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数分で FinTech 概観

FinTechについて、主にペイメント中心に書いてみたいと思います。

もし最近流行りの「~ペイ」を使っていたら、あるいは、オンラインバンキングアプリで自分の口座の預金残高を確認していたら、それはあなたが既に世界で何十億ドルという大市場の一部になっていることを意味しています。FinTech は世界を覆う巨大なトレンドです。

FinTech という言葉がカバーする領域はご存知のように幅広いです。それらはテクノロジーであり、アプリであり、サービスであり、ビジネスモデルです。ビッグデータ・データサイエンスにもとづくパーソナライズ化も、熾烈な競争が繰り広げられているキャッシュレス化も、ものづくりの世界の景色を変えつつあるクラウドファウンディングも、個々の投資家の嗜好にあわせたAIによるロボットアドバイザーも、あるべき貨幣経済についての議論の火をつけた仮想通貨も、それを支える分散台帳技術・ブロックチェーンも、その応用であるスマートコントラクトも、みんなみんなFinTech なわけです。

話は脱線しますが、創造性のあるAI 「Creative AI」というトレンドがあります。その一例として、電通でのAI コピーライター、通称 AICOというのがあるのですが、そのAICOが FinTech に関して書いたコピーを見てみると、「フィンテックは、みんなのもの」「フィンテック、やばいたまらん」とあって、まさに今のFinTech の爆発的な広がりを表現しているかなと思います。

Fintech のトレンドは始まったばかりです。多くの企業、スタートアップが支払いやローンのあり方を新しいものにしていこうとしています。グローバルで見てみると、FinTech 領域の投資は、2010年に年間20億ドルだったものが、今現在、300億ドル近くに増加しています。中でもペイメントとレンディングが大きな割合を占めます。この増加を後押ししているのが、各国消費者のFinTechサービスへの適応力で、他の新技術・サービスのトレンドと比較するとクイックに適応しているといえます。EY の統計では、主要20カ国では3人に1人が2つ以上のFinTechサービスを使っています。普及は中国と、そしてインドで顕著で、中国では70%以上、インドでは50%以上の消費者が新しいペイメント、レンディングのサービスを活用しています。日本では悲しいことに10%以下です。

FinTech は今まで銀行に口座をもっていなかった層や信用情報(クレディビリティレコード)のなかった層に新しいアクセス手段も提供しています。

以前、クレディビリティを中心トピックに、FinTech カンファレンスのパネルディスカッションに参加したのですが、AI 技術を使った不正検知・与信は非常にホットな領域です。

上記 Kreditech の他に、kabbage, ZestFinance, Avant 等の企業がAIやデータサイエンスに基づく新しい形の与信を提供しています。


今や携帯電話やスマートフォンさえあれば、ローンも保険のサービスも活用できます。実際、そのような層は世界で20億人近くいるわけで、巨大なマーケットを開拓しているともいえます。

Vodafone と Safaricom によって運営されているケニアの M-Pesa は、M-Pesa サービス内に口座を作ることができ、携帯電話のみで支払いも送金もローンも可能です。M はモバイルをさし、Pesa はスワヒリ語でお金を意味しています。驚異的なことに、ケニアの96%の世帯が M-Pesa を活用しています。96%! 取引金額はケニアのGDPの半分を超えています。このサービスは、ケニア以外にもルワンダ、タンザニアやアフガニスタン、南アフリカ、モザンビーク、エジプト、ルーマニアにも広がっており、貧困層割合の低下にも一役買っているそうです。M-Pesa は面白いエピソードがありまして、既存の銀行が徒党をくみ、金融大臣に監査するようにとロビー活動をしたのですが、監査の結果、盤石な財務とシステムであることが判明したとのことでした。


インドFlipkart 子会社のPhonePe(フォンペー)も、携帯電話番号だけで支払いができるサービスを展開しています。2016年9月にサービスを開始し、2018年6月に1億ユーザーを達成。年間40億ドル以上の流通(トランザクション)を生み出す規模に成長しています。

現代は、銀行を経由しない個人間(P2P)でのお金の貸し借りサービスも技術的に容易に実現できます。下手すると個人によって構成されたコミュニティによる新しいレンディングのプラットフォームも可能です。しかし、デフォルトのときどうするかという疑問はもちろんあるわけです。各国、規制をどう今のFinTechの進化にキャッチアップさせるかは課題です。

加えて、それぞれのFinTech サービスにおいては、サイバーセキュリティもより強固にあるべきで、データプライバシーの問題は新しいサービスの登場のたびに懸念されます。セキュリティでいいますと仮想通貨取引所から仮想通貨が流出した事件は記憶に新しいですし、バイオメトリクスを活用した認証を備えることでセキュリティを強化しようという流れもあります。プライバシーでいいますとクレイディビリティスコアリングを従来の方法・データではなく、例えばよりリアルタイムな活動情報やSNSでの投稿情報等、新しいデータで行う等した場合、消費者がどれだけ自分のデータ提供に自覚的に合意できているかは議論されるべき課題です。

FinTech はバズワードとみなす向きもありますが、企業にとっても消費者にとっても大きな、かつグローバルなビジネス機会です。課題も認識しつつ、着実に波に乗りたいところです。

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