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蒼いユニフォームを纏って 4




 来る日も来る日もサッカーに没頭していた僕らだったが、ある日突然、モーゼスだけが放課後に校庭を使えない『ルール』が設けられたのだ。それは僕らよりも上の学年で、この地域でも有数の点取り屋だった真島が決めたことだった。

「モーゼスは強すぎるからダメ。俺たちの練習の邪魔になるから」

 そんな幼稚な理由でハブられてしまったモーゼスは、その日から校庭では練習できず、近くにあった空き家の隅にあった小さな広場でボールを転がすことになった。

「おかしいよ。こんなの!」

 僕はモーゼスがリフティングしている片隅で座り、泣きじゃくった。

「なんでモーゼス君が追い出されないといけないんだよ。お前たちが下手くそなだけなのに!」

 しかし、モーゼスは猛進的なプレーとは裏腹に、性格は穏やかで優しかった。だからこの不測な事態も素直に受け入れてしまった。

「しょうがないよ。彼らの方が年齢も上だから。それに、たしかに僕は他の人のことなんて考えていなかったかもね。サッカーに夢中になると昂る気持ちが抑えられないからさ」

「でも、やっぱりおかしいって」

 こんなこと、絶対にあってはいけない。僕の心の中に芽生えている違和感は確実に増長していた。

 だけど、僕には勇気がなかった。一歩踏み出して「おかしい」と言う勇気がない。どうしても怖くて、もしかしたらいじめに遭ってしまうのではないかと恐れてしまって、尻込みしてしまう。臆病な自分が自分で情けなくなるが、それ以上に恐怖心が優ってしまっていた。

「ありがとう、カズ君。カズ君は僕の味方をしてくれるんだね」

「うん。だって僕たち、友達だから」

 お母さんに言われた言葉が頭の中で反芻する。僕とモーゼスは友達なんだ。だから大切にしなければいけない。守らなければならない。

「カズ君って、ナイスガイだね」

 モーゼスはいつも僕に見せてくれる太陽のように眩しい笑顔をして、「じゃあ、一緒にパス練習しようか」と前向きな言葉を言ってくれた。

「うん」

 僕はモーゼスの味方でいたい。そう思いながら、彼の正確なパスを受け止めていた。



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