マンホールからベンガルトラまで その23
やっぱり散歩
カトマンズは相変わらずのカトマンズだった。
もうマンホールは空いてなかったが、さすが首都だけあって活気に溢れている。
人が多い。建物が多い。
ホテル・バックパッカーズ・インという分かりやすい名前の安宿に泊まることにする。旅行誌のおすすめだけあって安いのに掃除が行き届いている。気に入った。
何かあってもいいようにスケジュールは一日余分に取ってある。丸一日、時間は空いてるけどどうしよう。
考えてみたけど、やっぱり結論は最初から決まっていた。旅は散歩に始まり散歩に終わる。
「散歩に行こう。」
私の場合、写真を撮りながらのお散歩だ。ついでにお土産物を探す。
これがネパールの撮り納めになると思うと撮影散歩にも気合いが入る。旅の最後の今だから撮れるネパールを写真に収めたい。
目についたものを片っ端から撮っていく。
形、色、服、宗教、建物。生活スタイル。国が違えば写るものも変わってくる。
着いたばっかりの頃は怪我してたし、あまりカトマンズの細かい部分を見れてなかった気がする。なんだか色々なことを新鮮に感じることが出来た。
何気ない形のアパートがドアと壁と窓のメリハリのある色分けでオシャレに見える。
女性が着ている服は特に色彩感覚が豊かで統一感がある。ネパールのはっきりとしたカラーは女性が作ってきたのかもしれない。
市場の売り方は地べたに並べる平置きが多い。歩いてるお客さんからすれば上から全ての商品を見渡せるので欲しいものが見つけやすい。
いまだに分銅を使って重さを計ってたりする。物々交換にも対応してくれそうだな。
頭に大きな荷物を乗せて運んだり、頭に引っ掛けて荷物を背負ったりしている姿もよく見られる。人の腕力がまだこの国ではモノを言いそうだ。
生活の中に宗教が溶け込んでいる。
結構賑やかな通りに仏塔があったり、ヒンドゥーを祀った像が置かれていたりする。
カメラを片手に散歩してるといつの間にか時間が過ぎている。
昼飯はどうしよう。そう考えながら歩いていると、ベトナム料理のお店が目に入った。
おー、そういう選択肢もあったか。さすがカトマンズ。様々な国のご飯屋さんがあるらしい。
ネパール料理の味が苦手な私には助かる。ここにしてみよう。
お店は高級そうで少し割高になるが日本で食べるよりは随分安い。日本の高級店で食べたら5倍くらいはするだろう。
ベトナム料理というやつは食べたことがなかったのでワクワク、楽しみだ。
噂のフォーという麺料理と有名な生春巻きというやつを注文。
まずはフォーをいただきます。ズズッ。うん、悪くない。
ベトナム風の出汁みたいなのが入ってるんだろう。
でもちょっと味が薄いな。この付いてきたお皿に入ってる赤いタレみたいなのを入れるのかな。
っとそれを全部入れて混ぜて食べると、ブフォー!
っと口から吹き出した。ガハッガハッ!
み、みず。
水を・・・一気飲みする。
ナ、ナンジャコリャー‼︎ ゴルァー⁉︎ か、辛過ぎる。
どうやら付いてきたお皿に入ってたのは辛味をこれで調節してね、ちょっとづつ入れてね。
という但し書きを書くべき唐辛子ペーストだったみたいで、全部入れたのは大間違いだったらしい。
せっかくなのでもう一口チャレンジしてみたが咳き込んで飲み込むことが出来なかった。
ひとまず生春巻きの方は、付いてくる赤いペーストを全くつけなかったので食べることは出来た。
でも既に口の中は麻痺していて味は全然分からない。
初めてのベトナム料理は私の大敗に終わった。
涙を流しながら水を喉に流し込む。
今日は負けた。
でも次は勝つ。
ほとぼりが覚めた頃に必ず美味しく味わってやるぞ。
フォーをほとんど残した状態で、あまりお腹は満たされずにベトナム料理店を出たのだった。
街を巡り、口の中の麻痺が取れてきた頃、ドーナツ屋さんを発見。
これならば間違いない。ポカラで食べたガハハ兄ちゃんのドーナツは美味かった。外見もそれに似ている。
「すいません、ドーナツ二つください。」
こちらの新聞紙に包んで渡される。
なんだかオツだねえ。
げ、またペースト状のタレが付いてきている。
どこまでもついて回る気か。今度は騙されんぞ。
どんな味かはわからないが、タレは試す気にもなれずにドーナツだけを齧りつく。
やあ、安定の美味しさだ。ほのかに甘くて外はサクサク、中はモチモチ。
これも米粉で出来てるんだろう。
やっぱり揚げたてっていうのが最高だね。
さあ、お腹も満たされたし、残るはお買い物。お土産品だ。
ネパールのお土産ってどんなものがいいんだろう?
何が正解?
現地のお金も高級店でフォーと生春巻きを食べて少なくなっていた。
そういう意味でも失敗だったな。残りのお金で買えて、たくさん入っててとなると選択肢は限られてくる。
となるとあれかな。お土産物屋さんを後にしてスーパーマーケットを探す。
ネパールで日常的に食べられていてうまいと評判の・・・
はい、これ!「ビスケットのパールG!」
子供が前面にプリントされていて日本のビスコっぽいパッケージ。
小分けされていてたくさんの人に渡しやすいし、料金も現地価格でお買い得!
旅の初めの方にカトマンズで会ったリクシャのダリにもらったのがこのビスケットだった。
あのビスケットをミルクティーに浸して食べた時の美味しさは衝撃的だったな。自分用のお土産としてミルクティーに使う紅茶も買って帰る。
これで帰ってからもネパール気分を味わえるぞ。ふふ、わーい、ルン。
満足なお買い物が出来て上機嫌で帰路に着いた。
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