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映画/ドラマレヴュー

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観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。
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#アメリカ

ドラマ『地下鉄道 ~自由への旅路~』



 『地下鉄道 ~自由への旅路~』は、Amazon Prime Videoのオリジナル・ドラマ。監督は『ムーンライト』(2016)や『ビール・ストリートの恋人たち』(2018)といった良質な映画を作りあげたバリー・ジェンキンスが務めるなど、配信前から大きな注目を集めていた。

 本作の主人公は、アメリカ南部のジョージア州にある大規模農園で働く黒人奴隷のコーラ(スソ・ムベドゥ)だ。農園での辛い生活

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映画『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』



 J.D.ヴァンスによる回想記『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(2017)を初めて読んだときの記憶は、楽しいひと時と言えるものではない。ラストベルト(アメリカのさびついた工業地帯を指す言葉)と呼ばれるオハイオ州の田舎町で暮らしていたJ.D.の人生に、何度も胸が締めつけられたからだ。
 時代の変化に伴う鉄鋼業の衰退と歩調を合わせるように増えつづける失業者。そうした

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アメリカの悲劇  〜 映画『ダーク・プレイス』〜

 映画『ゴーン・ガール』の原作者として有名なギリアン・フリンの小説、『ダーク・プレイス』が映画化された。シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、クロエ・グレース・モレッツなど、好きな役者が集結していることもあって、とても楽しみにしていた。

 物語は、1985年にカンザス州で起きた一家殺人事件の真相を、その事件の生き残りであるリビー・デイ(シャーリーズ・セロン)が追うというもの。事件は当時8歳だっ

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“自由”とは希望なのか、不安なのか?  〜 映画『トゥルーマン・ショー』(1998)〜



 安易にハッピーエンドって言える内容ではない。虚構の世界から解放されて“自由”を獲得したことは幸せかもしれないけど、劇中でも示唆されているように、虚構だって“本物の感情”をあたえてくれることもある。むしろ、“現実”のほうがその感情を奪う世界かもしれない。

 この映画は、“自由”であることに不安を抱くか希望を見いだすかで、捉え方が変わると思います。人は、“幸せ”という状態をできるだけ維持しよう

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