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読書ノート「記憶する体」

読書ノート『記憶する体』著 伊藤あさ

「そうした切断や喪失を含め、自然と人為が混りじ合う記憶の場として、体を語ること。それが本書の目的でした」(P.274 2~3行より)

~読んで思うこと~

「身体と向き合った記憶の物語」

これは、著者の伊藤亜紗さんが、十一人の当事者にインタビューし、その体が当人にとって、どんな感覚で向き合ってきた記憶を語り、それがどんなものか考察している。

ここで語られる当事者は、全盲の人、吃音を抱える人、左腕に障害を持つ人など、様々だ。
個人的に一番興味深かったのは、エピソード10「吃音のフラッシュバック」だ。自分にも吃音があったからだと思う。障害を乗り越えたと思っても、不意に相手を自分と重ねてしまう時、フラッシュバック、投影してしまうことがある。

~感想~

伊藤亜紗さんの語り口は、第三者の視点から、寄り添うような温かさを感じる。その言葉は柔らかい。
自分の体の感覚を言葉にしたら、人それぞれ違う。
そんなことは当たり前だ。

だが、他人の感覚をどんな過程を通して獲得したものなのかを知ることは、普段、無意識に付き合っている体に対して、考えてみるきっかけになった。

この本にご興味持ってくれた人には、エピローグをぜひ、読んでほしい。
体らしさと向き合ってきた年月、記憶が混じりあい、その人らしさを作り上げていることに、アイデンティティのあり方の視野が広がると思う。

補足
中途障害ー一般に、人生の途上において障害が発生した者をいいます。対して出生時や周産期に発生した障害は、先天的障害あるいは生得的障害といういい方で区別しています。(Webサイト:介護110番より)


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