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エッセイ『人生どう転ぶかわからない #2』

ダイヤモンドダスト舞う、凍てついた冬のとある日、
私は飼い猫のシロに「もう帰ってこなかったらごめんね」と
小声で伝えて家を出ました。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

母のかわいた声色から察するに、私の朝の挙動に
少しの不審も抱いていない様子でした、

私は通学路の三番目の交差点の角を、
周囲に同級生がいないことを何度も確認した上で
学校と真逆の方向を目指して歩き始めました。

行き先は、もう決めてありました。

ヒントはフランダースの犬の、ネロとパトラッシュが移ろった
あの悲しいエンディングシーン。

同じ町内にあるカトリック教会の聖堂に身を潜めようと思ったのです。

平日は6時からの早朝ミサ以外は行われないことを、
教会前の掲示板で確認済みでした。

-続く-

『人生どう転ぶかわからない。 #1』はこちら
『人生どう転ぶかわからない  #3』はこちら

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