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圧倒的当事者意識のデメリット1

当事者意識を常に持つ。
当事者意識で常に考える。
通常はメリットしかない当事者意識なんですが、デメリットも実はあるんです。
避難者や被災者としての当事者意識は、特に。

気は優しくて力持ち

「気は優しくて」は、私のような本当に心優しい人間には、楽勝なんです。
私は本当に心優しいですからね。
※「自分で言うんかい。」を適宜入れてください。

問題は「力持ち」のほう。
一定以上の知識、観察、考察、洞察を駆使して、説得力を持たせるところも、そこまで難しいものではありません。
ただ、説得力は説得力でないのです。

説得力は説得力でない

説得力は、その力が強ければ強いほどに、正論により相手を叩きのめす暴力になります。
私は男性なものですから、マンスプレイニングと捉えられることさえあるでしょう。
※マンスプレイニングは暴論もあります。
※マンスプレイニングについてはこちら。

大震災に備えて冷え性の人間こそ防寒が大事だ。
大震災に備えて帰宅難民にならない靴を履け。

これ、怠っている人間からすれば正論による暴力でしかないんですよ。

「あなたの上着を借りる。」
「あなたがおんぶして避難して。」
こう返ってくるのが殆どなんです。

「わかりました。着ます。履きます。」
こう返ってくる人は本当に稀なんですよ。
(※稀な読者には大感謝です。)

説得力に説得力があるかどうかは、普遍的でないのです。
相手の当事者意識が一定以上は無いと、説得力が説得力を持たないんです。

人的資源の限界

私は本当に心優しい人間ですから、大震災時には上着を貸すでしょう。おんぶもするんでしょう。
けど、そこにまで人的資源を割く羽目になったら守りたい命が守れなくなる。
私は上着を用意することさえできなかった人間に上着を貸したいし、震災瓦礫で怪我をした人間をおんぶしたいのです。

「あなたが何枚も貸せばいい。」
「あなたが何往復もすればいい。」
こう返ってくることさえありました。

無理があります。
津波の場合にはそもそも往復は厳禁です。
津波の無い場合であれば良いということもない。
数十人分、数百人分の防寒着を持ち歩けますか。
成人をおんぶして何往復もできますか。

公助は最小限である

防災用毛布が市役所の防災倉庫にあるから良い、という老人もいました。
そもそも最小限の毛布ですから、冷え性の人間は考慮されていません。

それ以前に、市役所への往復は誰がしますか。
初動は避難者なんでしょう。
非高齢が徒歩で往復する羽目になるでしょう。
徒歩で何十往復も出来るわけがないでしょう。
「あなたは丈夫そうだからいける。」
そう言う高齢者はいくらでもいました。
いけません。不可能です。無理があります。

高齢者にまで往復させるのか、と言うつもりの人に喋らせるべきではないでしょうね。
そんな当事者意識では人間の限界を見誤ります。
人間には限界があるのです。
体力は無尽蔵ではないのです。

全住民がきちんと備えていて、それでも足りないようなら毛布はある。
それが前提です。
防災意識が低い人間が多いと命を守りきれない。
それが現実です。

圧倒的当事者意識のデメリット

圧倒的当事者意識のデメリットはそこなんです。

命を守る当事者である。
これが圧倒的当事者意識です。

でも守れませんよね。
震災関連死の予備群がこんなにもいると。
命を守る当事者なのに命を守りきれないのです。

心優しい人間が命を守りきれない。
ここまで想定してやっと圧倒的当事者意識です。

私では命を守りきれない。
日常の服と靴こそが、命を守るのです。

現在の被災地のことはもちろん考えます。
けれども、未来の被災地である現住所の衣食住をこそ、圧倒的当事者意識で考えませんか。

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