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世にも奇妙な埋蔵プロット

短編小説「膝枕」のClubhouse朗読リレーが続いている(経緯、番組表、二次創作など詳しくはマガジンに)。元々は2007年に書いた「世にも奇妙な物語」企画提案プロット。送信メールを掘り返すと、2007年と2008年の日付が入ったプロットがぞろぞろ出てきた。

今、この番組の企画募集に応募するとしたら、数本に絞り込んで、磨き上げて提出すると思うが、当時のわたしは「こんなにいろんなの考えられます!」とプレゼンしたい気持ちもあったのだろう。

プロットは「作り手の意図が伝わるあらすじ」「脚本の骨格がわかる流れ」などと紹介されるが、監督やプロデューサーが読んで「作りたい!」と乗ってくれたら勝ちなので、「この物語を一緒に育てませんかと口説くラブレター」でもある。番組との恋は片想いに終わったが、「膝枕」のように、時を経て、場所を変えて、面白がってくれる人が現れるかもしれないという下心を込めて、公開してみよう。

徳川埋蔵金ならぬ今井埋蔵品。

「膝枕」は「隙があるから膨らませやすい」ところが読み手の遊び心をくすぐり、豊かな解釈やアレンジにつながっているのではと思っている。こちらに紹介する作品は、さらに隙だらけ、ほぼプロットのままの形。朗読するのも脚色するのも、より自由度が高いのではないだろうか。

膝がウズウズする作品があれば、読んだり膨らませたり、遊んでやってください。膝枕er(ひざまくラー)の皆さん、とくに歓迎。

他に発掘した「男が妊娠する話3連発」と、ルーツ作品「私じゃダメですか?」のルーツのような「スタンドイン」のプロットは、独立したnoteで紹介する予定。

目次の各タイトルから作品に飛べます↓

今井雅子作「みがわり君に恋して」

親からも上司からも結婚を催促され、女はうんざりしていた。見合い写真を何十枚見ても、お見合いパーティに何十回出ても、ときめく出会いはなかった。

ところが、一人暮らしの部屋でコンビニ飯を食べながらテレビを観ていると、運命の人が現れた。彼の名は「みがわり君」。自動車の衝突事故の危険を訴えるデモンストレーションに使われるハリボテ人形である。彼の遠くを見る目に母性本能をくすぐられ、何度はねられても耐え抜く強さに男らしさを感じ、女は一瞬で恋に落ちた。
 
翌日から女は「みがわり君」を追いかけ始めた。彼がデモンストレーションへ向かう先々で待ち受けるのだが、彼が車にはねられそうになると、「危ない!」と飛び出すので、主催者側には危険人物としてマークされる。監視の目をかいくぐり、傷ついた「みがわり君」に手当をしているところを見つかった女はつまみ出されるが、「障害があるほど愛は燃える!」とますます想いを募らせる。
 
止められても追い返されても一途に「みがわり君」を追いかけるうち、女は、みがわり君の遠くを見る目が女を見ているように感じるようになる。
 
ある日、デモンストレーション会場へ急ぐ女にトラックが突進してきた。女が死を覚悟したそのとき、目の前に男の影が飛び込んだ。男をはねた衝撃でトラックの進路がそれ、女は一命を取り留める。自分の代わりにはねられ、地面に転がった男に目をやった女は、見覚えのあるその服を見て、叫んだ。

「みがわり君!」

女の一途な愛に打たれて、奇跡が起きたのだろうか。みがわり君は自らの意思でトラックの前に飛び出し、女を救った。だが、それは一瞬のことで、再び動かないハリボテ人形に戻っていた。
 
衝突のダメージで損傷し、使い物にならなくなったみがわり君は女に引き取られた。やがて、家族も友人も同僚も式場スタッフも困惑する、女とみがわり君の披露宴が執り行われた。女の前に飛び出して以来、みがわり君の体が動くことはなく、女に抱きかかえられての新郎新婦入場となった。

「新郎新婦の入場です」と司会が言いかけたそのとき、廊下から言い争う別な新郎新婦の声が聞こえた。どうやら挙式当日になって破局の危機。「あんたとだけは結婚したくない!」と新婦が叫ぶ。その瞬間、みがわり君の体が動いた。女の手から離れたみがわり君は新郎に突進して倒し、新婦の隣に納まった。
 
女は思い知る。あの日、みがわり君が自分の代わりにトラックにはねられたのは、愛のせいではなかった。みがわり君の本能が目覚めて潜在能力を爆発させただけだったのだ。
 
挙式寸前に新郎であるみがわり君に逃げられてしまった女は途方にくれるが、招待客は集まってしまっている。どうしようと目を泳がせたそのとき、たった今、みがわり君に倒され、新郎の座を奪われた男と目が合った。すがる目になっている互いの波長がピーンと合う。運命の出会いは、どこに転がっているかわからない。女が男に腕をからめると、「新郎新婦の入場です」と司会が高らかに告げた。

今井雅子作「生霊写真」

ビリヤードに熱中している若い男がいた。ほったらかしにされた恋人がビリヤード場に怒鳴り込んだ。

「あなたもビリヤードも大っキライ! あなたが不幸になるように、呪いをかけたから!」
 
翌日、バイト先の写真プリント屋で現像を担当した写真の上がりを見た男は、ギョッとなる。写真の一枚に、その場にいないはずの男が、プリント屋の制服姿でなぜか写っているのだ。ネガにもしっかり焼きついている。

心霊写真ならぬ生霊(いきりょう)写真。しかも、本来別の人間が写っているところに男が写り、入れ替わってしまっていた。原因不明の事故だと客に説明して謝るが、納得してもらえず、気味悪がられる。
 
男は仕事でのうっぷんをビリヤードで晴らそうとするが、気分は乗らず、やっていても面白くない。恋人の予言が当たったような薄気味悪さも覚える。
 
プリント屋で再び同じ事件が起こる。2回目は結婚式の新郎と入れ替わってしまっていた。そして、3回目は卒業式の袴姿の男子学生と……。一日一回、数百枚に一枚の確率で、不運の一枚が現れるのだった。
 
店長が男にクビを言い渡したそこに、生霊写真目当ての客が押しかける。生霊写真を持ち帰った客にラッキーな出来事が起こるようになり、それが口コミで評判を呼んだのだ。だが、写り込む仕組みがわからないので、意識してもうまく写り込めるものではない。写れと念じてもうまく写らず、あてが外れた客からはまたクレームの嵐。
 
結局、男はプリント屋をクビになった。そして、次のバイト先を探すため、履歴書用の写真を撮ることにした。
 
駅の3分間写真のボックスに入って撮影し、待つこと3分。出てきた4連写真には、見知らぬ若い男が写っていた。前の客の撮ったものが残っていたのだろうか。もう一度撮影し、待つこと3分。出てきた4連写真には、タキシード姿の花婿が写っていた。悪い予感がして、もう一度撮影し、待つこと3分。出てきた4連写真には、卒業式の袴姿の男が写っていた。
 
そして、男は思い知る。男とビリヤードを恨んだ元恋人が、「玉突きの呪い」をかけたことを。男はもう一度、3分間写真を撮る。プリント屋で入れ替わったのは3枚だけだ。次は自分の写真が出るはず。だが、もし、出なかったら……。そこに見知らぬ誰かが写っていたら……。

3分を待つのが怖くなった男は、写真を受け取らずに立ち去った。

今井雅子作「影子」

ある晴れた日、女の「影」が突然意志を持ち始めた。女の後をついてくるだけだった「影」が女を引っ張り、行き先を変えてしまうのだ。おかげで女はデートに行けなくなり、恋人と喧嘩する羽目になった。
 
女は、意志を持った自分の影に「影子」と名づけた。影が出来る晴れた日を避けて外出するようになった。夜は街灯を避けた。

灯りのついた室内にも影子は現れる。女は部屋の中を暗くするようになった。女の異様な行動を気味悪がった恋人は別れ話を切り出した。
 
影子のせいで女の人生は踏んだり蹴ったり。ついに女は「私から離れて」と影子に言い渡す。しょんぼりしたのか、影子は少し縮んだように見えた。
 
翌日、女は、自分の影が消えていることに気づいた。自分にだけ影がないのは不自然な気もするが、すれ違う人は誰も気に留めない。その日、彼女は、別れた恋人が二股をかけていたことを知る。また、影子のせいで行けなかった場所で事故があったことも知る。

影子は、女がひどい恋人と別れるよう仕向け、身の危険からも守ってくれていたのだ。女は走り回って影子を探すが、持ち主とはぐれた迷子の影は、どこにも見つからなかった。

泣き明かした明くる朝。窓から射し込む光の眩しさに目を覚ました女は、部屋のひだまりに影子の姿を発見する。影子はおずおずと女に近づき、やがて女とひとつになった。

「もう離れちゃダメだよ」

女は床のひだまりに広がる影子におおいかぶさり、抱きしめた。


今井雅子作「いしぶみ姫」

その昔、文字をしたためた手紙ではなく、旅先で拾った石を届けて遠くにいる恋人に気持ちを伝える「石文(いしぶみ)」というものがあった。時は流れ、メールで手軽に気持ちを伝え合える21世紀。由緒正しい家柄の跡取り娘、しかも超美人という現代版かぐや姫が結婚相手を決めるにあたって出したお題が「いしぶみ」。最も彼女の心をゆさぶった石文の送り主が選ばれるとあって日本中からこれはどうだ、という石が続々と献上される。

中の空洞に水がたまって音がするアンデスの珍しい石。はるか昔、南の島で通貨としてやりとりされていた、転がる石。「あなたと食べる一生分のサラダのために」の願いを込めた岩塩。うけ狙いの漬物石……だが、姫の心を射止める石は現れない。

「姫は芸術が好き」という噂が流れると、精巧な彫刻をこらした石や石のオブジェといった作品が届くようになる。それでも反応がないとみると、「気持ち」というのは結局のところ「金(かね)」なのではないかという憶測が流れ、特大ダイヤモンドや世界にひとつしかない稀少な宝石が競い合うようになる。だが、姫の心はそよともゆれなかった。

一人また一人と脱落していき、姫は奇人なのではないか、よっぽどの悪趣味なのではないかと悪い噂や憶測が流れた。いつしか五年の歳月が過ぎ、石文合戦のことを世間が忘れた頃、ようやく姫の結婚相手が決まった。お披露目に姿を現したのは、貧弱な冴えない男だった。どんな石文で彼女を口説き落としたのかと問われた姫は、

「時を宿す石にございます」

と手のひらにのせた小石を一同に見せたが、どこにでもある石ころにしか見えなかった。姫はこの貧相な男に騙されているのではないかと一同は姫を憐れみ、同時に面白がった。

姫は穏やかな微笑みを浮かべたまま、お披露目の会場の外にある庭に目をやった。灰色に見えるその庭に目をこらすと、無数の小石が敷き詰められていた。その庭を満たすだけのただの石を、男は贈り続けたのだった。五年の歳月をかけて。

今井雅子作「 ダブルホーム」

平凡で何の取り得もなく、職場にも家にも居場所のない男が仕事から帰宅すると、ダイニングテーブルが二つにふえている。新品を買ったのではない。今ある中古のものとまったく同じ形、傷まで同じ位置にある。まるで立体コピーを取ったかのようだ。椅子もセットで同じものが揃っている。「このテーブルは一体どうしたのだ?」と男が問うと、「いつの間にか増えていた」と妻は涼しい顔をして言った。

妻と子どもたちは新しく出現したテーブルで食事をし、男は元からあるテーブルで一人淋しく食事を取るようになる。翌日は冷蔵庫が二つになっていた。あろうことか、中身までそっくり同じである。そんな調子で洗濯機が、掃除機が、電子レンジが二つになっていく。ただでさえ狭い家がますます狭くなってしょうがないが、男が騒ぎ立てても家族は相手にしない。

ところが、数日後、男が帰宅すると、家の中がすっきりしている。テーブルも冷蔵庫も洗濯機も掃除機もひとつずつ、物がふえはじめた前にもどったのだ。だが、妻と子どもの姿が見えない。ふと窓の外を見ると、隣の空き家にわが家とそっくりな一戸建てが建っている。屋根の形も色も、窓の形も位置も、窓の向こうに見える間取りも、置いてある家具のレイアウトも瓜二つだ。どうやら、増えた家具や電化製品はそちらへ引っ越したらしい。そればかりか、妻と子どもまでがそっちの家に集まっているではないか。

男がコピー版のわが家に乗り込むと、自分のコピーがちゃっかり居座り、妙に楽しそうにやっている。「この男は一体どうしたのだ?」と男が問うと、「いつの間にか増えていた」と妻は涼しい顔をして言った。男はすごすごとオリジナルのわが家に引き返した。「広いな」と男はつぶやいた。

今井雅子作「未来予想写真」 

被写体の未来を映してしまうカメラがあった。怪我、結婚、出産など、あらゆる未来を予想してくれる。手相占いの写真版のようなものだ。ある大会社の社長が撮ってもらったところ、写真に彼の姿がなかった。死を予想された社長は焦り、自分から死を遠ざけるために、あらゆる手段を講じる。移動や外出はなるべく避け、毒見されていない食事には手をつけない。家を訪ねる者には身体検査をし、消毒を強要する。不自由だが死ぬよりはマシだ。

社交界から遠ざかり、友人が減り、孤独になった。こうなると、生きていても楽しみがない。結局、98まで生きた。大往生ではあったが、晩年は何のために長生きしたかったのかわからなくなってしまっていた。創業者の社長を喪った会社は畳まれ、社屋は博物館となった。

彼の写真を整理していた遺族は、未来予想カメラが撮った写真のネガを発見する。トリミングの関係で写真では建物の上部が切れてしまっていたが、ネガには建物屋上に掲げられた「博物館」の看板が写っていた。カメラがとらえたのは、社長が天寿を全うした後の未来だった。

今井雅子作「英語カンパニー」 

超日本的な中小企業に就職した新入社員がある朝、出社すると、社員たちがかなりムリのある英語で会話している。アメリカの投資家が出資を検討しており、近々視察に来るのだという。社長の鶴の一声で、今日から社内の公用語は英語になったらしい。

「ジミー」「ジョン」「トミー」といった痛々しいニックネームがつけられ、笑えないアメリカンジョークが伝授される。大げさなジェスチャーやハグやキスといった慣れないものが次々と導入され、社員は戸惑うばかり。一言でも日本語を喋るとマイナス査定、減給の対象になるという。だが、辞書を引きながらのたどたどしい会話では会議が進まず、誤解や間違いも続出し、会社の業績は急落する。それでも「ネバーギブアップ」と社員を励ます社長。

数か月の特訓の後、アメリカから投資家が来日。英語で出迎えた社長に「日本語でやりまひょ。わて、英語きらいでんねん」となぜか大阪弁。社員の努力は報われなかった。 

今井雅子作「ナカモリタロウ」 

会社帰りに憂さ晴らしの酒を飲んだほろ酔いサラリーマンが終電をつかまえようと駅へ向かっていると、「あ、ナカモリタロウだ!」と声をかけられる。「ほんとだ」「本物だ」とちょっとした人だかりができる。そんな名前の有名人がいるのか、テレビを見ないサラリーマンは首を傾げるが、珍しくちやほやされて悪い気はしない。

「見ましたよ、こないだのドラマ」「今までの役でいちばん好きです」と持ち上げられるうちに調子に乗り、「役作り、大変だったんだよね」などと話すと、「もっと聞かせて」となり、近くの飲み屋になだれ込む。

飲み屋でもママや女の子たちが大騒ぎ。サインを求められ、「ナカモリタロウ」と書き殴ると気分が大きくなり、「今日は俺のおごり」と豪語してしまうサラリーマン。酒の勢いも手伝ってロケの裏話などをでっち上げ、すっかりいい気になっているところに、冴えないサラリーマンが取り巻きに囲まれて入店する。

「シタモリジロウ」と呼ばれ、ちやほやされている彼を見て、サラリーマンは店のからくりを知るが、時すでに遅し。請求書は恐ろしい額になっている。「騙しやがったな」と文句を言っても、店の者はしらばっくれる。証拠といえば「ナカモリタロウ」の色紙だけだが、それを書いたのは騙されたと騒いでいる本人だ。

財布をすっからかんにして支払いを終え、「ナカモリタロウ様」の領収証を受け取るサラリーマン。束の間のスター気分は高くついた。

今井雅子作「GYツアー」

二人あわせて200キロの巨漢夫妻が旅行代理店で「GYツアー」なるものをすすめられる。

「GYって何ですか?」「ゲキヤセです」

店員が小声で耳打ちしたのを「ゲキヤス」だと聞き間違え、その場で申し込む夫妻。安いこと、得することが大好きなゆえ、ブクブク太ってしまったのだ。

実際GYツアーの価格は激安、それもそのはず、空港からの送迎はなくジョギング、食事は自炊で薪割から自力、ベッドは早いもの順で、あぶれた者は野宿。

「金返せ!」と夫妻は息巻くが、一週間の滞在で二人あわせて20キロの減量に成功。ツアー名通りゲキヤセしたので、料金は返ってこない。

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脚本家・今井雅子(Clubhouse朗読 #膝枕リレー)

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ありがとうございます。ドラマ「イジューは岐阜と」取材で食べた五平餅❤︎
🎤Clubhouseにて「膝枕」オトナの朗読リレー中 https://www.joinclubhouse.com/@masakoimai ✏︎saita連載小説「漂うわたし」✏︎オーディション発「私じゃダメですか?」脚本公開✏︎おじゃる丸✏︎嘘八百シリーズ