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筋骨隆々だるま野郎

アメリカの大学を卒業して日本へ帰国した。起業をするのが目標だったが、とりあえずその前に就職して経験を積もうと思った。

そして東京で就職活動を始めた。正直どんな企業でもよくて商社や金融など大手企業を中心に受けていた。あんまりお金がなかったので浅草の隅田川のところでよく野宿して、朝起きてスーツに着替えて面接を受けに行っていた。
正直就職活動が大嫌いだった。説明会でもみんなリクルートスーツを着て、グループ面接でにこやかに「御社が第一志望です」と答えるのを聞いて、こいつらと一緒にいたくないと思ってよく面接途中で抜け出していた。
実際にその会社で働いて知る前に、第一志望なんて心の底から言えるのか?とにかく自分にはどの会社も同じに見える。正直この時、尖りMAXだったので、社会ほぼ全てを敵とみなしていた。痛い学生だ‥。大手商社の100人近い説明会でみんなスーツの中、金髪革ジャンで行ったりしてた。

就職活動で自分に嘘をつくためにアメリカで死ぬ気で努力してきたんだろうか?こんなださい自分に成りたいがために?そんな葛藤を、当時アルバイトをしていた塾の塾長に打ち明けてみた。塾長はダルマみたいな筋骨隆々の体している元プロのラグビー選手で、その後自身で何回か起業して成功を納め、50歳で自分の大学を作ることを目標にして、謎にこのチェーン店のような塾で塾長をやっている(FCの資格取った後速攻辞めてたけど)。なんか変なやつが来たってことで、本当は塾の採用基準では落とさなきゃいけなかったけど、面白そうだってことでその人の権限で自分を採用してもらったのを後になって聞いた。
そこで塾長に起業を本当はしたい、でも起業する前には就職して経験を積んでから起業した方が成功すると思う。でも正直そんなことはないのではと思って悩んでいると打ち明けた。
塾長は「今すぐ起業しろ、俺も手伝うから。就職して得られるもんってなんだ?それもわからないまま就職する意味はあるのか?そもそも就職をしたから起業は成功するのか?たとえ社会人経験がなくても成功出来るのではないか?」と僕に言った。
こいつうっせーなと思ったけど、その通りだとも思った。その時は何も言い返せなかった。
それから毎日悩んだ。正直怖い。起業するのが。何もわからないまま起業なんて失敗するに決まっている。そもそも名刺交換だったり、営業の仕方も何もわからない。怖い。でもやってみたい。本当は起業したいのに、俺は就職活動に逃げようとしている。
よく当時周りの奴らは3年間企業で経験を積んだら起業すると言っていた。なんか俺はその言葉に凄く違和感を覚えていた。なんで目の前に階段があったらすぐに登らないんだろう?目的地を目指すのに大事なことはタクシーを呼ぶことでもヘリをチャーターすることでもなくて、目の前の階段を一歩踏み出すことだろ。だから起業したいなら、就職活動が今すべきことじゃなくて起業するこだろうと思っていた。でも皆んな怖いんだ。俺も周りのダサいやつらと同じなんだ。

もう一度、芸術家の岡本太郎さんの本を読み返した。ある言葉が、何度も見た言葉が改めて目に突き刺さる。
「怖かったら怖い方へ飛び込むんだやってごらん」
打ち震えた。いいや、失敗したっていい。例えどんだけ借金背負って失敗しても、自分の信念を貫いて踏み出した勇気ある一歩は自分の人生を変え、今後の人生の財産になる。死ぬほど怖い方へ俺は飛び出してやる。そう自分を奮い立たせ、震える手で大手企業からの内定を断って起業した。

国連を超える、国の概念を超える世界を繋ぐ組織を必ず作ってやる!よし会社名はUnited Worldにしよう!そして起業した。事業は何にしようか考え、そういえば塾長が歯医者向けに医療機器を販売する会社を起業していたのを思い出して、自分は歯科医師向けのポータブル歯科医療機器の販売をやろうと決めた。塾長からもこの分野でアドバイスももらえるはラッキーだと思い。
そこから見よう見まねで営業資料を作ったり、わけのわからんメールを医療機器メーカーや歯医者さんに送ったり電話したりして営業をかけまくった。名刺交換とか面談の仕方がよくわからんかったのでYouTubeで見て覚えながらなんとか営業していった。
そして時間は過ぎるも全く売上がでない。というか面談をするが、いつも何を話して良いかわからない。契約ってなんなのか、売った後の補償とかなんなのか、そもそもビジネスがどう成り立っているのか、新卒の自分には本当理解不能だった。当時は本当に「何がわからないのかわからない」がずっと頭に駆け回っていた。
正直自分は孫正義や柳井正レベルの人間で天才だと思っていた。アメリカに行って圧倒的に誰よりも勉強して圧倒的に成果をだして勘違いしていた。俺は天才じゃないのかも。これを認めるのが本当に嫌だった。怖かった。天才の俺じゃなきゃ世界を変えるよう大きなことは出来ない。厨二病だから。だから俺が天才じゃないなんて、ぱっと起業して成功出来ないようなやつだなんて認めない。嫌だ・・
でも自分の中では事業をやめたくてやめたくて仕方なかった。正直自分には早すぎた。この時になって、初めて企業に就職して営業を学ばなきゃと心底思えた。

自分が凡人と認めるのはつらい。でも認めなきゃ。この時が一番大きな挫折だったかもしれない。そして塾長に事業をやめますと伝えた。
塾長「おー、そかそか、君が失敗するのはわかっていたよ」
俺 「え?どういう意味ですか?」
塾長「ビジネスのことなんも理解していない君が成功するほど起業は甘くないからね」
俺 「じゃあなんで起業しろって言ったんですか?」
塾長 「だってその時の君は起業はまだ早いから就職しろって言っても絶対聞かなかったろ?
それになんで起業して成功する方が失敗より価値があると思うんだ?時には失敗して得るもののほうが成功より価値があると思わないか?それを君に知ってほしくて私は起業を勧めたんだ。」

ははっ、マジかよ。毎回おかしなこと言う人だなと思ってたけど。なんかその言葉はすっと納得した。
そうか。俺は失敗した。でも多くのことを得られた。というか知れた。自分は天才じゃないただの凡人。才能なんか何もなねぇ。だから俺は努力することでしか周りの天才たちに勝てない。もう一つわかった一番大切なこと。俺はとんでもなくちっぽけだ。1人じゃ何もできない弱虫だ。1人の孤独、寂しさに何度も起業して打ち負けた。俺1人じゃ何も出来ない。だから助けてもらう仲間が必要だ。
頼もしい仲間を集めて必ずこのユナイテッドワールドを復活させてやる!

続く‥

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