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アメリカで俳優を仕事にする為に必要なツールと、それにかかる金額

 日本で俳優として働く場合とアメリカで俳優として働く場合とでは、勝手が違ってきます。前記で書きましたが、良い芸能事務所を見つけて、そこに入ればマネージャーさんがやってくれる、なんてことはありません。自分自身で全て用意し、自分で自身をプロモーションしていきます。

 俳優に必要なツールとそれらにかかる費用($ドル)をザッと出して行きます。

 そして、これは基本的には映画俳優の場合です。


 **実際はこの他にも、オーディションなどに必要な衣裳代やヘアカット代、身体のケア代、女優さんはメイク道具もありますし、お金が幾らあっても足りないくらいかかるのですが、とりあえずは、ベーシックなところでリストにしました。

Resume - 履歴書

 基本的には自分で作るので$0です。

 映画やドラマ、コマーシャル、プリントモデルなどのオーディションの場合、最近は基本的にメールやウェブサイト上でレジュメを見てくれるので、印刷の必要はありません。
 舞台の場合は、レジュメの裏に同サイズの宣材写真を貼付けてオーディションに持参します。プリンターが無い人は、お店での印刷代が少しだけかかります。数ドルでしょう。

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Headshot - 宣材写真

 ヘッドショットにかかる費用はフォトグラファーさんのお金です。これは本当にピンキリで、有名なフォトグラファーさんだと2パターン(衣裳)+1時間のセッション+2リタッチ(2枚写真編集)で$1,000~$1,500とか。$300~$500で割と妥当、$100~$200はかなり安いですが、多くの若手フォトグラファーが安く出しています。
 一つ裏技をご紹介。それは、
 フォトグラファーの友達を作る!!そして彼(彼女)の作品づくりのモデルになったりを手伝うなどして交換条件でヘッドショットを撮ってもらうことも出来るかも。
 僕はこれに近い方法でヘッドショットを撮ってもらってきました。

 ヘッドショットは俳優が仕事を取る時に、プロダクション側に一番最初に見られる超重要なツールです。
 そして、プロダクションが探している役にイメージが合うかをパッと見で判断されるため、応募する役によって使うヘッドショットを変えるのがベスト。なので、一枚ベーシックなものがあれば良いってものではないのです。

 ヘッドショットではない写真が結構入っていますが、例えばこんな風に↓

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 レジュメと同様に、

 映画やドラマ、コマーシャル、プリントモデルなどのオーディションの場合、最近は基本的にメールやウェブサイト上でレジュメを見てくれるので、印刷の必要はありません。 
 ただ舞台の場合は、レジュメの裏に同サイズの宣材写真を貼付けてオーディションに持参します。この印刷代が結構高かったりします。プリント屋さんウェブから発注して印刷してもらえば、少し安かったりしますが一枚$2.5とか。急に必要になってドラッグストアなどでもプリントアウト出来るのですが、一枚$5とかかかります。ちなみにサイズは8x10。


Acting Reel - 演技のデモリール(ビデオ)

 映像の俳優にとっては、あるとかなり便利なものがこのデモリール。自分の出演している映像、無い人はモノローグや誰かに相手役をやってもらって撮影したシーンのビデオなど、それを自分で編集してビデオにまとめます。なので、基本的には作るのはタダ
 しかし、自分で出来ない人は会社やエディター(編集者)に頼んで作ってもらったり、映像自体がなかったら撮影からお願いしたりするのでお金がかかります。
 僕は自分で作っているのでお金をかけたことはありませんが、この値段もピンキリだと思います。

 このリールというのは、自分の演技を監督やプロデューサーに観てもらう重要な素材になるので、しっかり作ってあると仕事の取れ方が変わります。
 僕はキャスティング側も経験していて観る側がどういうものが欲しいのか、どういう内容になっていれば効果的かも勉強したので、自分で編集しているわけです。


Website - ホームページ

 自分の情報がまとまったホームページがあると便利ですよね。写真、レジュメ、デモリール、連絡先などなど。

 Wix.comなど無料で作れるホームページ製作サイトもあるので、とりあえずそれで作るといいと思いますが、それだと URLに「wix.com」が入ります。無料で作っていることがバレバレなので、自分だけのドメインを買った方がプロフェッショナルに見えますよね。

 ちなみに僕はWixでドメインを買って年会費を払って使っており、3年間で$360のプランに入っております。


Casting websites - キャスティングサイトへの登録

 エージェンシー(事務所)があったとしても、このキャスティングサイトへの登録が必要になってきます。要は、オーディション情報が載っているところです。エージェンシーやキャスティングカンパニーが使うのは主に2つのサイトですが、僕は3つのサイトに登録し、自分のプロフィールや写真、動画を載せています。

 1. Casting Networks - 年会費 $259.50 (update 7/1/2020)
 2. Actors Access - 年会費 $68 (update 5/18/2020)
 3. BackStage - 年会費 $163.26 (update 5/18/2020)

 他にもNY casting, LA castingなどなどのサイトがあります。

IMDb - インターネット・ムービー・データベース

 Amazonが運営する世界公式のインターネット・ムービー・データベースです。言わばWikipediaみたいなものなのですが、これはIMDbの会社が承認した作品、出演、スタッフ情報が載っているのです。IMDbが許可を下ろさないと、ここに情報が載らないので、誰でも編集できちゃうWikipediaとは違い世界公式となっています。

 なので、業界の人はこのIMDbを見て俳優の経歴を確認します。

 僕もパーティーでハリウッドの監督にあったとき、「IMDbとリール見せて」と言われたのですが、その当時はもっておらず、、、チャンスが逃げたという思いをしました。

 作品に出演しないとIMDbのクレジットが増えることはありませんが、自分のページを制作し、写真やリールやバイオグラフィーを載せることは出来ます。

 それをする為にはIMDb Proに入会するのです。年会費$149.99。

 IMDb Proに入らないと、自分のページを編集出来ないので、出演作品が増えても写真やリールやバイオグラフィーがない状態になってしまいます。そして、IMDb Proには自分のエージェンシーや個人の連絡先、ウェブサイトなどの情報も載せられるので、もしかしたらキャスティングの声がかかる可能性もゼロではありません。
 以上を踏まえて、これも俳優としては必須なものです。

 僕のIMDb

 IMDb Proでは、こんなページです。

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Name card - 名刺

 名刺は絶対無ければならない、ということもないです。が、あると色んな場面で繋がりを作るのに便利なので、僕は作っています。

 費用もピンキリですが、自分の場合は結構こだわって作ったので、

 ロゴ&ポートレートのデザイン費 - $700

 印刷費 - $85(500枚)くらい

 といった感じです。

Union - 労働組合への加入

 アメリカにはユニオンというものがあります。ユニオンの詳細について書くと長くなるので、省略します。
 入るか(入れるか)どうかは別として、ユニオンに入れる資格をもらい、いざ、入会するときには入会金が必要です。

 2019年、現在の入会金は、

SAG-AFTRA(全米映画俳優組合-米国テレビ・ラジオ芸能人組合 )- $3,000

Actors' Equity Association(米国俳優協会(舞台俳優))- $1,600

 そして、毎年、年会費がかかります。

SAG-AFTRA - $214.32(最低会費。年収に応じて、高くなる)

Actors' Equity Association - $22(最低会費。年収に応じて、高くなる)

 ちなみに僕Masaya Okuboは現在、SAG-AFTRAに入会する権利を持っています...が、まだ入会していません。高いしっ!ユニオンに入ることによってメリットもあれば、デメリットもあるので、まだ時ではないなと判断しておるのです。

Study/Training - レッスンなど自分の技術や知識の向上、自分磨き

 俳優は常に勉強、練習。向上心のある者なら、これが一生続くことですので、そのためのレッスン費、本代、その他諸々に勉強する為の費用がかかります。

 例えば、諸々のレッスン費が一回$20で、演技、殺陣、ダンス、歌、英語のクラスに週一回ずつ行ったら$100/週。年間$5,200です。

 うひゃ〜ですよ。うひゃ〜!!

 今自分で計算して、ビビった。

日本からでもアメリカ演劇の勉強の為に出来ることといえば、本を読んで勉強すること。これははじめの一歩としてオススメします。

僕の通っていた(現在もクラス取っていますが)学校HBスタジオで学ぶウタ・ハーゲンテクニックの本の日本語版

そして、実際の英語の台本。これは演劇学生向けの短編の戯曲集で、全ての話がすごくよく出来ていて面白い。英語戯曲を読むことは英会話の勉強にもなるのでオススメです。一つの話が4ページくらいの短編ばかりなので、気負わず読めます。


 さて、自分の場合、最初にかかった入会費や名刺のデザイン費、ヘッドショットの撮影などは別にして、何もしなくても年間1000ドル(10万円?)くらい払っています。それに加えて何度も更新するヘッドショット、名刺印刷、勉強の為に映画やTVシリーズを見るネットTV、演技や殺陣や発音矯正のクラス費。年間で...計算すると怖くなる。くぅ〜...。全てが必要経費です。仕事取りゃいいんです!...簡単ではないけど。


 俳優を仕事にするだけで、これだけの経費がかかるんですから、No Pay(無給)で仕事をするのは気が引けてしまいますよね。しかし、出演させてあげるみたいな俳優の足下を見るような人も多いです。
 ただ、No Payであっても自分が本当にその作品に出たい、または他に交換条件(IMDbのクレジット、デモリールに使える質のいい映像など)がある場合に自分が納得すれば良いのではないかとも思います。


 さぁ、話が少しズレますが、いつ何処でチャンスが来るかわかりません。

 その数限りなく少ないチャンスを逃さない為、常に準備しておくことがとても大切なのです。

 演劇学校など、周りでもよくこんな人を見てきていたのですが、

 「まだ自分は役者として準備出来ていないから、自分に自信がついたらやる」という言い訳。幾度となく聞いてきました。

 それいつ!?

 スキルを高めることも自己プロモーションも両方やるべきです!役者としてトレーニングをし続けるのは当たり前の事で、芸に身を捧げるなら一生続けなければならないんですから。

 人生一度きりですよ。

 ゲームオーバーしたら、また最初から〜なんてありません。

 大物プロデューサー、キャスティングディレクター、監督や演出家、エージェント、スター俳優などにいつ何処でバッタリ会うか分かりません。

 そんな事あるの?

 あるんですよ。

 何処で?

 分かりません。積極的に動いていれば、必ずいつかチャンスが来ます。

 その時に準備が出来てなくて「今は無いんです。準備してる途中なんですよ。」と言った瞬間、もう二度と同じチャンスは来ません。

 実は自分もニューヨークに来て割と間もない頃に、一度こういうことをしてチャンスを逃しました。

 例えば、こんな話があります。

 恩師であるブロードウェイ関係者の娘さんが女優さんで、アルバイトでパーティーのケータリングの仕事をしていました。

 そこに映画のキャスティングディレクターがいて、彼女に声をかけたそうです。

「君、女優かい?」

「はい、そうです。」

「今キャスティングしてる映画の役のイメージにぴったり合うんだけど、レジュメとヘッドショット持ってる?」

「ええ、今は仕事中で手元にはないけど、自分のバッグの中にあります。」

 最近はオンラインやメールなどでデータを渡す事が出来るため、彼女はディレクターから連絡先をもらい、その場ですぐに彼にメールで自分の情報を送って、後に役を勝ち取ったそうです。

 彼女の良かった所は、

・常に自分の資料を持っていたこと
それによって女優として真剣で、準備を整えていることを見せられたこと
オンラインにも自分の資料をまとめてあったこと
後回しにせず、すぐに行動に出たこと

 例えば、ビジネスの世界と同じではないでしょうか?

 数分のアポイントメントしか取れない忙しい相手との交渉の時、その数分で自分自身と企画を全て売り込まなければならないと聞きます。

 俳優も同じです。その一瞬一瞬が勝負。チャンスに繋がる人物と出会った時やオーディションで限られた時間の中でいかに自分を表現できるか。

 何年も前に僕がまだ英語も殆ど挨拶程度しか話せなかった時、ニューヨークでキャスティングディレクターのセミナーに参加しました。その時、参加者全員が並ばせられ「一人ずつ自己紹介をしなさい」と言われました。

 僕は出来る限り自分の事を話そうと1分くらい一生懸命喋って自己紹介をしました。

 そして彼女に言われたのは「長い。5秒で終わらせなさい。」

 ご、5秒!?

 自分の役と自分自身を5秒で表現しなければならないということでした。それもそうです。向こうは何百人という人材を見なければならないのです。あなた一人に長く時間をかけてはいられません。

 5秒というと、名前ともう一言くらい言ったら終わり。その中で自分のキャラクターや受けている役を魅せれなければならないのです。

 シビアだ。

 それでも役者で食う!と覚悟を決めたからには通らなければなりません。


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まさや

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