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新型コロナは東京一極集中を是正するか

そろそろ通勤電車で座れなくなったり、外出自粛が緩んできていることを肌で感じる。引き続き在宅勤務を入れつつ、ちょくちょく少人数での対面会議や取材・会食も入るようになって、なかなか日程調整が難しい。産業セクターだけでなく職種や部署なんかによって対応にバラツキが出てきた。

一方で新規感染者数は高止まりして、身近で感染の話を聞くこともあって、ひたひたと足音が近づいていることも感じている。大学の授業は後期もリモートが中心になりそうだという方向で、その準備も進んでいる。

コロナ対策として始まった在宅勤務やオンライン授業などが今後も定着すれば、一極集中の状況が少し改善するかもしれません。家賃や物価が高い東京で暮らす必然性が低下するためです。コロナの感染者の多くは東京で見つかっており、過密都市のリスクが改めて顕在化しています。

先行きが見えない中で気が早い気もするが、新型コロナによって東京一極集中が是正される可能性について議論が進んでいる。確かに親は在宅勤務、子どもも在宅で授業を受けるとなると、今いる家では手狭と感じる。都心通勤圏の場合、寝に帰るだけであれば共有できても、みんな一日中、家で作業するには手狭な間取りというケースは多いのではないか。

少なくともこれから家を買う、引っ越すという人は、在宅勤務を意識して、十分に使える間取りの家を探すことになるだろう。これまでよりも通勤時間が長くなったとしても、ひとり一部屋を確保できる物件に手を伸ばすケースが増えそうだ。一方で東京通勤を前提としない働き方までが増えるかというと、今後の推移を見守る必要があるだろう。

今はまだ助成金や緊急融資による激変緩和が効いているけれども、もうしばらくこの状況が続く場合は、同じように補助し続ける訳にはいかなくなる。飲食店はじめ様々な業種が立ち行かなくなることが予想される。そのことによって街の利便性は大きく変わってくる可能性がある。その時に都心部での生活がどのように変わるのか、もうしばらくは変化が続きそうだ。

一方で、雇用や事業そのものが脅かされた場合、求職活動や融資・補助金の申込、顧客の新規開拓など、既存取引や定型業務以外のところで、どうしてもリモートだけでは難しい営為も増えてくる。また、民間の取引よりも政府による補助金が経済を回すようになってしまうと、都心部にいなければまとまらない話も出てくる。例えば戦時中は用紙統制によって出版社に対する政府の権限が強まったことで、多くの出版社が東京に集まってしまった例もある。そうなってしまうと短期的には、都市部に通いにくいところまで引っ込むことが得策とはならない可能性も考えられる。

当面は都心の飲食・娯楽といった利便性や通勤時間よりも、巣ごもりを前提とした間取り・買い物優先の郊外、ネット接続の選択肢が限られ、繋がりにくい高層マンションよりは、ブロードバンド回線の選択肢が多い戸建てや低層マンションの需要が増えるかも知れない。

「新しい当たり前」の中での安定した仕事や働き方が固まらない限り、働きやすいけれども世の中が元通りに戻ったとしても取り返しがつく移動に留まるのではないか。わたし自身いまの家を手狭と感じる一方で、このタイミングで買い換えることも勇気がいるものだから、このまま在宅勤務が増える状況が長引くようであれば、近くに書斎代わりの小さな物件を借りたものか、悩んでいるところだ。

まずは新生活や賃貸の人たちから物件の選好が、在宅勤務を意識した方向に変わりつつあるのだろうか。戸建て・持ち家も含めて新しく買う人については、ある程度は在宅勤務を意識した間取りの物件が流行ることになるだろう。しかしながら完全リモートを前提とした住まい選びを行うには、雇用と業務のリモート比率などが安定することが前提となる。

新型コロナの都市部における流行や、これを受けたリモートワークの普及は、確かに東京一極集中を是正するきっかけとなり得る。しかし本当の意味で労働者が安心して東京なり都市部を離れられるためには、役所の手続きや民間の契約だけでなく、求職や営業といった非定型業務も含めて、非対面・リモートで当たり前のように回せるようにならなければ難しい。

今はまだ従来の業務のうち何割かをリモートで回せるようにしているだけで、新規の経済活動をリモートで新たに興すには至っていない。この国が本当に東京一極集中ではないカタチで経済を回していけるようになるためには、今ある仕事をリモートに置き換えるだけでなく、リモートを前提とした新しい経済活動が生まれ、多くの人々がそれによって安心して生計を立てられるかどうかにかかっているのではないか。

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