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【感想】Netflix映画『グレイマン』

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』で広く世に知られ、MCUフェーズ3を支えた末に『アベンジャーズ/エンドゲーム』の大ヒットで歴史に名を刻んだルッソ兄弟。

その次の作品はApple TV+映画『チェリー』
ちなみに主演はトム・ホランド a.k.a.ピーター・パーカーもしくはスパイダーマン。

かなり暗いストーリーだったが映像面はさすが一級品だった。
ちなみにその2作品の間に公開された『タイラー・レイク』はあくまで製作・脚本で監督は務めていない。

監督としての次作がNetflixになると発表されたのは約2年前。

製作費はNetflix史上最高額の2億ドル以上。
さすが破格の待遇である。
主演は今や超の付くスター俳優であるライアン・ゴズリング。
悪役は長年キャプテン・アメリカを演じ、ルッソ兄弟とは盟友と言っていいであろうクリス・エヴァンス。
ヒロイン(?)というか3番手は『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のパロマ役も記憶に新しいアナ・デ・アルマス。

ライアン・ゴズリングとの共演といえば『ブレードランナー2049』

そういえばクリス・エヴァンスとは『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』で共演済み。

てかダニエル・クレイグともここで共演済みだったのか。
すっかり忘れてたw
製作費が破格なだけにキャストも超豪華。

感想ツイートにも書いた通り(ただし「王道の」よりは「古き良き」スパイ映画と書くべきだったかも)ストーリーはベタ。
原作小説がタイトル通り「見えない存在」として主人公を描いているのに対して(本来のスパイとはそういうものである)本作の路線はルッソ兄弟らしくアクション大作。
めちゃくちゃ目立っているw
まぁ『007』や『ミッション:インポッシブル』の魂を受け継ぐ作品と考えれば。

そんなわけで本作はアクションてんこ盛り。
凡百の映画なら「何となく凄いけど正直何が何だかよく分からない」という状態に陥る。
ただ、本作はそうなっていない。
前述のMCU作品においてもルッソ兄弟が手がけた作品はアクションが見やすかった。

なぜルッソ兄弟のアクションは見やすいのか?

僕は

  • 位置関係を整理する描写

  • ショットとしての美しさ

  • 格闘アクションの細部に潜むこだわり

にあると思う。

本作最初の見せ場はバンコクでのミッション。
ご丁寧に建物をなめるカメラワークで主人公と標的と縦の位置関係が示される。
本質的には説明シーンのはずがカッコいいショットになってるのがニクい。
そこから立て続けに花火が打ち上がる狂乱の中での銃撃戦。
暗闇を花火が照らす妖しい画の美しさも去ることながら、主人公と敵を常に同じ画角に収めるカメラワーク。
何がどうなってるのか観客が混乱してしまう可能性は最小限に抑えられている。

続くチェンマイ発の飛行機内アクションはさすがに何が何やらだったが(というかこのシーンはそういう効果を狙っている)舞台をウィーンに移して短めのアクション。
ここも一対多の状況で現在戦っている相手とその次に控えている相手を同じ画面内に収めながら廊下脱出劇を見せていく。

そして中盤の見せ場となるプラハでの逃走劇。
暗殺チーム×4に加えて地元警察やSWATも入り乱れる大混戦をCIA作戦司令本部のモニターと連絡の台詞を通してこれまた位置関係を説明。

SWAT車両が橋から接近中
側面にSWAT
重機関銃に注意

広場の引きの画をサブリミナル的に挟んで観客の脳内に植え付けておく仕込みも上手い。
また、これだけだと単に市街地で大乱闘が起きてるだけだが、主人公サイドには敵が到着する前に手錠を外すべく拳銃と銃弾をどうやって調達するか?というサスペンス要素を持たせることで映画の持続力をキープ。

そして路面電車内での戦いへ。
広場という開かれた場所から車両内という狭くて空間的制約のある場所に移行。
言うなれば『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のエレベーター内での戦いの系譜にあるアクション。
プラハ逃走劇の中でテイストの異なるアクションを2種類見せてくれる。
さらに電車の外ではカーチェイスという二重構造。
もうお腹いっぱいw

ここでも路面電車を中心に据えながらそれを追う車を同じ画角に収める見事な画面設計。
感嘆せずにはいられないのが道路に面した店のガラスに映った電車を見て相手の位置を特定するというシーン。
位置関係を整理しながらアクションとしての新鮮さもある。
あんなんよく思い付くなw

この後病院に逃げてからはクライマックスに向けて接近戦での格闘技が中心に。
いや、でも病院の地上と2階を使った空間の見せ方も…書き切れないw

最終決戦は無骨な殴り合い。
朝日の逆光が美しい。
途中でナイフを右手から左手に投げて持ち替える動きは確か『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でバッキーもやってたような?
これだけアクションを積み重ねてきて最後の技がチョークスリーパーという渋さ!
中盤のカーチェイスのような大掛かりなアクションだけでなく一対一の格闘シーンも撮れるのだからルッソ兄弟は強い。

前後半で同じ台詞を違う人に言わせたり同じ人が言う場合は意味合いを変えたりと脚本にも語りどころはあるのですが今回はこの辺で。

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