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【感想】劇場映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

2010年代のアクション映画史を前に進めた金字塔『ジョン・ウィック』シリーズ。
ガン・フー(銃撃×カンフー)に代表される斬新なアクションで観客の度肝を抜き、ジョン・ウィック以前以後で歴史を分断してしまうほどの衝撃をもたらした。

1作目公開当時の2014年というと日本でも実写版『るろうに剣心』の第2・3作連続公開で谷垣健治がアクション映画の歴史を前に進めていたわけで、日米のシンクロニシティが興味深い。

もちろんこれらの作品の先駆者としてゼロ年代に革命を起こした『ボーン』シリーズも忘れてはいけない。

個人的かつ大雑把な印象だが、ボーン影響下のゼロ年代は「編集で細かくカットを割る」アクションが主流だったところに「一連のシークエンスとして原則ワンカットで見せる」としたのが『ジョン・ウィック』だと思う。
ワンカットだから誤魔化しが効かない領域にアクション映画を持って行った。

そんな『ジョン・ウィック』シリーズの監督はチャド・スタエルスキ。
元スタントマンという肩書きで語られることが多いが、さらにその前職はプロ格闘家。

かつてプロ修斗で後楽園ホールのリングで戦っているチャド監督は、USA修斗の代表として、エリック・パーソンとともに、日米対抗戦を戦っている。

https://gonkaku.jp/articles/14845

格闘技・プロレス好きなら知らぬ人はいないあの佐山聡に見出された正真正銘の“本物”
映画監督の来日インタビューに『GONG格闘技』が出てくる異例の事態w

シューティング(現・修斗)は当時のプロレスとは異なる新格闘技を目指して佐山聡がルール策定から行なった競技。
魅せることに重点を置いたプロレスよりも、より競技・スポーツに近い理念を掲げていた。

この辺りはAmazonプライムで配信されている『有田と週刊プロレスと』シーズン3エピソード12も詳しいです。

そういう意味で「既存のアクション映画の枠を超越した、リアルで実戦的なアクション」をチャド・スタエルスキが撮っているというのは佐山聡とプロレス・修斗の関係性を思うと感慨深い。

ちなみにチャド・スタエルスキと谷垣健治は普通に交流あるらしい。

川本は、シリーズを生んだチャド・スタエルスキ監督が旧知の仲である『るろうに剣心』シリーズのアクション監督・谷垣健治に「刀や空手などのファイトを作れる人を知っていたら紹介してほしい」と相談し、谷垣が川本を紹介したことで本作に参加。

https://www.cinematoday.jp/news/N0139136

今作でもアクションは健在。

  • ヌンチャク

  • 総合格闘技、柔術

  • 車(≠カーチェイス)

凄すぎてもはや笑ってしまうほど異次元。
パリの凱旋門で車が往来してる中でのストリートファイトとか終盤の階段を駆け上がりながら道中の敵を倒していくシークエンスとか完全にネジが飛んでいるw
劇中の“伝説”を彩ってきた鉛筆というモチーフや、何より犬の扱い方はサービス満点。
これからは隣の家の犬がうるさくても飼い主には丁寧な態度で接し、場合によっては我慢しなくてはいけない。
殺されるよりはマシだ。
犬を殺すとか殴るとかは以ての外。

ただ、これまでもアクション監督が本編監督に挑戦した事例はあるが、必ずしも全てが上手くいったとは言いがたいのが正直なところ。
特撮怪獣映画ファンなら誰もが一度は「樋口真嗣は特技監督に専念していれば…」と言ったことがあるに違いない。

Netflix映画の『タイラー・レイク』なんかは結構良かったけど。

MCU作品でルッソ兄弟のアクション演出を支えてきたサム・ハーグレイヴが監督に抜擢。

それはやっぱり映画はアクション「だけ」で乗り切るのは難しいから。
その点チャド・スタエルスキはアクション以外の部分でも演出手腕を発揮している。
個人的に最高だったのは大阪とベルリンのシーンの色彩設計。
ネオンが妖しく輝くあの映像はエドガー・ライトの『ラストナイト・イン・ソーホー』のような美しい悪夢の世界。
あの色彩の上で殺人アクションが繰り広げられる画面に惚れ惚れ。

まぁ裏を返せば大阪はいくらなんでもあんなにネオンが輝く街ではないので、いわゆるトンチキ日本描写ではあるw
でも個人的には画面の美しさに軍配かなぁ。

色彩の話は前作公開時にTBSラジオ『アフター6ジャンクション』でRHYMESTER宇多丸が行なったインタビューでより詳しく言及されています。

※23分30秒頃から。

また、俯瞰で銃撃戦を見せるカメラワークも面白かった。
本シリーズは寄りの構図で誤魔化さずに引きのショットで俳優の全身を映しながら「本当に凄い動きをやっているんだ」を見せてきたわけだが、あれは新しい見せ方。
ゲームの影響、例えば初代バイオハザードなんかを彷彿とさせられたり。
そこに視点が移行する過程もワンカットでシームレスなのが良いんですよね。

音楽の使い方も大好きw
ジョン・ウィックの首への賞金額と居場所がラジオで連絡され、リクエスト曲という設定でノリノリの音楽が流れるw
一見バカっぽいけど突き抜けてるからテンション上がる。

もちろんその演出を可能にしているのが本シリーズの世界観。
殺し屋を業界モノとして描き、登場人物に愛着を抱かせたのが画期的。
「コンチネンタルホテル内での“仕事”は禁止」といったルールやあの機材がめちゃくちゃ古い通信システムがたまらないw

なぜか世界でもかなり遅い部類の日本公開に合わせるかのようにAmazonプライムで前日譚を描いたスピンオフドラマが始まるくらいあの世界が愛されている。

裏社会に生きるキャラクターへの愛着という意味では、これまたファイナルシーズンの日本上陸が遅れたせいで結果的にタイミングが被ったHBOドラマ『バリー』も記憶に新しい。

どちらも「殺し屋稼業から引退したい」と思っている主人公。
アクション映画とコメディドラマで語り口は全然違うが、それでも辿り着く結末が似たような着地になるのは人間の業なのか。
足を洗うというのは本当に大変だ。
「目的達成のため・生きのびるためなら殺人も厭わない」という強固な精神力がジョン・ウィックなら「本当はもう誰も殺したくない。でも殺さなければ平穏な日々が手に入らない」という悲運の受け身精神がバリー・バークマンだったのかもしれない。

もちろん日本の作品も忘れてはならず、ジョン・ウィックの殺し屋業界的世界観を邦画の予算規模に合わせてオフビートなコメディに落とし込んだのが『ベイビーわるきゅーれ』

1作目はちょうどこのタイミングでAmazonプライム見放題やNetflixに降臨。

コメディと侮ることなかれアクションのクオリティは一級品。
何せダブル主演の1人である伊澤彩織は『ジョン・ウィック:コンセクエンス』にリナ・サワヤマのスタントダブルとして参加している。

そんな川本が「最も信頼するパフォーマーの1人」として参加を呼びかけた伊澤は、主演映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズを筆頭に、俳優としても活躍。『コンセクエンス』では、日本人の女性キャラクター・アキラの登場に伴い、配役候補としてカメラテストも受けていたという。川本は「伊澤さんの出演について僕は本気でしたが、それは実現せず、その後でリナ・サワヤマさんがアキラを演じることになり、伊澤さんと和田崎愛さんがアキラのスタントダブルをすることになりました」と明かす。

https://www.cinematoday.jp/news/N0139136

鑑賞前から知っていたのでエンドロールめちゃくちゃ凝視しましたw
伊澤バージョンのアキラも見てみたかったなー

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