次のユニコーンはハードウェアスタートアップからこそ輩出されるべきではないか?
久々にnoteを書きます。私自身、物流倉庫向け自動搬送ロボットを開発するLexxPlussを創業してからは、顧客課題に関わらない部分をできるだけ排除し、猪突猛進で会社を成長させてきたつもりでした。HAX深センに採用されグローバルでの量産にむけ動き出したタイミングで、私たちの会社の意思を綴ろうと思います。
いきなりタイトル回収ですが、産業を揺るがす次のイノベーションをもたらすのはハードウェアスタートアップだと思っていますし、社会の本質課題を解決するためには、ハードウェア開発は切り離せないものだと確信しています。
日本ではなぜか希少種なハードウェアスタートアップ
こう言われることがよくあります。
「ハードウェアやるスタートアップって珍しいよね」
「なんでお金かかるハードウェア/ロボットに手を出したの?」
創業当時、この質問に対して定型的な回答を持っていませんでした。理由は、そもそも、自分たちがハードウェアスタートアップというカテゴリに属している事を全く意識していなかったからです。私的には、「いやいや、逆になんでハードウェアやらないの?」と思ってましたし、本質的な課題をどう解決するかの手段の一部がたまたまハードウェア関連だったからで、ハードウェアvsソフトウェア的な考え方をしていませんでした。
ですが、そもそもGoogle, Amazon, Appleもハード(GCP, AWS, iPhone)上にサービスを乗せた巨大IT企業であり、お隣の中国には、ドローンのDJI(2006年創業)、スマホのXiaomi(2010年創業)、電気自動車のNIO(2014年創業)、ヨーロッパ・エストニアには、配達ロボットのStarship(2014年創業)などがいます。この10年間で、ハードウェアを一つのコアとした企業が時価総額1兆円を超えて世界に大きなインパクトを与えているのは事実です。
グローバルで見た時に、ハードウェアを扱っているスタートアップは決して珍しいものではなく、むしろ、既存産業を揺るがす破壊的なイノベーションを起こすにはハードウェアは必要不可欠な要素になります。
Global Hardware Startupについては、LexxPlussの投資家でもあり世界で最もハードウェアに投資している米国VCのSOSVから出ているレポートが参考になるので興味ある人は是非見てください。
では、なぜ、モノの作ったきた日本に、そういったモノを作る巨大スタートアップが生まれないのでしょうか。
日本のものづくりは死んだか?
この問いに対して私は答えを持っています。
誤解を恐れず言いますが、結論、死んでいると思っています。
より正しく言うと、死んでいると自覚し生まれ変わる必要があると肌で感じています。
かつては、モノづくりに関する日本ブランドはグローバルで見てもトップだったのは間違いないと思います。ですが、例えば、日本の白物家電は既にコモディティ化し、ブランド力が低下は著しく、また、携帯電話からスマホへの転換期においては、日本製はすべて敗北したと言ってもいいでしょう。
良いものを大量に作ることが差別化要因になっていた日本メーカーですが、中国・韓国のような国々が、安価で良質な製品を量産できるようになり、モノが溢れるようになったのです。
「自動車業界や一部の産業セグメント(特にBtoB)で、グローバルで活躍している企業が日本には存在している。まだ、挽回するチャンスがあるのではないか。」
もしかしたら、そうかもしれません。
ただ、そのような発言の裏に「トヨタ、キーエンス、ファナックなどを筆頭に頑張ってもらいたい!」という他力本願が少しでもあるのであれば、それは、生きている企業を見て自分も死んでいないと虚妄している言わば、「無自覚の死」だと私は思います。
「無自覚の死」と「再生しない日本産業」
では、なぜ日本のものづくり業界がこのような状態になったのでしょうか。
理由は大きく分けると3つあると思っています。
1. 相対的技術力の低下
中国・韓国が生産力やノウハウをつけ、安価で良質なものをつくれるようになってきたことは明らかな理由です。日本の技術力自体が低下しているわけではないですが、相対的に見ると日本に成長はありませんでした。
日本企業一致団結してグローバルに戦おうじゃないか!というALL JAPAN戦略もありますが、沈んでいく船の上でみんな手を取り合っても、沈んで行くことに代わりはありません。
特に家電系では、日本の製品の受注生産していた企業が、ノウハウを吸収し、あっという間に日本メーカーを追い越していきました。すでに、家電量販店で見られたような日本企業の製品はほとんど海外製品に取って代わっているのが実情です。
2. Domesticな市場
日本は国内だけでも市場規模があり、成熟していると言えるでしょう。しかし、逆に言えば、国内市場で満足できグローバルに挑戦するのに特別な理由が必要な状態を招いています。その結果、グローバルな思考が欠落し、気づいた時には既に海外の企業に追い抜かれてしまっています。かつて、グローバルでも非常に認知度のあった企業も、海外での競争力を失い、海外の売り上げが減少の一途をたどっています。海外との競争に負けてしまったのです。
3. 技術ファーストの製品づくり
これは、むしろ良いように思えます。技術を磨けばいい製品が作れて競争力のある企業へと成長する。そう信じる方も多いかもしれません。
しかし、モノの溢れた現代社会では、単純にモノを提供できれば成功するほど甘くはありません。人々はモノに対して、「機能(Function)」を求めているのではく、「体験(Experience)」や「無形価値(Brand)」を求めるようになってきています。インターネットサービスで起きてる現象と同様に、どのような体験や無形価値を提供できるかが、ハードウェア企業にも求められています。
冒頭から、ネガティブな内容が多い気がしますが、そんな日本に未来はあるのでしょうか。
私は、だからこそチャンスは非常に多いと思っています。今、日本にある資源でグローバルに戦える土壌は多く残っています。
インフラ産業が抱える本質課題とひたすら向き合う
日本は、皮肉にも、1億人を超える大国でありながら極度に高齢化が進む歴史上経験したことのない社会です。だからこそ、他国が経験したことのない課題があり、それを解決するための潜在的な資源が眠っているはずです。
資源1. 課題先進国である
少子高齢化・人口減少。先進国の中でも先を進んでおり、おおよそ全ての国が直面するであろう課題を日本は今、経験しています。医療、福祉、製造、物流、公務など高齢化や人口減少に伴い明らかに機能しなくなる産業や業界は山程存在します。こういった機能しなくなる巨大な社会インフラの再構築は、スタートアップにとっては指数関数的な成長ができる、可能性溢れる業界であると思っています。
資源2. プロダクト化できるエコシステムがある
大企業の競争力は弱まったものの、モノづくりの環境は整っています。中国深セン程ではないですが、長年日本を支えてきた製造業のサプライチェーンは、シリコンバレー、ドイツ、韓国などと比べるても成熟しており、グローバルで見てもハードウェアプロダクトを作るには非常に好立地であることは変わりありません。
非言語領域のみに特化し初手グローバル
ようやく、ハードウェアの話が出てきましたが、インフラ産業の本質課題を突き詰めていくと、必ずハードウェア、もしくは、非言語領域の技術(いわゆるDeepTech)が関連してきます。違う言い方をすると、インフラ産業とは、マズローの欲求5段階でいう、物質的欲求を持続的に提供する産業であり、「安全欲求」や「生理的欲求」に密接にかかわっていると言えます。
その分野は、言語、人種、文化の違いがほとんどない非言語領域なので、グローバルに展開できるビジネスです。なおさら、見るべき市場は国内だけではなく最初からグローバルへの展開を前提とし事業作りをしていくべきだと思います。
結論としては
「課題先進国である日本のインフラ産業の本質課題を突き詰め、非言語技術で抜本的な解決策を開発し、最初からグローバルに展開する」
これが、唯一の成功の道筋だと思っています。至極当然のことですが、これができる企業は本当に少ないはずです。大企業であればあるほど、本質的ではない基準で物事が決まることも多々あります。いつの間にか課題解決という目的が薄れていくこともあります。
さらに言えば、社内政治や短期トレンド、景気変動にとらわれず、愚直にこの勝ち筋をひたすら進めるのは、大企業ではなく、スタートアップであるはずです。
LexxPlussは15年後、時価総額1兆円を超える次世代の産業機器メーカーになる
LexxPlussは、物流倉庫や製造工場の工程間搬送に特化した自動搬送ロボットを開発するスタートアップです。
ですが、ロボット作りを目的化せず、「顧客が抱える本質課題」にひたすら向き合うテクノロジーカンパニーです。会社の名前、ビジョン、経営基盤に、「Robotics」や「Technologies」のような単語は一切出てきません。技術が課題解決の手段から会社の主軸に変わってしまうからです。
また、LexxPluss では、本質課題の定義を、ピーターティールの言葉を借りて
「多くが賛成し得ない/理解し得ないが、LexxPlussのみが知っている大切な真実」
としています。
私たちは、物流業や製造業が抱える本質課題をひたすら追い求め、ハードウェアを含めた非言語技術とそれに最も適した戦略でグローバルに事業を展開します。
モノやサービスが溢れている現代、私たちのようなスタートアップこそ、グローバルでも勝ち残り新しい価値を生み出していけるのだと、信じています。
ユニコーンは最初の通過点だった。そう言い切れる会社を目指します。