#6 ファクトベースで見る、歯科医療市場のハイポテンシャル − ベンチャー起業家の経営学の活かし方 −
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#6 ファクトベースで見る、歯科医療市場のハイポテンシャル − ベンチャー起業家の経営学の活かし方 −

赤司征大|WHITE CROSS株式会社

私のNoteでは、歯科医療に専門特化したヘルスケアベンチャーのWHITE CROSS株式会社の経営を中心に、ベンチャー企業での日々を記しています。

私は歯科医療の家系に生まれ、東北大学歯学部の学生時代に中小企業診断士を取得し、歯科医師として臨床を経験した後に、2013年から2015年にかけてUCLAのビジネススクールに留学をしました。その留学中に、COOの田代・CFOの井上と共に起業したのが、WHITE CROSS株式会社です。

私が留学していた当時、米国におけるヘルステックへの投資額は年々倍増していました。日々、新しいテクノロジーやサービスが生まれては消え、ビジネススクールでも専門の授業が行われ、ベンチャーキャピタリストや実際の起業家、そして企業の中の人がゲストスピーカーとして登壇していました。学校の外に目を向けると、巨額の資本調達やM&Aが日々ニュースになっている時代でした。

The Creative Destruction of Medicine. Eric Topol 2011.12.2

The Great Inflection of Medicine.

まさにその言葉を体現するような環境で、ジリジリとした焦燥感に駆られながら同時にワクワクする日々を過ごしていた私が、留学以前からの人生の基軸であった歯科医療領域で起業したのはごく自然なことでした。

ヘルステックの授業で学んだ資料の一部

ところがヘルステックと言っても、歯科医療となるとイメージがない方が多いです。ヘルステックのカオスマップを見ても、歯科領域のベンチャー企業は業態を問わず「歯科」として括られることが多く、ヘルスケアを得意とされている投資家の中でも歯科領域への理解が深い方は少ない印象です。そして、実態として歯科領域のベンチャー企業は少ないです。

今回は歯科医療はどう言う市場であるのかについて、データを基に記載していこうと思います。

歯科医療市場

世界市場は急拡大

歯科医療の世界市場規模は急拡大しています。

世界の歯科医療市場規模は、様々な予測データがあります。例えば、Fortune Business Insights社は、2020年の34.7兆円から、2028年には56.4兆円へと1.6倍に拡大すると予測しています。Precedence Research社は、2021年の46.2兆円から、2030年には87.0兆円まで拡大すると予測しています。(2022.04.10の為替レート $1 = ¥124.43で換算)

他にも様々な予測が出されていますが、共通しているのは
・ 歯科医療市場は急拡大する
・ アジア市場が成長を牽引する
ことです。

他産業の年平均成長率と比較しても、歯科医療は世界において向こう10年で急激に成長する市場の一つと言えます。

北米市場_Fortune Business Insights

また、成熟市場である北米市場も停滞期を抜け、成長期に突入することが予測されています。

成熟国家における歯科医療として、両極端な制度を有しているのが、米国と日本国です。米国においては、歯科医療は基本的に保険外診療であり、特徴から分類すると医療にして贅沢財に近しいです。それに対して、日本の歯科医療は広範囲な治療が公的保険でカバーされており、特徴から分類すると医療として公共財に近しいです。その背景の違いから、米国での市場拡大理由は、日本のそれとは異なります。元々北米における歯科治療は、市場原理的に需給バランスのコントロールがなされている緩やかな成長市場だったのですが、コロナ禍の影響で受診が抑制されたことにより、一時的に市場が縮小したように見えるだけです。それに加えて、全米国民に何らかの医療保険を提供しようとしたオバマケアをトランプ政権が否定し、バイデン政権で再度、医療保険の拡充路線が取られたというのもあります。

発展途上国における歯科医療としては、例えばODAプロジェクトの一環として、青空の下で麻酔をして歯を抜くという国々もまだまだあります。そう言う国々では、都市部にいくと高所得者向けに先進国と遜色のない歯科医療が提供されていることがあります。これは、アフリカ諸国にインターネットが導入される際に、日本国が歩んできた1G → 2G → 3G → 4G → 5Gと言う通信システムの段階的進化とは異なり、いきなり4G・5Gから導入されることに似ています。いずれにせよ、国が豊かになっていく過程で、歯科医療へのニーズも高まり、ごちゃ混ぜと混沌の中で一気に市場が拡大していくことになります。21世紀は「アジアの世紀」と言われることからも、成長著しいアジア諸国が、世界の歯科医療市場の成長を牽引するのがごく自然なことと言えます。

日本国市場も拡大

日本国内において、まるで斜陽産業であるかのように語られることがある歯科医療市場ですが、実際はその市場規模を拡大させています。

中央社会保険医療協議会 総会(第504回)議事次第_歯科医療(その2)より

歯科医療の提供をになっているのは、日本全国に散らばる小規模の歯科医院群です。「コンビニより多い」と揶揄されることもあり、経営が苦しいように思われがちな歯科医院ですが、帝国データバンクのデータをもとに見てみると、過去20年以上に渡り歯科医院の純粋な倒産確率は0.01%から0.02%を推移しています。歯科医院件数を68,500件とした際に、年間約15件が倒産するイメージです。ちなみに、日本社会における小規模企業の倒産確率はどのデータを見ても概ね0.20%前後です。

「普通にやっていて歯科医院が潰れることはない」というのが現実です。私は立場上、多くの歯科医院経営者から相談を受けますが、歯科医院経営が傾く理由は、ほぼほぼ経営者個人に起因する人災です。

様々なデータがありますが所得面から見ても、
・ 歯科医師の約半数は個人事業主であること(経費が使える)
・ ライフイベントによる短縮勤務者の増加
などを考慮すると、日本社会で誠実に生きて家庭・従業員を守り、その人生を全うするには良い仕事ではないかと私個人は思います。

日本の歯科医療市場が拡大する背景は、米国や発展途上国における市場拡大とは異なります。長くなるため割愛しますが、ここにおいては未来志向で、日本社会において歯科医療が果たすべき役割の拡大について記載していきます。

日本社会において歯科医療が求められる領域は拡大

現在、日本国は超高齢社会に突入しており、高齢者率は継続的に高まっていきます。医療費増加には様々な理由があるのですが、国民一人当たりの医療費は年齢とともに急増します。

その背景にあるのは、医療そのもののパラダイムシフトです。日本経済が停滞するなかで、医療費の増加は重い負担となります。そこにおいて、如何に人々の健康寿命を伸ばし、医療費を抑制するか・・・それを面として可能にする日本社会を作り上げていくかが、現代日本社会の喫緊の課題となっています。

ここにおいて歯科医療は、

健康の入り口であり、全身健康に影響を及ぼしています。

そして、健康な高齢者に、社会経済活動に参加してもらうことが求められています。そこにおいて、高齢者の虚弱化(フレイル)をいかに防ぐかが大切になってきます。このフレイルの予防においても、歯科医療は大切な役割を果たします。


歯科医療への期待が高まっていることは、「経済財政運営と改革の基本方針」。つまり骨太の方針からも読み取れます。

2017年、歯科医療にとって大切な一文が盛り込まれました。

これは、口腔の健康が全身の健康につながっていることを、日本国が国策において明言したことを意味しています。

この数年間で、口腔健康と全身健康のつながりを示す研究論文が世界で同時多発的に出てきています。歯周病と失明、心臓病、アルツハイマー病、関節炎、骨粗鬆症・・・あげるときりがありません。

臨床現場に立ったことがある歯科医師の目から見ると、それは当然のことと言えます。中度の歯周病があるということは、手のひらと同じ面積の慢性的な炎症があることを意味しています。口腔の病原性細菌や通常は無害な常在菌が、炎症から循環を通じて全身に回り、様々な病気の原因となっているのは、口腔と全身のつながりを考えると自然なことと言えます。経済効果検証・対応策の社会実装は、ベイビーステップで進んでいくことになります。

無論、歯科治療や口腔ケアしたから全身疾患が必ず改善されるはずもありません。歯科のポジショントークで、一つの側面だけからごり押してしまうと隣接する医療・介護領域より多くの反論が出て然るべきですし、それは違います。ここで私が伝えたいのは、「社会の流れとして人々の健康を維持していく上で、口腔の健康が重視されるのは良いことである」と言う概論です。

そして、2018年、2019年、2020年にも追記がなされ、2021年には以下のようになりました。

一昔前と比較して、口腔の健康と全身の健康のつながりについて、一般メディアが報道することも増えてきました。10年後の日本社会においては、「タバコは体に悪い」と同レベルで「口の健康を無視にすると、全身の病気になる」という常識が生まれていると私は考えています。

2025年を目標に構築されようとしている地域包括ケアシステム、そこにおいて活きるかかりつけ機能強化型歯科院、医科歯科連携の推進、口腔健康の全身影響の見出しによる口腔ケア・歯科検診の充実など・・・今、歯科医療は日本社会において、これまで提供してきた価値を大切にしながら、その役割を大きく拡げていこうとしています。

歯科医療が、この流れを上手く活かし、社会が求める歯科医療への変化できた時、現代日本社会の大切な課題

・ 如何に人々の健康寿命を伸ばすか

・ 医療費を抑制するか

・ それを面として可能にする日本社会を作り上げていくか

その全ての解決に深く関わることができ、国家・国民にとっての歯科医療の価値が高まって行きます。

歯科医療の人類価値は高まっていく

こちらはWHOが発表している、人類の死亡原因の変化予測です。

日本国においてアルツハイマー病などの認知症や糖尿病においては、医科の学会が歯周病との関連性を認めています。また、心疾患、脳卒中などにおいても、口腔の健康との関連性について様々な研究成果が出てきています。このことからも2030年、2060年の世界の死因に占める歯科医療の間接的影響は大いにあると言えます。

現在の人類の平均寿命は案外高く72歳です。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国以外の世界各国が、高齢化社会に突入していく中で、口腔健康の全身健康への影響が世界の死亡原因の観点からも注目され始めると私は考えています。今後、歯科疾患が高齢化社会が必然的に向き合う医療費増加の間接的原因としてより一層認識されるようになっていくことに伴い、歯科医療の重要性は世界的に高まっていくのではないでしょうか。

そこにおいて高齢者の歯科疾患対策を、社会保障制度内に組み込み、面として対応していこうとしている日本の在り方は、各国の医療政策におけるベンチマークの一つとなっていくのではないでしょうか。

日本の歯科医療は領域によっては世界の先端

完全な医療制度は存在しません。あらゆる医療制度において、Pro/Conがあります。そして医療制度が違えば、提供される医療も大きく違ってきます。その一方で、医科と比較して、ある程度歯科医療が根付いている国であれば、世界各国基本的に同じことが行われています。日米を比較しても、虫歯を削って埋める行為自体は同じです。

日本のトップランナーの歯科医師の臨床能力は、世界のトップランナーと遜色がありません。また、例えばマイクロスコープという医療機器を活かした治療においては、日本は世界でも随一と言える多様な発展を遂げています。また、訪問歯科診療など、日本の医療制度下だからこそ独自の発展を遂げている領域もあります。

研究においても、日本は歯科先進国の一角です。Journal of Dental Researchという、歯科臨床に根ざした学術誌では一番高い(歯科医療誌全体においては第2位)インパクトファクターを有する学術誌において、2006年から2012年の論文掲載数は米国についで日本は第2位です。また、2019 年までのトップ引用 100論文には、第1位は米国の52報、同率第2位が日本とオランダの 8報です。

膨大な研究費が投下されている米国の強さは否定できませんが、日本の歯科医療は誇りに思えるものです。無論、全面的肯定ではなく、インサイダーとして個別不満が出ることは大いに認めるところです。

歯科市場におけるDX

どの市場のどの側面と比較するかにもよりますが、歯科医療市場におけるDXは、進んでいるところでは進んでおり、遅れているところは遅れています。

歯科医院経営について言うのであれば、特に都市部では資本主義的な競争が当たり前になっているため、歯科医院のインフラ面・経営面でのDXは、小規模企業体の中では相当進んでいる方であると思います。無論、経営やDXとは無縁でもそもそもの倒産確率が低いため、そう言う選択肢もあると言うことです。

関連産業は、遅れているように思います。しかしながら、その市場構造・アナログさが長年に渡り市場の安定性を守り、過疎化が進む地域においても歯科医療の提供を維持させることにつながっています。

歯科医療が求められる領域が拡大する中で、求められているのは、劇的な変化ではなく業界の保全と進化を同時に実現させていくことです。大切なのは、既存の業界構造を『壊す』のではなく、デジタル力で『支援』していくことであり、WHITE CROSSのような企業の存在価値はそこにあります。

世界進出の先に目指す世界

歯科医療の市場規模が拡大する一方で、業界に刺さるレベルのベンチャー企業は少ないように思います。

ベンチャー企業は、
① 資本調達能力
② 自力で営業利益をあげる
のどちらかがないと倒産します。ベンチャー企業は営利企業です。営利企業は営業利益を上げない限り、社会に価値を生むことになりません。

歯科医療業界において②に至るには、
(1) 小さなTAMを狙い、1 product, 1 needで戦う
(2) 大きなTAMを狙い、長いR&D期間に耐えられるだけの①を持つ
のどちらかが求められます。その上で、こと日本においては、歯科医療業界の地形図を理解しておかなければいけません。その意味合いで、(2)を目指す起業家は歯科医療・経営の両方を理解しながら、フルコミットする必要があります。

日本の歯科医療市場は、歯科医療の業態や教育から見て、なかなかそう言う人材が輩出される土壌ではないように思います。それもあり、私自身、歯科大学5校で非常勤講師として講義させていただいている際に、可能性の一つとしてアントレプレナーシップについて触れさせていただいています。また、本年度よりWHITE CROSSは東京医科歯科大学のプログラムの一環として、インターンの学生さんを受け入れさせていただいています。

私は医療界を革新していく上で必要なのは、医療へのより高い視座での分析及びマネジメントの導入と、プロフェッショナル自身による関連ビジネスへの参入と考えています。そして、WHITE CROSSに歯科内外の優秀なビジネスパーソンに集まってもらい、一緒になってビジネスを拡大し、WHITE CROSSを社会の公器へと育てていくことの価値を信じています。

留学時代にUCLAに提出したWHITE CROSSのビジネスモデルの原案

実はWHITE CROSSのビジネスモデルは、その創業以前より、海外展開を意識して作られていました。そして現在までに、フロントエンドだけであれば世界的に見ても類を見ない規模の歯科医療に専門特化したデジタル・プラットフォームを構築してきました。2022年現在は、成長基盤の仕組み化を着々と進めています。

国内市場で確実な価値を生み出し、上場させた後には、より大きな価値の創出を目指して、早期に世界展開をします。

医療制度によらず、歯科治療は基本的に世界共通で同じことを行う医療です。その上で、日本から世界に発信できる領域も数多くあります。同時に、世界から学ぶべきことも多くあります。

WHITE CROSSを全世界を覆う、歯科医療臨床現場を支えるデジタル・プラットフォームとして育て上げ、全世界の歯科医療従事者が相互に学び合える環境を作り、それにつながる産業構造を支援しながら最適化させていく。その過程で、WHITE CROSSのパーパスに含まれる

歯科医療の社会的価値を高める

はいずれ、

歯科医療の人類価値を高める

に進化していきます。

エムスリー社は、20年で日本の医師の9割、世界の医師の5割が利用するプラット・フォーマーに成長しています。「WHITE CROSSにもきっとできる」と信じるところから、全てが始まります。

歯科医療は、「人々の生きる力を支える医療」です。

世界中の人々が、歯科医療の恩恵を最大限に受けられ、健康・長寿を楽しめる世界が実現するって、すごく素敵だと思いませんか?

WHITE CROSSにご興味をお持ちの方へ

WHITE CROSSは、京セラ、トヨタ、リクルート、ファーストリテイリングのような永続性のある偉大な企業を目指しています。そして現在、ベンチャーステージの真っ只中にある小さな苗木です。

今回のNoteで記載した歯科医療の人類価値を高めるための旅も、まだスタートしたばかりです。未来視点に立って大樹を育てていこうとするWHITE CROSSのあり方に共感してくださる方からのご応募を、心よりお待ちしております。カジュアル面談も大歓迎です。気になられた方は、ぜひ採用ページを覗いてみてください。

WHITE CROSS 執行役員・管理部 部長 永畑のnoteはこちら

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赤司征大|WHITE CROSS株式会社
代表取締役・CEO/共同創業者/歯科医師/MBA