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【インド・カシミールへの旅】⑤登山編~電気・シャワー・インターネットなしの7日間

2021年9月に訪れた、カシミールへの旅行。登山の記録。
今回は、登山中のキャンプ生活について書きます。

7日間シャワーなし!?

登山ツアーに出発する1週間前、ツアーのウェブサイト内に書かれていた「登山中の注意事項」を友人と確認していて、驚きました。

Please note that:
- No shower facility during the trekking.  
(登山中、シャワー施設はありません)
- No access to grid at the camp sites
(キャンプ場に充電設備はありません)
- Please expect no signal available in the mountains
(登山中は携帯電話の電波は入りません)

登山中の7日間、シャワーも、電気も、インターネットもない・・
電気なし、インターネットなし、は耐えられると思いましたが、
シャワーなし、しかも7日間、、これは絶対耐えられないと思いました。
(キャンプ場にシャワー施設があると思い込んでいた私が間違いだった。)どうしても身体を洗いたければ、川で水浴びをすることもできますが、
登山する山の気温は10℃前後で、水浴びは不可能だろうと思いました。

まだ1週間ある。「キャンセル」の文字が、頭をよぎりました。
でもカシミールには行ってみたい。山にも登ってみたい。

「みんな汗臭いのは一緒だから、気にならないよ!」
「7日間を終えた後のシャワーは最高だよ、きっと!」
友人にそう言われて、「それもそうだな」と考え直し、
一抹の不安を抱えながらも、参加することにしました。

登山中のキャンプ地

登山中は、登山ルートの中であらかじめ決められていたキャンプ場にテントを張って寝泊まりしていました。
「キャンプ場」と言っても、シャワーもトイレもない、山岳地帯のなかにある平地です。何もないところにテントを張り、翌朝には撤収して次のキャンプ場で宿泊、という毎日でした。

日本のキャンプ場のような、「管理人の人が常駐して運営している」ところを勝手にイメージしていたので、なかなか新鮮な体験でした。
管理人はおそらく、その地域に住む村の人々で、登山ツアー運営団体の人は、村の人々とはお互いによく知っているようでした。

山の中でのキャンプ(筆者撮影)


2人1組でテントをシェアする(筆者撮影)
キャンプ場の近くで集まっていた、近隣の村の人々(筆者撮影)


登山中のトイレ事情

登山前、シャワーにくわえて気になっていたのが、トイレでした。

インドで登山をする場合、観光客が多く来る場所でない限り、登山コースには公衆トイレはありません。野外排泄をすることになります。
しかし、登山者がどこてもかんでも野外排泄をすると、環境保護の観点からよくないと考えられています。特に水源の近くで野外排泄をすると、河川の水を汚染します。その河川の水を生活・飲料用水に使う現地の村で、経口感染を引き起こす原因になってしまいます。

私が参加した登山ツアーの運営団体、Indiahikes では、キャンプ地で環境に配慮したドライ・コンポスト・トイレを設置していました。
これは土中に穴を掘った簡易トイレですが、このトイレでは、排泄後、
排泄物の上にココピート(ココナッツ殻の内皮にある繊維を原料とした天然有機質100%の土壌改良材)を少しかぶせます。こうすることで排泄物の生分解を促進する仕組みになっています。また、トイレの中には自然由来の原料で出来たお香が設置されており、トイレ特有の臭いは全く感じませんでした。

7日間のトイレ事情を気にしていましたが、このドライ・コンポスト・トイレは衛生的にも十分で不安は感じませんでした。日中の移動中はトイレがないため、野外排泄をするほかないですが、河川の近くでは用を足さないよう、かなり厳しく言われていました。

キャンプ場に設置された、ドライコンポスト・トイレ(赤いテント)
キャンプ場に馬や羊たちもやってくる


7日間 インターネットなしの生活

山の中では電波が入らないため、登山中は7日間ずっと、インターネットなしの生活を送っていました。
インドでは、ここ数年で通信環境のインフラが大幅に向上し、かなり地方の農村でも主要通信会社(Airtel または Jio)であれば、だいたいの場所で電波が入ります。ただし、山の中ではさすがに電波は届かないようでした。

この7日間の間は休暇を取り、連絡が取れないことを仕事仲間には伝え、
親しい人々には音信不通になることを前もって伝えていました。

7日間の「つながらない生活」は自分にとって非常に良い経験でした。
以下、デジタル・デトックス生活の個人的な感想です。
興味がない方は読み飛ばしてください。

7日間 「つながらない生活」を送ってみて、思ったことが2つあります。
「自分にとって取るに足らない情報に相当な時間を費やしている」
「”今” ”ここ” にある瞬間を楽しむことの大切さ」

です。

「自分にとって取るに足らない情報に相当な時間を費やしている」
7日間の登山を終えて、7日ぶりにインターネットに接続したとき。
久々にインターネットに接続したら、予想通りたくさんのメッセージ、メールが来ていました。でも、すぐに返信する必要がある要件、すぐに無事を連絡する必要がある人は、ごく一部でした。それ以外は、少し時間を置いてから返信しても良い要件、流しても良い要件でした。

また、以前はSNSやアプリに流れ込んでくるニュースも、一度身を置いてみると、すべてを知る必要はなかった、と気付きました。

常に「つながった」生活に身を置いて、情報や通知にさらされることで、自分にとって重要な情報、そうでもない情報の区別ができなくなっていました。「つながった」生活から少し距離を置いてみたら、本当に必要性が高いことと、そうでないことを俯瞰して捉えられるようになりました。

「”今” ”ここ” にある瞬間を楽しむことの大切さ」
言葉通りですが、「”今” "ここ" にある瞬間、起きていること、会っている人、見えている景色、誰かと共有している雰囲気を楽しむ」ことを、もっと大切にしようと思うようになりました。

登山中や、キャンプ場で友人と過ごしているときは、常に「いま起きていること」「感じていること」「一緒にいる人と共有している瞬間」に、意識を100% 向けるようになりました。

気を散らかせるものがない環境で、何かに集中することは、非常に気持ちの良い体験でした。見えている景色、自然の音やにおい、雲や草木の動き、一緒にいる相手のストーリー、、注意を100%向けると、そのひとつひとつを、全力で楽しんでいました。

そして、ネットなしの生活を送って得たこの学びは、
インターネットから遮断しなくても、山に登らなくても、
実践できることだと感じました。

7日間の登山経験で得た、大きな気づきでした。

7日間 シャワーなしの生活で気づいたこと

7日間シャワーなし。
登山前は「無理だ。頭も身体もかゆくなるし、それでストレスも溜まるだろう。そんなの耐えられない!」と思っていました。

しかし、7日間の登山を終えて感じたのは、
「やってみれば、意外と何とかなる!」ということでした。

テントを張ったキャンプ場では、朝晩は0℃近くになり相当冷え込むため、身体に水をあてることもできませんでした。最初の数日間は、登山した仲間と「身体洗いたいよね・・」「汗臭くてごめんね・・」なんて言っていましたが、日が経つうちに、環境にも慣れてしまいました。
顔と手足だけは毎日洗い、身体はウェットタオルで拭いていました。
身体を洗えないことに対するストレスが、不思議となくなっていくのを感じました。「1年に1回くらい、こういう体験をしても良いかもしれない。帰ったらシャワーを浴びれるんだから」くらいに思うようになりました。

この経験を経て、自分にとって必要不可欠だと思っていた「快適な」環境も、一度その外に出てしまえば意外と何とかなる、と気付きました。

7日目に下山して、スリナガルのホテルに戻り、温かいシャワーを浴びたときは天国でしたが・・


以上、登山中の生活について、シェアしました。
少し哲学っぽい内容になってしまいましたが、インドでの登山、意外といけるんじゃないか?なんて思ってもらえたら嬉しいです。

次回は、カシミールの登山で出会った絶景について書きます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



【インド・カシミールへの旅】記事一覧

①カシミールは安全?
②旅の基本情報(ベストシーズン、移動手段、有名な観光地など)
③登山編~インドの登山ツアーってどんなもの?
④登山編~個性豊かな登山者たち
⑤登山編~電気・シャワー・インターネットなしの7日間
⑥登山編~息をのむ美しい絶景
⑦登山編 ~インドでの登山をオススメする理由3つ
⑧観光編~湖上のハウスボートに泊まる
⑨観光編~スリナガルのおすすめスポット&カシミール料理



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