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結果を出すリーダーは大雑把な情報や未確定の情報の扱いが上手い(3/3)

世の中がリードタイム短縮の方向に向かう中で、製品開発はもとより、さまざまな分野で計画のあり方に工夫が求められるようになってきました。
ところが、多くの人たちは工夫をせず、闇雲にこの問題に取り組んできました。工夫を伴わない無理なアプローチはここかしこに軋轢を生みます。
そのひとつが、設計部門と生産部門のいがみ合いでした。

3部構成の2回目である今回は、問題解決に焦点を当てました。
私の解決方法はこうでした。

開発部門と生産部門の代表者に集まってもらい、お互いの要望や不満、手の内をさらけ出してもらい、情報の流れやコミュニケーションのやり方に、お互いが納得できるルールを定めます。
これにはタイミングが大切で、実施するのはプロジェクトが本格的に始まる前です。

私のこのようなやり方は、一般的にはコンカレントエンジニアリングと呼ばれています。
3回目の今回は、コンカレントエンジニアリングと、その本質を握るフロントローディングについて話しをします。

コンカレントエンジニアリングとは、手戻りのリスクを考慮しながら、依存関係のある作業を同時並行で行うエンジニアリングプロセスのことで、1980年代にブームとなりました。
日本に対して劣勢だった米国の学者たちが、日本の製造業のやり方を研究し尽くして生み出した方法、それがコンカレントエンジニアリングでした。

当時の日本人は、本来は順次処理するしかない作業を、持って生まれた“阿吽の呼吸”で同時並行する能力を持ち合わせていました。それゆえに、コンカレントエンジニアリングを真似する必要などなく、当たり前のようにこれができていました。
ところが今は、製品や製品開発が極端に複雑化し様々なものがグローバル化する中で、“阿吽の呼吸”が過去のものになりつつあります。コンカレントエンジニアリングという我々の天性の能力は失われつつあるのです。

結局のところ、うまくやるための方法はコレしかありません。

大雑把な情報や未確定の情報をプロジェクトマネジメント(=計画)の中で上手く扱える仕組みを工夫し、かつ、それを下支えするための設計部門と生産部門双方の信頼関係を築き上げる。

リスクや課題をどちらか一方に押し付けるのではなく、お互いが一致団結して問題に立ち向かうことが大切です。そこに工夫が生まれます。
縄張り意識を捨て去らなければ道は開けません。


このような難解なテーマと具体的に向き合うとき、キーワードは “フロントローディング” です。

プロジェクトが本格的に流れ始める前に最上流から最下流までのすべての関係者が垣根を越えて一堂に会し、それぞれが考える期待や要望、制約、成功のポイントなどを伝えあい、これらの情報を基盤として全体像を組み立てる。

これがフロントローディングです。

どのような情報をどのタイミングで相手に引き渡し、受け取った側はそこからどう動くのかなどを合意した上でルールを定め、お互いが果たすべき責任と役割、為すべきこと、コミュニケーションルールなどを明らかにします。
その上で、実行段階には進捗状況や課題を共有し、調整しあい、協力しあいながら問題を解決していきます。

フロントトーディングで扱う情報は大雑把であり、大雑把ゆえにそこにはリスクが存在します。大雑把な情報や未確定の情報を、リスクに配慮しつつ、どう上手く扱えるかが成功のカギです。
フロントローディングは、コンカレントエンジニアリングを支える、欠くことのできない大切な概念です。

今回は製品開発プロジェクトを例に話をしましたが、想像力を働かせてみてください。これと同じようなシチュエーションは皆さんの周りにも必ず存在するはずです。
繰り返しますが、これは私たちが直面している、とてもリアルな問題なのです。

最後に付け加えておきます。
コンカレントエンジニアリングは卓越した計画力の下でしか成し得ません。
フロントローディングは、私が提唱している“全体計画”そのものです。


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