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【感想】NHK夜ドラ『わたしの一番最悪なともだち』第1週

テレビドラマ好きなら知らぬ人はいない稀代の脚本家、坂元裕二。
今年は是枝裕和とタッグを組んだ映画『怪物』でカンヌ脚本賞を獲得。

しかし直後にNetflixとの5年契約が発表され、地上波で新作を観られるのは当分先に。

最近では「坂元裕二作品っぽい台詞・会話」なんてのがネタになるぐらいだし、それこそ生成AIが「坂元裕二っぽい脚本」を書ける日もそう遠くないのかもしれない。
(まぁそのAI脚本の作品を観たいかどうかは別の話だが)

とはいえ坂元裕二の過去作の脚本を全部学習データとして食わせたとしても大規模言語モデルの想定するデータ量にはまだまだ足りないような気もするけど、その辺りは実際どうなんだろうな?

そんな「地上波テレビではしばらく坂元裕二の作品は観られない」問題に対して、例えば『silent』を手がけた生方美久のような影響を受けた次世代の脚本家というのは一つの解だろう。

生方は特に坂元裕二を尊敬していることを公言している。坂元脚本の『Woman』(日本テレビ系)と『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)を年に数回は観ていると言い、「めちゃくちゃ観ているから、意識はしていないですが、影響を受けている部分はあるかもしれませんね」と語っている(『週刊文春』2022年11月3日号)。

https://toyokeizai.net/articles/-/630713?display=b

発表されたばかりの新作『いちばんすきな花』なんて“クアトロ主演”をアピールする辺り『カルテット』『初恋の悪魔』を想起せずにはいられない。

しかし、NHKが採ったのは直系の弟子を起用するという愚直すぎるアプローチ。
真面目だw

坂元裕二ゼミの卒業生にして『初恋の悪魔』はじめいくつかの作品に脚本協力としてクレジットされてきた正真正銘の愛弟子。

  • モノローグを多用する作劇

  • 第2話の温泉まんじゅうに代表される小さいシチュエーションの積み重ね

  • 細かい機微を突いてくる台詞

引っかかった台詞を片っ端から書き起こすのも品が無いので、最も印象に残ったものを1つだけ。

彼女はアイスコーヒー2杯からバニララテとワッフルになった。
それは彼女が社会人になったってことなんだ。

第2話

この手前の回想シーンで「2杯目は1杯目のレシートを見せれば半額」というサービスの説明があるのもニクい。
(ちなみに私は社会人になって10年以上が経つ今でもスタバに行くとワンモアコーヒー狙いのドリップ一択です。恥ずかしい)

主演は是枝作品の印象が強い蒔田彩珠(といいつつ坂元裕二ドラマへの出演歴はありますが)と『ベイビーわるきゅーれ』でお馴染み髙石あかり。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』の主演・河合優実に続き素晴らしい抜擢。

演出面では階段や坂を使った上下の構図が印象的だった。
笠松ほたる(蒔田彩珠)が鍵谷美晴(髙石あかり)を見上げている=実は内心では憧れている心情表現。
美晴をイメージした「なりたい自分」をエントリーシートに書いて就職活動に応募してしまうというストーリーにも直結している。
あと、第1週は完全にダウナーな心理状態のほたるが階段を下りる、もしくは逆に坂を登るシーンが多いのも面白い。

あと第2話の就活相談のシーンで俯瞰ショットからの2人の周囲を回りながら撮るカメラワークや、第3話での木をドーンと手前に置いた構図など奥行きのある画面設計も良かった。

音楽は舞台が神戸という繋がりで(?)tofubeats

どうしてもトラックメイカーの印象が強いが、実は(?)濱口竜介監督の作品にも参加しているわけで文句なしの起用。
電子音ベースでちょっと脱力感もある劇伴が心地よい。

主題歌?タイトルバック?のMVみたいな仕上がりの映像も良かった。

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