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真己の小説集

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私が書いた小説の集積所 ドロッとしたものが多いかもしれません サクッと読みやすいのもあったりします
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記事一覧

黄昏古物店 カシワギ軍曹の場合

黄昏古物店 カシワギ軍曹の場合

黄昏古物店 カシワギ軍曹の場合

・登場人物
ナツメ
年齢不詳。長い黒髪で底の見えない真っ黒な瞳の長身の女。
黄昏古物店の女店主。
思い出を食う妖怪。
彼女に食われた思い出は消失するわけではなく、ありありとその姿を残して焼き付くことになる。まるでつい先ほど起こったことのようにしっかりと思い浮かぶので、悪い思い出の場合は苛まれることとなる。
強い魔力と知性はもつが、人間の道理と彼女の道理はずれている

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無題

無題

 無題 小囃真己

私達が、何故これを遺そうと思ったのかについては、長くなるので端的に言うと、私達は確かに存在してたと言うことを知ってほしいかった
きっと貴方が見つけてくれるだろう
そして、私の想いに触れて、感じて、誰かに話してくれることを望む

最初は、もちろん本人である私から
私は、心の弱い人間だ
それは貴方も知っていると思う
だから、私は私達になった
私として産まれてしまったことを後悔してい

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お題で短編「楽しそうに笑うあの人」

お題で短編「楽しそうに笑うあの人」

 高校二年の夏休みの前日、僕は東さんに告白をした
 終業式の後に呼び出して、蒸し暑さと緊張で汗だくになりながら、体育館の脇の渡り廊下で思いを告げた
 「じ、実は、一年の頃から君が好きで、えっと、ずっと見てました!いきなり、こんなことを言われてもって思おうかもしれないけど、あの、えっと、ぼ、僕と付き合ってもらえませんか?」
 全然、スムーズに言えなかったと思う
 つっかえたり、上ずったり、それはもう

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カフェオレと愚痴

カフェオレと愚痴

 君が元カノに対してどうアプローチするかなんて僕にはどうでも良いことなんだ。
 それをどうこう語られたって困るんだ。
 相談とは言いつつ、自分の中で答えなんか決まっているのだろうし、僕はすぐにでもこの話を切り上げて、キッチンにあるスープの残りを温めてゲームを起動したい気分なんだ。
 なんてことを素直に言えるわけもなく、ずっとこの男の話を聞いている。
「ちょっと辛いことあってさ。自分でもどうして良い

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夕焼けと黒髪

夕焼けと黒髪

教室の窓辺で、ボーッと夕日を眺めていた
真っ赤な夕日とオレンジ色に燃える雲、空色が少しずつ濃紺に移ろう
僕が大好きな時間の大好きな空模様を眺めて、君の話を聞き流していた

チラッと君の方に目をやると、風に靡いた黒髪が夕日に照らされて赤く光る
真っ黒で、繊細で、艶のある黒髪に夕陽がよく映えていた
「聞いてるの?」
君はそう言って僕を睨んだけれど、ぼんやりとしか聞いていなかった僕は、
「あぁ、聞いてる

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