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蒼いユニフォームを纏って 8



 あれから七年ほどが経ち、モーゼスは見事に夢を叶えた。

 試合が終わった後、明日は休日だからと、僕は夜中までテレビを見ていた。ただ、特に面白い番組とも出会えなかったから、もう寝ようと思ってスイッチを消そうとした。

「続いてはスポーツです」

 陽気なお笑い芸人が司会をしているスポーツ番組で、今日の代表戦のハイライトが流れている。モーゼスの活躍が目立ったからか、ほぼ全ての映像に彼が映っていて、僕は誇らしくなった。

「さすがモーゼス選手。期待された通りの活躍を見せてくれましたね」

 隣にいたアナウンサーとそんな会話がなされた後、

「続いて特集です。今日代表戦で見事な活躍を見せてくれたモーゼス選手に、事前にインタビューをしました」

「インタビュー?」

 僕は思わずボリュームを上げる。姿勢を前のめりにして、彼の言葉を聞く体勢を取った。

「モーゼス選手、今日はよろしくお願いします」

 先ほど出てきたアナウンサーとモーゼスが対面になって座り、アナウンサーが繰り出す質問にモーゼスが答えていく。

「モーゼス選手が人生の中で印象に残っている出来事ってありますか?」

 過去の思い出話へと話題が移ったとき、アナウンサーがそんな漠然とした質問をぶつけた。

「そうですね。僕の人生と言いますか、生き方を変えてくれた出来事があります」

 モーゼスは少し声のトーンを落とし、大切な思い出を話す。

「小学校四年生の頃、同じサッカーをやっていた人間から差別的な言葉を言われました。お前は日本人じゃないって、結構しんどい言葉を言われて。でも、そのとき僕の親友が『モーゼスは日本人だよ』って、僕のことを励ましてくれたんです。それが嬉しくて、僕を勇気付けました。それからもその親友がくれた大切な言葉を大事にしながら練習してきました」

「そんな過去があったのですね。でも、そんな逆境を乗り越えて見事に日本代表になることができたわけですね」

「はい。本当に親友のおかげです。それに、彼とはずっと日本代表になる夢を追っていました。彼のおかげで夢を叶えることができたと思います」

「そんな親友のためにも試合に出て活躍したいですね」

「はい。絶対に点を取ってみせます。そして彼と一緒に夢を叶えます」 

 僕が放った正直な想いが今でも彼の胸の中に残っていることが嬉しくて、自然と涙が溢れてしまった。

「モーゼス、夢を叶えてくれてありがとう」

 蒼いユニフォームを纏ったモーゼスはこれからも輝き続けるだろう。その姿に背中押されながら、僕も前へ進む。


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