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広島AIプロセスについて調べてみた、日本で開発する公的機関向けAIについて

24年5月2日、岸田首相はパリで広島AIプロセス・フレンズグループ」の設立を表明しました。もともと日本は23年末ごろから、AI関連の先進技術に関して協調しようという広島AIプロセスをG7の各国と合意し、首脳声明も出ていました。今回のフレンズグループは、これを49カ国・地域に拡大したものです。

そのため広島AIプロセスの資料を読めば大枠は理解できる…と思っていました。しかし実際読んでみると、中小零細企業へのAI導入、生成AIの共同開発、量子技術の共同開発、公的部門(政府や行政など)で利用可能なAIのToolkitの開発などなど、色々な要素が含まれていて、何がなんだか分かりづらいものでした。

今回は広島AIプロセスの中でも特に気になった「公的部門(政府や行政など)で利用可能なAIのToolkitの開発」について調べてみました。


公的部門で使用可能なAIのToolkitの開発

米国やイタリアの議会において、ChatGPT以外のChatAIも含め使用が禁止されています。ChatGPTによって政府の機密情報が漏れては国家安全保障上の問題となるからです。
そのため広島AIプロセスで宣言されている「公的部門で利用可能なAIのToolkit開発」の必要性は理解できます。しかし、この開発が日本で行われるといわれると話は別です。

隠されている附属書1・2・4

上に貼った総務省のリンク先には、3月14日に行われたG7産業・技術・デジタル大臣会合の成果資料「G7産業・技術・デジタル閣僚宣言」の附属書1・2・4が存在しません。しかしこの書類に大事な事が書いてありました。今回は附属書2にだけ触れます。
附属書2の一部だけ抜粋します。

我々は、イタリア議長国によって提案されたように、政府がリスクと機会をマッピングし、公的部門における安全、安心、信頼できる AI のためのオープンで実現可能な環境を支援できるツールキットの開発を期待する。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin06_02000288.html、附属書2

明確には書いてありませんが、状況的に日本で公的AIのツールキットを開発することをG7各国は期待するという意味に読み取れます。

著作権保護のゆるい日本にOpenAI支社開設

4月15日、ChatGPTを開発するOpenAI社が日本法人「OpenAIJapan」を東京に開設しました。このOpenAIJapanがツールキットの開発に取り組むものと見られます。
海外拠点としてはロンドン、ダブリンに次いで3番目です。著作権をAIから守る法案の無い国に拠点を作ってきたので、日本もその流れでしょう。
日本でも著作権保護に関する検討会議は行われていますが、著作権改正案すらまだ作られていない状況です。

あらゆる情報資源をOpenAIに提供する日本

23年11月7日、政府の「AI戦略会議」は政府や公的機関が保有するデータを国内のAI開発企業に提供する枠組みを決めました。当然OpenAIJapanにも提供できる事になります。
想定される提供情報には、裁判の判例や企業が提出する決算情報、国立公文書館が保管する画像の文書アーカイブ、PDF形式の政府文書などの情報も含まれる予定です。
しかし、これに反対した団体もいました。3月12日、国会図書館が著作権が残る書籍の学習データ化をOpenAIに対して制限をかけました。

また、4月30日、日経傘下のFinancial Timesは記事データ利用のライセンス契約をOpenAIと結びました。マスコミがOpenAIと提携してデータ提供する例は今後も増えるかもしれません。

米国では訴訟が続くOpenAI

米国ではニューヨーク・タイムズがOpenAI社に対して訴訟を行っています。有料記事をChatGPTが再現できてしまい、本来得られる利益が損なわれたとして賠償金請求を求めています。
また最新の自動生成動画soraは、動画の学習データをどこから抽出したのか疑念を持たれています。もしYoutubeならの利用規約違反であるとAlphabet社が回答しています。
規制がかかる前とはいえ、他社の情報資源をAIの学習データに利用してきたのがOpenAIということを忘れてわなりません。

なら日本の会社が作ればいいじゃんと思うが…

日本にはKDDIと業務提携したELYZA社や、Polaris.AI社など有名な日本語版LLMの開発ベンチャーはあり、注目もされています。しかし世界の公的機関で使用するAIのツールキットを作るとなるとグローバル企業に頼らざるを得ないのかなと推測しています。

感想…狂った日本だからこそできる技

ここまで経緯を書いてみて、日本政府は狂っているとしか言いようがありません(泣)
日本政府自身が勝手に日本国民の情報資源と税金を使って、世界のためにAIを開発しているという事でしょう。世界の政府にAIの利用料を請求するならまだましですが。
因みにセキュリティクリアランス法施行前なので、政府系AI企業では当然中国人も採用しているですかね(涙)
GAFAだけでなく日本企業もLLMの研究開発に力を入れているのに、日本政府はなぜか外資のOpenAIをフルサポートというのも?です。業界関係者なら事情を知っているのかもしれませんが。

おわりに

以上、広島AIプロセスの気になった点を調べてみました。
日本語版ChatGPTが改良されるのは我々にとっていいことですが、著作権や機密情報を保護しないままやるべきではないと私は考えます。
今回触れた公的機関向けのAIツールキット開発以外にも気になる点があったので、また別の機会に調べてみたいと考えています。

最後までご覧頂きありがとうございました。気になる点などありましたらコメントを頂けると励みになります。また次の記事でお会いしましょう。

パリのOCDEの会見場で岸田さんの背景にこんな感じの波々柄が使われていました

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