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ウォーキング小景(トイレ篇)【エッセイ】一八〇〇字

毎度おなじみのトイレの話です。食事前のかたは終えられてから読まれるように。なんていうほど、臭う話では、ありません。

 歩道で、後ろ脚をひろげ中腰でいたしているワンちゃんを見かける。モノが周辺に付かないようにしている姿は愛おしい。かつ、表情がいい。哀愁を感じさせる。家なら、専用の御不浄があるのだろうが、外ではお犬さまの公衆トイレはない。「こんなとこでしちゃって、ゴメンネ」と思っているかは定かではないが、申しわけなさそうな顔をしている。いや、単にきばっているだけなのかもしれないが・・・。ふと、40年ほど前の同棲猫ことを思い出す。
 17年勤めた会社に入ったばかりの、バブル期少し前の30歳のときのこと。生まれて1か月もたっていないようなトラ柄の猫が迷い込んできて、1週間後には同棲することになった。仕事にいくときは、玄関前の段ボールに目いっぱいの煮干しと水をどんぶりに入れて、猫もその中に入れる。戻ったときは、鍵を回すと音が出て、それを合図に塀から顔を出し、確認すると走ってきて肩に駆け上がるのが儀式になっていった。

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 ある日の夜、掃き出し窓を前脚で引っ掻き始めた。けっこう必死に。なんだろうと思いながら開けると、一目散に庭に出て行く。様子を見ていると、庭の隅で中腰になり、いたしている。「ああ、間に合ったぁ~」というような、ほっとした表情で。終わると、前脚で砂をかけ始めた。猫を飼ったことはあるが、小2のときで記憶が薄い。なので、ペットのトイレの知識などなかったし、いまのようにググって情報を入手することもできないので、室内には専用トイレは、置いていなかった。たぶん、私が外出しているあいだに用を済ましていたのだろう。その日は、夜になってもよおしてきて、日中使っている庭の隅の彼女用のトイレまで走ったということなのだろう。室内で粗相してしまう輩もいるようだが、わが同棲相手は上品だった。
 
 猫がなぜ「砂掛け」をするかについては、いろんな説があるようだが、面白い研究結果があった。

(https://www.konekono-heya.com/syuusei/cover.html)

 「外敵・獲物かく乱説」「遠慮説」「疾病予防説」の3説。
 このなかで、「遠慮説」というのはおもろいが、わが同棲猫は、とても賢かったので、「疾病予防説」を信じたい。
 私の勝手な想像だが、やはり清潔を旨とし、中腰スタイルでいたす犬・猫のDNAによって、種の保存をなしてきたのではないか。

 しかし、馬の場合、どこでもお構いなく歩きながらでも、いたすことがある。中腰にならない(なったとしたら滑稽だが)。が、尻尾は上げる。これも、種の保存のために一定の清潔感が求められるからだろうか。因みに馬のアレは、“ボロ”という。
 
 種の保存のための清潔感であるが、最近、人間さま(特に日本人)は、ウォッシュレット文化に洗脳されている。私なんかは、ほんの15年前までは、無縁だったのだが、この文明の利器の恩恵を享受していると、この装置なしの生活は成立しなくなった。しかも。病ダレに寺の病気が再発したことはない。
 それが、犬・猫たちにも普及し始めているようなのだ。写真にあるような、ペット専用ウォッシュレットまで、出現してしまったのだ。

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 因みに、「ウォッシュレット」の語源をご存知だろうか。「プロジェクトX」で、TOTOの開発当初の苦心話を見たことがあるが、そこでは紹介されていなかった。ところが、2016年11月20日の毎日新聞の記事にあった。

ウォシュレットは「さあ!洗おう」を意味する「Let wash(レット ウォッシュ)」を逆さにした言葉が語源だというのは本当です! こちらはTOTOさんの登録商標なのですが、TOTOの開発者さんが「みんながお尻を洗うようになってほしい」という願いから名づけられたそうなのです。

 最後に、またエレベーターでの話で、臭いがテーマ。
 ウォーキングから戻ると、同年代の前期高齢者らしき男とエレベーターで一緒になる。その後、2、3歳位の女の子と母親が乗ってきた。すると、第一声。
 「おじさん、クゥシャイ」と言いやがった。母親は、注意するわけでなく無言のまま。
 <おいおい、どっちのおじさんなんだ。オレじゃないよな。食事の度に歯間ブラシを使い、30分は歯をブラッシングしているし、3か月に1回はクリーニングもしている。加齢臭の原因と言われる耳の裏も毎日洗っているんだぞ、オレは>と思いつつ、そのガキをにらんでやった。すると、鼻をつまんでいるではないか。<なんとも可愛くないガキだ!>と思っていると、先に降りて行った。むろん、挨拶なし。
 おじさん(正確にはジジィだが)二人が残った。顔を見合わせ、彼は、<ボクじゃないですよ>と目で言っている。<オレだって、ちゃうぞ>と返したところで、彼が降りて行った。

(おまけ)
モーツァルトの『メヌエット』やチャイコフスキーの『白鳥の湖』、ショパンの『マズルカ』には、聴くと便秘を解消する効果がある、そうな。
(『ウンと楽しいトイレの過ごし方』より引用)

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