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祖廟に宿る

先祖代々の墓。
父の遺骨もこちらに眠る。
先月100か日を過ぎ、納骨を行ったが、突然の仕事が入り、私は立ち会うことが出来なかった。
それ以来、実家の仏壇には参っていたが、墓をまだ訪れていないと思い、墓花を購入し墓地へ向かった。
回りの墓は、お正月が近いこともあり、松や南天などが入る立派な花が手向けてあった。
うちの墓は、枯れ始めた花が刺さっていた。
花を入れ替え、水を掛ける。側面に馴染みのある祖父の名前が刻まれた墓石をたわしでこする。
きれいになったかどうかわからないけど、手を合わせる
「お父さん、来るのが遅くなっちゃってごめんね」
拝みながら口に出すと、涙か溢れてきた。
父が亡くなった瞬間から実は本気で泣くことが出来なかった。
家族や兄弟が号泣するなか、冗談を言ったり、強気に発言をして、家族を呆れさせたり、いじられたりする道化師役の私は、どこか、悲しみを見せてはいけないと気を張っていたのかもしれない。
『先祖代々の墓』という、どこか物語じみた文字が、急に身近に感じた。
墓石の前で手を合わせると、父の笑顔が見える。
ここには間違いなく、父がいる。
霊が宿るこの場所は、恐れる怖い場所から、父に会える幸せな場所となった。
今年ももうあと、1日。お世話になりました。
良いお年をお迎えください。
また来るね、お父さん。

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