世界史

#3 世界史の教育的意義を問う。

こんにちは!
毎週金曜日開館の【Vivid Books】へようこそ!
世界史は教養として注目されていますが、高校時代からずっと苦手意識を持っている人は結構多いのではないでしょうか。そんな人にオススメしたい、世界史の第一歩的な読みやすい一冊です!

目次
1.今週の一冊
2.本の紹介
3.学び・気づき
4.さいごに

1.今週の一冊

タイトル:「24のキーワード」でまるわかり!最速で身につく世界史
作者:角田陽一郎
出版:アスコム、2015年


2.本の紹介

この本は、東大文学部西洋史専攻卒のTBSディレクターが書いたものです。著者が言うには、テレビ制作は決められた時間に伝えたい情報を構成・編集し、視聴者に「最速で身につく」ことを意識しなければならないそうです。

そのような視点に立って、24のキーワード(文明・水・宗教・思想・帝国・商人・中華・民族・征服・周縁・発見・芸術と科学・国家・約束・理想・革命・産業・統合・分割・戦争・イデオロギー・お金・情報・未来)に関する話が分かりやすく簡潔にまとめられています。

年号や膨大な用語の暗記だけでは見えてこない、「なぜその事件が起きたのか」「現代とどう関わっているのか」「当時の人々の心の動き」が分かる、興味喚起の一冊です。


3.学び・気づき

①例の提示
②世界史から学べること

僕はあくまで高校の範囲にとどまりますが、世界史知識はある方だと思っています。この本は世界史初心者にターゲットを絞って書かれていますので、内容的には既に知っていることが多かったのですが、世界史が得意でない人向けにどう伝えたらいいかという学びを僕に与えてくれました。

まず例の提示についてです。
例えば、一神教と多神教の違いについて話すときに自分なら、「信じる神様が1人と決まっているか、複数存在するか」という説明しかできなかったでしょう。しかし、この本ではその違いを「あなたも神様になれるチャンスがあるかないか」と説明し、その関係を「矢沢永吉とAKB48」に例えています。どうゆうことでしょう?

矢沢永吉を崇拝しても、あなたは矢沢永吉にはなれません。しかし、AKB48を崇拝していて、自分が望んで努力すればメンバーになれるかもしれません。多神教はあらゆるものが神様になり得るため、新しいメンバーがどんどん増えていくんですね。こう聞くと苦手な方もスッキリするかもしれませんね。

なので、このように世界史が苦手な人でも分かりやすい例えが出るように、工夫して話すということと、さらに深い知識をつけることを意識しようと思いました。
ただ、今の若い人には「米津玄師と乃木坂46」の例えの方が分かりやすいかもしれませんが。(笑)


もう一つは世界史を学ぶ意味についてです。
これはどの科目もそうかと思いますが、その科目を学ぶ意味が分からないという状態は苦手意識を生み出すと思うんですね。
だから、世界史が苦手な人の中には、世界史を学んでもあんまり意味ないんじゃないかと思っている人が多い気がします。

僕が塾講師をしていた時に歴史の苦手なある生徒が、「歴史なんて学んで大人になって語る人いるんですか~?学校か塾の先生だけじゃないんですか~?」と言ってました。

でも歴史ってその用語自体を覚えることが目的じゃないと思うんですよね。角田さんは世界史を学ぶ意味についてこう触れています。

反対だったものがやがて公認になる、この逆転現象は世界史では日常茶飯事です。今あなたが信じる思想や考え方や法律だって、以前ならおかしかったかもしれませんし、今おかしいと思われていることがやがて常識になることもあるのです。現代の日本に住む僕らが信じる価値基準で、各時代や各国を判断することの愚かさと虚しさ、それを十二分に実感できることが、世界史を学ぶことで得られるとても大きな財産です。      (p.85から引用)

哲学者であるニーチェの名言に「事実というものは存在しない。解釈というものが存在するだけだ。」というものがあります。見方によって物事は変化する。角田さんのメッセージもそれに近いものを感じます。こう考えると世界史を学ぶことはめちゃくちゃ大事に思えます。


しかし実際にはそう捉えられていないのです。多様な価値観を理解する視点が本当に世界史を学ぶことで身につけられるなら、そもそも世界史を学ぶ意味を見いだせていない人はもっと少ないはずですから。


4.さいごに

僕らは46億年続いている地球の長い歴史の中に、ポーンと突然生まれてきました。

自分が作った世界の、第一章から生まれて今まで生きてきたわけではありません。だから、この世界でどう生きていくかなんて分からないのです。

でもヒントをくれるものはあります。それが「歴史」です。


例えば、あなたが会社の上司から机の上にいきなりドン!と、自分とは全く関係のなかった他チームのプロジェクト資料を渡されて、「これやっといて」と言われたとします。

「なんで私がやらなきゃいけないの?」とか「どう進めればいいの?」とか「このプロジェクトの経緯は?」なんて疑問が出てくるかもしれませんが、上司の命令には逆らえず、渋々仕事に取り掛かろうとします。

でも他のチームが進めていたプロジェクトなので、あなたは何も知らない状態ですから、このまま仕事に取り掛かることはできません。

そこで初めて、あなたはそのプロジェクトの「歴史」を知ろうとするはずなのです。


つまり、「今」の何かに強い関心や疑問を持っている人は、まず「歴史」から学ぼうとするはずなのです。

「このバンドかっこいい!好き!」と思えば、Wikipediaでバンドのメンバーとか結成経緯について調べるでしょう。それと同じです。

逆に言えば、まず、現代社会に対する疑問をたくさん掘り起こすような学びの機会が充実していれば、少なくとも今よりは世界史を学ぶ意味を見出す人が増えるのでは?と思うわけなのです。


と、世界史の教育的意義について考えてみました。


次の定期投稿は水曜日【キャリアデザイン学超入門#4】です。
それではまた。

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