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音楽レヴュー 2

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2020年7月の記事一覧

SUMIN(수민)「XX,」



 レッド・ヴェルヴェットやBoAの曲を手がけたスミンの作品は、ブログでもたびたび取りあげてきた。一度聴いたら耳から離れないキャッチーな歌メロに、そこらの偏屈で不寛容なエクスペリメンタル・アーティストよりも先鋭的なサウンド。これらの魅力にハマってしまったからだ。

 彼女の音楽性を定義するのは難しい。端正なプロダクションが施された音のシャワーはさまざまなジャンルを含みつつ、リスナーの耳に届けられ

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Footsie『No Favours』



 フットツィー(厳密に言えば、“ト”はほぼ発音しない)は、イースト・ロンドンのグライム・シーンにおける伝説的存在だ。D・ダブル・Eとのニューハム・ジェネラルズなど、グライムの発展に寄与した例は数多い。これまでさまざまなフィーチャリングをこなし、鋭いラップを刻んできた。
 トラックメイカーとしての才能も見逃せない。自ら主宰するBraindead Entertainmentから発表している『Kin

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Mealtime「Aperitif」が鳴らすFuck Toxic Positivity



 イギリス・マンチェスターで結成された6人組バンド、ミールタイムによる“Sublime”のMVを観たのは去年のこと。マドンナ“Music”(2000)のMVを彷彿させるリムジンのシーンに、ティガ『Sexor』(2005)やフィッシャースプーナー『#1』(2001)に通じる妖しいエレ・ポップ・サウンド。これらの要素は、2000年代のポップ・ミュージックに影響を受けたバンドだと容易に直観させた。

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Nijuu(니쥬)「Nijuu In The Sea」



 ニジュは韓国生まれのシンガーソングライター。彼女のことは3年ほど前に知った。サウンドクラウドで公開された“말해줘요 (tell me)”を聴き、その後も曲がアップされるたびに聴いている。
 おだやかな歌声の奥底に佇む芯の強さ、一瞬で耳の好奇心を引き寄せるメロディーなど、多くの魅力で心を躍らせてくれるアーティストだ。

 そうした気持ちは、彼女のデビューEP「Nijuu In The Sea」

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Park Hye Jin(박혜진)「How Can I」



 DJ/プロデューサーのパク・ヘジンを知ったきっかけは、2018年に彼女がリリースしたミックステープだった。デトロイト・テクノの叙情的なサウンドを匂わせる“Are You Happy ? 행복하냐고묻지를마”、レーベル1080pの台頭によって急増したメロディアスなローファイ・ハウスが脳裏に浮かぶ“You Say Me 너는내게말해”など、良質なダンス・ミュージックが揃っている作品だ。
 一方で

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