乃真澄
2年前
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最期の迷子 3

 僕のスマートフォンにどこからかメールが来て、ブーっと振動する。僕は画面をチラリと見て、すでに十一時を過ぎていることを知る。キクゾウさんは相変わらず周りをウロウロと見渡しながら、時折綺麗な花を見つけると立ち止まり、少しの間観察をしている。あまり疲れている様子もない。 「キクゾウさん、お母さんは見つかりそうですか?」  僕が訊くと、キクゾウさんは振り返って、 「お母さん、見つかりません」  と答える。 「じゃあ、もう少し先を歩いてみましょうか」 「ありがとうございま