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よりぬきしりんさん

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2019年12月の記事一覧

わたくしの名前

わたくしの名前

   わたくしの名前

 修身の時間に、しば野先生が、
「君たちの名前は、どのやうにしてつけられたのか、親に聞いてくるやうに」
とおつしやいました。
 だからわたくしは、連らく張に、大きく「名前のことをきく」と書きました。

 あれから幾年月。
 直後、南方に居た父の戦死公報が届いた。祖父母と母との折合いが悪く、急な転校を余儀なくされた。転々と居を移し、中学卆業後、私はF市の仕出し屋に就職した。大

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あいうえおでかけ

あいうえおでかけ

あさからゆきふり
いたいめやだから
うすでのてぶくろ
えきまではいてく
おねえさんみたく

かたてはぽけっと
ききてはおそとに
くるまがとおれば
けいこうしょくの
こぜにいれだして

さみしくなったら
しょくばによるの
すこしだけぱぱの
せびろをきてみる
そしたらげんきが

たくさんでるから
ちいさなぶーつと
つなぎのやっけと
てぶくろをはいて
ともだちのうちへ

なぞなぞのえほん
にんぎょう

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note の悲しい音

note の悲しい音

*(note はいいなあ)* 
 実に、いろんな人が居る。同じ人など、どこにも居やしない。「何から何まで違う」と、一旦は言い切っても構わない。

 あたりまえのようなこの感慨から、どの方角に一歩を進めるか、あるいは進めないか。その選択にさえ、それぞれの人のそれぞれの価値観はにじみ出る。

 note は、かたや商業ベースのプラットフォームでありながら、大多数のユーザーはそんな事には頓着なく、各々の

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魔法はまだ続いているから

魔法はまだ続いているから

 百円の魔法使いは、とっきゅうのれっしゃに乗って帰っていった。

 昨夜遅くから、病状はほぼ最悪だった。首と胸元が苦しくてうまく眠れず、何度も何度も乾いた咳をして妻を起こしてしまう。北の大地の北の山際が明るみはじめたころ、私はようやく眠りについた。

 「った」
 妻の声で目が覚めた。娘が、お地蔵さんのような顔で、私の胸元に眠っていた。すぐに蹴る毛布を着せ、おとおさんのさっぽよに興奮して眠りの浅い

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