大河内雅美

短編作品や、絵本創作に取り組んでいます。 徐々に長編にも挑戦してみたい元図書館司書です…

大河内雅美

短編作品や、絵本創作に取り組んでいます。 徐々に長編にも挑戦してみたい元図書館司書です。よろしくお願いします。 ロックが好き ライブハウス好き

最近の記事

祖廟に宿る

先祖代々の墓。 父の遺骨もこちらに眠る。 先月100か日を過ぎ、納骨を行ったが、突然の仕事が入り、私は立ち会うことが出来なかった。 それ以来、実家の仏壇には参っていたが、墓をまだ訪れていないと思い、墓花を購入し墓地へ向かった。 回りの墓は、お正月が近いこともあり、松や南天などが入る立派な花が手向けてあった。 うちの墓は、枯れ始めた花が刺さっていた。 花を入れ替え、水を掛ける。側面に馴染みのある祖父の名前が刻まれた墓石をたわしでこする。 きれいになったかどうかわからないけど、手

    • 響き続ける謎の音

      家に帰ると、古い蛇口を捻ったような「キュッ」という音が聞こえる気がした。 気のせいかと思い、夕飯の支度を始めるとまた「キュッ」と聞こえるが、どこから聞こえるのかわからない。 無視して料理を続けると、その音は数分毎に響く。 家の中なのか、外からなのか、いろんな場所に耳を傾けるが、そんな時には聞こえない。でも、作業に戻ると、また聞こえる。 立ち位置を代えても、すぐ近くで鳴っているような気もする。 なんだか怖くなってきた。 生き物の鳴き声なのかと思って、シンクや食器棚を叩

      • 夢占い

        私が運転する車の前を、コミュニティバスが走っている。バスは急に右へ左へ揺れ始め、徐々にふれ幅が大きくなっていった。大きく蛇行したバスが横転した。 すべてのガラスが割れて、私は急ブレーキを踏み、車から降りて、バスの乗客の様子を見て救急車を呼んだ。 目が覚めた。 私は自宅の布団の中にいた。 記憶に残る夢を見たときは、枕元のスマホで夢占いを検索することにしている。見えない何かが私へのメッセージを送ってくれていると感じるからだ。 『夢占い バス 事故』 検索 夢に出てくるバ

        • この世の未練

          父が他界し、七日ごとのお勤めで供養をしている。 浄土真宗の真宗大谷派では35日が忌明け法要となり、早くも今週の土曜日が忌明けとなる。 夜、お寺様がこられて、最後の七日参り。 いつものお勤めのあと、仏壇の飾り方のお話があり、今日のお参りが終わった。 袈裟を整え、帰り支度をするお寺様にふと気になったことを尋ねた。 「父は今どこにいるのでしょう」 つい口にしてしまったが、バカな質問をしたかなと恥ずかしさを感じた私に、お寺様は丁寧に答えてくださった。 「仏様は忌明けまでここにいます

        祖廟に宿る

          父の秘密

          「猫を見たら追い払え」 幼い頃からの我が家のルールだった。 野良猫に「かわいい」なんて言おうもんなら、すぐにお叱りを受けた。 なぜ、それほどまでに、猫を毛嫌いするのか。それは、猫が家に近づくこと事態が、我が家の死活問題になるからだ。 実家の職業は『養豚業』。豚を育てている。 親いわく、猫が保持している菌が豚に悪い影響を与えるらしい。 だから、どんなにかわいかろうが、猫は我が家にとっては害虫でしかなかった。 40年以上、その暗黙のしきたりにしばられ、結婚し、私は自分の世

          最後の1日

          令和4年8月10日 午前2時2分に71才で父が他界した。 死期が近いのは分かつていたけど、突然すぎる終わりだった。 亡くなる8時間前、前日の午後6時に外で一人タバコを吸う父と声を交わしたから。そんな状態で数時間後にあっけなく死んでしまうなんて思うはずがない。 それでも、何かの虫の知らせか、偶然私は仕事を休んでいて、たまたま母の代わりに父の様子を見るために、実家で最後の1日を共に過ごした。 その時の父の願いは「タバコを買ってきてくれないか」 父は、一人で数100メートル先の

          最後の1日

          小説『キラとリコ』

          「野菜のバーコード。レジで剥がれやすくないですか?」 「口ごたえする前に、昨日教えたポイントカードの処理を間違えなくできるようにしたらどうなの? お客様のクレーム処理の尻ぬぐいする俺の身にもなれよ」  桜木綺羅は「スーパー花園」のバックヤードで甘粕店長からしつこく指導を受けていた。  私は入社1年目の新人社員。  いつも眼鏡が油膜で汚れている甘粕店長に最初から嫌悪感を抱いていた。しかも、毎日パワハラじみた指導を受けている。私が職場で一番苦手な人物だ。  一つ質問しただけなのに

          小説『キラとリコ』

          創作を始めたきっかけ

          2020年11月18日より小説を書き始める。 12年間図書館司書として働き、本との距離は人よりも近い生活を送ってきたが、まさか自分が書く側に挑戦するとは夢にも思っていなかった。 きっかけは、実際に小説を書き続けている師匠に誘われたから。 「とりあえず何でもいいから書いてみて」 その言葉に軽く乗り、書き始めて2週間、師匠の指導を受けて短編処女作を公募に出した。 もうじき1年が立とうとする。 書いた作品は短編12作、絵本2作。すべて箸にも棒にも引っ掛からないが、よく書

          創作を始めたきっかけ