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猫詩:知恵者

吾輩は猫である
がただ者ではない
なぜかというと
齢二十年ともなれば
猫にも知恵がつくのだ

主人が幼い娘に買い与えた
動物図鑑の開かれた頁を読み
象は死期を感じると
家族から離れて
孤独に逝くという事を知り
ついに私にもその時が来た

象を真似て私が
弱った足腰でヨチヨチと
ご主人宅を離れて
死に場を探していると
泣き叫びながら私を探す
主人一家にあっさりと
見つかり帰宅した

泣きじゃくる皆に抱かれて
死に行くのは怖くはなかった
なぜかというと
寝床で私を抱き抱える
娘に主人が夜な夜な繰り返し
読み聞かせていた本は
猫が百万回も生まれ変わる
物語であったからだ

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