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哲学と『幸福』の関係

『人間とは?』『生きるとは?』『幸福とは?』という議論がなされるときに必ず登場するのが哲学です。

2000年以上前の古代ギリシャのソクラテスから始まったとされる哲学は、現在でも私たちの人生に大きな影響を与えています。

ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ニーチェ、フロイト、カント、サルトル、パスカル、ユングなど有名な哲学者の名前は誰もが一度は耳にしたことのある名前だと思います。

その中でも、現在のさまざまな学問はアリストテレスという哲学者から始まったと言われています。

アリストテレスが世の中のあらゆるものを『言葉』によって分類し、名前を付けることによって現在の経済学、心理学、物理学、倫理学、科学、化学、社会学など数えられないほどの分野に枝を広げていったのです。

この記事では何名かの哲学者の考えをご紹介したいと思います。

哲学は新しい発見と否定、再定義を繰り返しているので、矛盾する考えもありますが、どの哲学からも『幸福』になるヒントとは隠されています。

哲学の難しいところは、人によって解釈が異なること、内容が少し難しいことがあるので、できるだけ噛み砕いて説明します。

①レヴィ=ストロース

ストロースは人間の意思決定についての考えを『構造主義』という言葉で提唱しています。

『構造主義』とは、世の中にはすでに決められた自然法則や構造がすで存在していて、人間は自由に意思決定していると思いながらも、すでに決められていることに従っているに過ぎないと主張するものです。

また、この構造に支配されていることから『人間は自由』という発想は傲慢な思い込みであり、実は決められていることに従っている囚われの身だと言います。

実に面白い考え方ですが、疑問に思うことも腑に落ちることもあると思います。

ストロースは具体的に、まったく交流のない民族同士でも近親婚を禁止ていたり、結婚という概念、死者を悼む概念を持っているということを、自分ん足で世界中の民族と直接会うことによって発見しています。

これは、人間が試行錯誤をしてきたうえでたどり着いた結論であって、教え伝わったものではないので、人間は決まった構造に従って生きているということは理解できる気がします。

ただし、自由な意志などないと頭ごなしに言われても、そんなことはないと反論したくなるのも分かります。

そう思わなければ『生きている意味』というものを人間は見つけることができません。

ストロースの主張は現在においても大きな影響力を持っていますが、構造主義の主張も、『生きる』、『考える』ことのきっかけになる大切な概念です。

②フーコー

『人間は生まれながらに囚人である』という強烈なフレーズで有名なフーコーですが、彼の考えも理解できないものではありません。

人間はなにか悪いことをすると後ろめたい気持ちになったり、誰かにみられているのではないかと自然と不安を感じるものです。

また、仕事をサボったり学校をサボったりすると、罪悪感を持つことは、私を含め誰でも思い当たる節があると思います。

フーコーは、教育システムが人間を権力者の奴隷にさせているという考えを主張しました。

ここで興味深い具体例をお伝えします。

イギリスの哲学者としても有名なベンサムは、弟のサミュエルとともに、理想的な監視システムを持つ刑務所を設計しました。

その刑務所の名前は『パノプティコン』という円形に作られた建物の中心に360度見渡せる監視塔を作り、それを取り囲むようにして監視塔に向けて牢獄が並べられています。(言葉で説明するのが難しいので下の写真を参考にしてください・・・。)

この監獄の特徴は中央の監視塔から光が発せられ、その逆光によって囚人からは刑務官が監視しているかどうかも分からない点です。

なにか囚人が悪事を起こせば罰せられるのは当然ですが、そもそも逆光で刑務官がいるかどうかも分からないので、常に監視されているという心理状態を作り上げています。

学校教育は規律に従う馬車馬として働く労働者を作るシステムと言われる側面があります。

よくドラマなどでも取り扱われるセリフです。

その典型的なものが、学校では時間割ですべて行動が管理されていること、規律を守らない人間を他の生徒は許せずに、管理者(先生)に告げ口をするので常にお互いを監視し合っていること、長時間の単純作業に慣れさせることの三つの教育方針です。

できれば知りたくない教育の現状ですが、このように設計されているとフーコーは提唱しています。

確かに学校で規律を破ったり悪いことをすれば告げ口されて先生に怒られたり、時間を守らなければ怒られたり、毎日同じ時間に同じ場所に行くということを考えると納得せざるを得ません。

『それでは人間は幸福になれないのか?』という疑問を持つことになってしまいますが、このような思想や仕組みを知ることで、あなた自身の行動も変わるようになりますし、あなた個人の『幸福』を考える際に参考になるのではないでしょうか。

大切なのは、この考え方に縛られることではなく、この考えを知ったうえであなたが人生をどのように解釈し行動するかです。

『生まれながらに囚人である』という考えを、あなた自身のなかで否定できるように様々な哲学者の考えを知ることは、人生を豊かに生きるきっかけになることでしょう。

③ハンナ・アーレント

この人物はユダヤ系のドイツ出身の哲学者、思想家の女性です。

ハンナ・アーレントはドイツ軍によるユダヤ人の迫害から逃れるためにアメリカに亡命しました。

彼女の有名な言葉に『世界最大の悪は、ごく平凡な人間が行う悪』というものがあります。

それを象徴するのが、彼女の著書『エルサレムのアイヒマン~悪の陳腐さの報告~』という作品です。その内容を説明していきます。

第二次世界大戦中に、なんら根拠もなく諸悪の根源はユダヤ人にあるといって大量虐殺をおこなったナチスドイツ軍ですが、その大量虐殺に加担したアイヒマンという人物の裁判を傍聴した際の状況が記されています。

ナチスドイツでのアイヒマンの役割は、貨物列車にユダヤ人をひとりでも多く乗せて強制収容所に移送することでした。

アイヒマンはドイツ軍の兵士でしたので、その移送指示に忠実に従って、500万人近くのユダヤ人を輸送することができました。

しかし終戦後、ユダヤ人の大量虐殺に加担した人物としてイスラエル政府に裁判にかけられます。

傍聴席で息をのんでアイヒマンの出廷を見守り、どのような屈強で悪人のような人物が現れるかと思いきや、アイヒマンの姿はどこにでもいるような、普通の人物だったことに傍聴席は驚きを隠せませんでした。

(↓がの中心が実際のアイヒマンです)

アイヒマンはユダヤ人が大量虐殺されているのを知っていましたが、アイヒマン自身は軍部の上からの指示に従って仕事をしていただけだと主張しました。

アイヒマンには罪を犯した意識はなく、無罪を主張しましたが、結果死刑にを宣告され執行されました。

このできごとが『幸福や不幸とどう関係するのか』と思うかもしれません。

しかし、死罪になるほどではないですが、私の知人にとある金融会社に就職した人がいます。

彼は一般の大学生で、就職活動で採用された会社に勤めました。しかし、その仕事内容が違法な金利を得て貸し付けをしていることに気づきましたが、特にストレスもなく仕事として割り切っているので罪の意識はないと言います。

つまり、あなたも意識するしないに関わらず、罪を犯していることがあるかもしれませんし、罪を犯していると知りながら続けてしまう可能性がゼロではないということです。決して無関係ではありません。

最近テレビでは、いわゆる何を自分で運んでいるか知らない『運び屋』が割のいいアルバイトとして行われているのを目にします。

もちろん犯罪に加担している訳ですから、知らないでは済まないのですが、事実、知らずに犯罪に協力してしまっているというケースはあります。

もしこのような状況に立たされた場合、どのように振舞うべきか考えさせられる出来事です。

哲学とは一瞬離れているような印象がありますが、このようなことは身近にも存在するのです。

決して他人事ではなく、人生を棒に振る可能性があるということを忘れないでください。

哲学は正しい答えが出る学問ではありませんが、人生の教訓となるさまざまな考え方が凝縮されています。

つまり、『幸福』や『不幸』という現象を考えるときに欠かせない学問なのです。

著名な哲学者がさまざまな主張をし、『生きる』ということを定義しようと2000年以上かけてもまだ答えが出ている訳ではありませんし、今後、明確な答えが出るとも思えません。

しかし、その一人ひとりの考えをあなたなりに解釈し『幸福』につなげることはできます。

特定の哲学者や思想を植え込むつもりはありませんし、私自身も特定の人物を支持している訳ではありません。

今後も他の哲学と幸福の関係性を、記事をアップすることでご紹介していきたいと思います。



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