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仏教に学ぶ生き方、考え方「ポークカツの味」

「ポークカツの味」

 皆さんは、今まで食べたものの中で、一番美味しかったものはなんですか?最近食べたグルメなものより、意外と昔に食べたもの、初めて食べたものが記憶に残っていることはありませんか?

 私がまだ小学生だった頃、近くの駅のロータリーには沢山の喫茶店や食堂がありました。その中の喫茶店がポークカツ定食を看板料理にしていて、母親と一緒にそれを何度か食べたことがあります。
 
 小学生でそんな贅沢なもの食べてたんですね~と言われそうですが、母親は実は結構な美食家で、自身も美味しいものが大好きだったのです。

 そのポークカツは熱々の衣にコクのあるデミグラスソースがたっぷりかかっており、衣が浮かんで剥がれるくらいでした。口に頬張ると、ソースと衣の食感の後に、ポークの脂身と肉汁が口の中に拡がり、とても幸せな気分になったものです。

 もう今はその喫茶店はありませんが、あのときあの場所で食べたポークカツの味が今でも忘れられません。

 きっと味だけでなく、雰囲気もあったのだと思います。子どもが一人で来るような場所ではない大人の空間に入って、いつもは食べない未知の食べ物、ポークカツをいただきながら、その様子を目を細めて嬉しそうに「美味しいやろ〜?」と声をかけてくれる母親は、きっと観世音菩薩様の生まれ変わりではなかろうかと感じたものです。

 慈悲の心とはきっとこういうものなのかもしれないと思ったに違いありません。

 その母親も七年前にお浄土へ旅立ちました。でもその素晴らしい思い出とかけがえのない時間を残してくれた母親に感謝しかありません。

 きっと今日もどこかで、こういう特別な経験をしている子どもたちが沢山いるんだろうな~と思うとなんだか嬉しくなってきます。

☆今日の一句☆

  ポークカツ
     味も心も
       おいしいよ

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