楠 正憲(デジタル庁統括官)

マイクロソフト、ヤフー、MUFGを経て統括官としてデジタル庁の立ち上げに参画。東京都 デジタルサービスフェロー、福岡市 政策アドバイザー、ISO/TC307 国内委員会 委員長などを務める。

楠 正憲(デジタル庁統括官)

マイクロソフト、ヤフー、MUFGを経て統括官としてデジタル庁の立ち上げに参画。東京都 デジタルサービスフェロー、福岡市 政策アドバイザー、ISO/TC307 国内委員会 委員長などを務める。

    最近の記事

    採用担当はGitHubを通じて何を見るか

    GitHub上でのコード流出被害が、三井住友銀行だけでなくNTTデータ、NEC、埼玉県庁にも被害が広がっている。素朴な疑問として、リスクを冒してまで客先のコードを持ち出してGitHubにアップロードしたとして、仮にバレなかった場合に年収アップで華麗な転職を実現できるのだろうか。 GitHubを使った年収予測が実際に何を見ているのかは分からないけれども、わたしは採用担当として求職者のGitHubアカウントを眺める機会が時折ある。AIとて人間が設計しているのだとすると、人間と似

      • GitHubでの業務ソースコード流出 背景にIT業界の二極化と多重下請け構造

        45歳のプログラマーの男が仕事で書いたコードを年収判定のためGitHubに上げて、複数企業の業務で使われていたコードの一部が流出した。GitHubは本来、公開して構わないオープンソース等のコードを共有する場で、年収判定サイトは、コミュニティでの活動を評価に結びつけようというコンセプトだった。しかし男は業務として開発した商業機密として保護すべき顧客のソースコードを不当に持ち出して、自分の年収を判定してもらうために丸ごと公開してしまった。 GAFAはじめネット企業を中心に、自社

        • 地銀のフロッピーディスク取り扱い終了を機に振り返る、記録媒体の栄枯盛衰

          地銀がフロッピーディスクの取り扱いを終えるという。記事を読むと驚いたことに、山形銀行だけで市町村や中小企業など約1,000もの取引先が、銀行にフロッピーディスクを持ち込んでいたらしい。フロッピーディスクには様々な種類があって、1990年代には2.88MB(フォーマット前4MB)の容量を持つ2EDというのもあったが、世間的には1.25MB(フォーマット前2MB、IBM互換機では1.44MB)の2HDというのが主流だった。よく新聞朝刊とか文庫本1冊の文字情報がフロッピーディスク1

          • SIベンダーを中抜きすればDXできるのか?そんなに甘い話は転がっていない

            日本はユーザー組織よりもベンダーにIT人材が集中していることが、DXを阻害しているといわれる。すぐにオンプレのサーバーを売ろうとする、クラウドで頼むといってもIaaSで持ってくる、ちょっと目新しい技術を指定したら見積もりが跳ね上がる。そういったSIベンダーに対するフラストレーションが、ひょっとして内製に切り替えれば、もっと迅速かつ低コストに新技術を導入できるのではないか?という期待に繋がっているように見える。 もしも夢が叶うならば、決められた予算、決められた要員で、生産性が

            これから日本の大組織が悩む、自動暗号化Zipファイルの代わりをどうすべきか問題

            内閣府・内閣官房がメールサーバーの設定を変更して添付ファイルを自動的に暗号化Zipに変換する仕組みを停止させた。情報処理学会の機関誌『情報処理』が7月号で暗号化Zipメールの小特集を組み、10月に入ってデジタル改革アイデアボックスに暗号化Zipの添付廃止が提言され、11月24日平井卓也デジタル大臣が記者会見で自動暗号化ZIPファイルと同一経路を使ったパスワード別送の廃止を表明、翌25日から内閣府・内閣官房のメールサーバーの設定が変更された。 電子メールの添付ファイルの自動暗

            M1搭載Macの第一印象と、迷っている人に贈る買い時かどうかの基準

            発売日に予約したMacBook Airが昨日やっと届いたので、ぼちぼち触ってるんだけど、周りに話を聞くと迷ってる人がいるようなので、買うまでに悩んだことや、この1日ちょっと触って分かったことを書き留めておく。 どのモデルを選ぶか悩んだところ今回発表されたのはMac mini、MacBook Air 13インチ、MacBook Pro 13インチの3機種。うちの場合は外部モニターを使える机が足りていないのでMac miniは却下。モニターとキーボードが遊んでいれば、安いし評価

            複業で仕事が回る職場は、みんなにとっても働きやすい職場

            ここ何年か「働き方改革」の文脈で、副業やら複業が話題になってますね。私は大学に入って働き始めた19歳の頃から、24年くらい複業であったことしかないので不思議な気分です。昔はライターとか、背取りとか、副業でできる仕事というと限られていましたが、最近はだいぶ職種も広がってきた印象があります。 「副業」を認める会社が増えたことが話題になった一方で、「副業」として働ける会社が少なかったもんだから、「副業」として働けますよと募集をかけると、優秀な方に応募いただけます。そこで受け入れる

            DXの壁は人材でもSIerでもなく雇用

            日経のシリコンバレー支局からZoomでインタビューいただいた内容が新聞に載ったようです。支局の方はインタビューって現地でされるんだろうと思ってましたから不思議な経験というか、コロナ禍にあって色んなことが起こるんだなーって思います。 どうもシリコンバレーでブイブイいわせてる直販モデルのSaaSベンダーが何故か日本でだけはSIer経由の間接販売になっていて、それってどーゆーこと?という疑問に答える過程で、いろんな話をしたんですけれども、なんか見出しだけみるとSIerが悪くてDX

            行政デジタル化 青写真と今後の論点

            新型コロナ感染症対策での様々な混乱を受けて、今後こうしたことが起こらないように、菅官房長官(当時)の肝煎りでデジタル行政サービスと自治体情報システムの在り方を見直すWGが6月に立ち上がり、この金曜朝に総理臨席のもと3回目の会合がありました。検討の叩き台となる行政情報システム改革のトータルデザインについて斎藤構成員から説明があり、私からも補足説明させていただいた他、戸籍へのカタカナ氏名の追加や、自治体標準化について討議が行われました。関連資料はこちらからダウンロードできます。

            なぜ自治体のシステムはバラバラなのか

            政府が自治体システムの仕様統一を決め、来年デジタル化のための新法提出を目指すと報じられました。自治体システムの標準化はかねて総務省で検討が進められてきて、直近もデジタルガバメント閣僚会議の下に設置された「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善 WG」で議題に挙がり、わたしも議論に参加しています。 技術屋の視点でみると、法律で定められた似たような住民事務を、どうして1740もある自治体がバラバラにシステム構築しているのか、不思議に思われるかも知れません。ひとつのシ

            人命か、経済か、ではなく

            徐々に病床が逼迫してきましたね。まだブレーキを踏めていないので、これから2週間は感染が拡大するのでしょうか。そうなると東名阪などいくつかの地域で病床が溢れそうです。統計上いまのところ病床は余っているように見えますが、既に東京では宿泊療養向けに確保したホテルの部屋が溢れたのか、ホテル療養よりも自宅療養が多いという状況が続いています。 ソーシャルメディアのタイムラインを見て、発熱して息苦しいがコロナ対策の番号には繋がらず、急患で触診してもらったら風邪と診断、CTとか撮ってもらえ

            新型コロナは東京一極集中を是正するか

            そろそろ通勤電車で座れなくなったり、外出自粛が緩んできていることを肌で感じる。引き続き在宅勤務を入れつつ、ちょくちょく少人数での対面会議や取材・会食も入るようになって、なかなか日程調整が難しい。産業セクターだけでなく職種や部署なんかによって対応にバラツキが出てきた。 一方で新規感染者数は高止まりして、身近で感染の話を聞くこともあって、ひたひたと足音が近づいていることも感じている。大学の授業は後期もリモートが中心になりそうだという方向で、その準備も進んでいる。 コロナ対策と

            不透明な時代を生き抜く獣道のすゝめ

            街を歩いてると原状回復のためか工事を行っている飲食店が増えたように感じる。新型コロナ感染症対策による営業自粛から数ヶ月、自粛は解けたが相変わらず客足は遠のき、いつまた緊急事態宣言が出るかも分からない。いくつもの大学が後期についても遠隔講義を続けることを決めた。 飲食店の中には廃業を決めて、急には賃貸契約を解除できないので、しばらく営業を続けている店舗も少なからずある。1ヶ月、2ヶ月の間はしのげるけれど緊急事態宣言後も客足が戻らず、いつまでこの不透明な状況が続くのか見通せない

            本当は恐ろしいジョブ型雇用、ミスマッチの解消が運用の要に

            人ありきで仕事を割り振っていくメンバーシップ型雇用に対して、仕事に対して人を割り当てていくジョブ型雇用で課題となるのは、ミスマッチが発生しがちなことです。足りない役割は外から採用すればいいのですが、問題はジョブからあぶれた人をどうするかです。欧米では契約解除とするのが一般的ですが、日本では解雇が厳しく制限されてきたとされています。 ジョブ型の「本家」の欧米では、実績があがらず会社が改善を促しても結果に結びつかない場合、契約解除になるのが一般的だ。これに対し解雇が厳しく制限さ

            成果主義の次はジョブ型雇用?定着するか掛け声倒れで終わるのかの境目は

            コロナ禍で在宅勤務が増えて労働時間管理が難しくなったことなどから、ジョブ型雇用への関心が高まっているようです。成果で評価するという点では、それって四半世紀前に「成果主義」といって取り入れたんじゃないの?と思わぬでもないのですが、目指す方向として理解はできます。 一方で労働時間管理とか賃金体系の柔軟性について、我が国においては工場労働者の保護のために労働規制が整備されてきた歴史的経緯もあって、なかなか柔軟に運用することが難しい実情もあるようです。法律もさることながら判例法理や

            何故お役所ってオワコンIEが大好きなの?

            まさか2020年にもなって、こんな解説を書かねばならぬことになろうとは思わなかったけど、マイナポイントの件で久しぶりに電子申請のIE縛りが話題になってますね。「当時普及していたIEを採用した」(総務省)というコメントが火に油を注いでしまった。わたしが把握している現場の事情としては「キャッシュレス決済との紐付けだから、住民にはスマホを使ってもらうことを想定。自分のスマホを持ってない利用者向けに自治体窓口などで使える端末を用意しており、その環境ではIEが使えるので他ブラウザ対応は