[第8節_富山vs渋谷] -富山の苦手なチームは○○が多いチーム-[20/11/11]
得点 97-106
FG% 互いに50%越え
ファール 渋谷31、富山27(テクニカル3)
FTアテンプト お互いに35本
FGアテンプト お互いに64本
ターンオーバー 富山18、渋谷17
この日はかなり珍しいスタッツとなった。
今日はこちらの試合を解説していく。
目次
試合レビュー
1Q_渋谷のDFにより渋谷ペースで試合が進むが点数は互角
2Q_岡田選手が渋谷と相性が良い理由
3Q_絵に書いたような堅実で嫌なチームに富山根負け
4Q_しかし富山も我慢強さで喰らいつく
渋谷に負けた。4強には通用するか?
審判のジャッジとファール数について
富山の苦手なチームは○○が多いチーム
試合レビュー
1Q-渋谷のDFにより渋谷ペースで試合が進むが点数は互角
渋谷のDFに阻まれ、富山はまともにエントリーさせて貰えない。
渋谷のようにタイトにDFにつくことができればパスに手をかざすことができ、相手の選択肢を減らすことが出来るのである。
しかし、プレッシャーを掛けるということは相手との距離を詰めるということ。
つまり、抜かれるリスクが高くなる。
距離を詰めればパスに強いがドライブに弱い
距離を空ければドライブに強いがパスは出される
ということだ。
富山は(特に宇都は)早々にこれに切り替えてガンガン1人で抜いてシュートを決めていく。
渋谷の鉄壁DFを打開していく宇都選手。
(PG経験者から言わせてもらうとこれは化け物)
しかし、この点の取り方には3つのデメリットがある。
1つはガードに負担が偏るということ。
こうなると強制的に運びからプレッシャーを受けているガードから仕掛けることになり、抜いて行った先のペイント内の状況によってはそのまま1人でシュートに行くことになる。
(これは決まる決まらないに関わらず、消耗する)
2つ目はセットプレーやポストアップが使えないということ。
ガードのボール運びからそのままシュートまで行くケースが頻発する為、その間セットプレーは使えず、インサイド陣は役不足となるのである。
(特にスミスがOFでこうなるとDFの戻りの遅さの短所のみが露出する形になってしまう)
3つ目はボールの占有時間が減るということ。
当然そうなるとオフェンスは10秒程度で終わってしまう。つまり、自分達でゲームテンポをコントロールできないのである。
これらのことから1Qは24-26と2点差だったものの、富山の方が心身ともに消耗が大きく、波に乗れない内容だったと言える。(その渋谷の成果が3Qに出ることになる)
2Q-岡田選手が渋谷と相性が良い理由-
渋谷のDFにフラストレーションが溜まり、ペースを乱される富山の面々。
しかし、1人だけこのDFに適応する救世主がいた。
岡田侑大。
今シーズン。普段は他のメンバー達が元気な中、1人だけ波に乗れない場面の多かった彼。
しかし、この日は逆に彼だけが活き活きとプレーをしていた。
その理由を説明していく。
富山のスコアリーダーはマブンガ、ソロモン、宇都、スミスであることが多い。
彼らのスコアはその圧倒的なスピードやフィジカル、高さでシュートに持ち込み、時には相手にファールをつけることで生み出される。
これに対し、岡田選手のスコアリングは決定的に異なる点がある。
彼のシュートはそういった身体能力的アドバンテージを絡めたものではなく、独特のリズムや緩急から相手のタイミングを外してズレを生み出す。
これは言い換えると、前者はファールをしようと思えばできてしまうが、後者はファールができない、ということである。
反応はされた上で構わずねじ伏せる宇都選手達と、
反応をさせずにかわして決める岡田選手。
どっちの方が点が取れるかは相手による。
渋谷のようにフィジカルがあり、ファール覚悟でDFをしてくるチームに対しては岡田選手のタイプの方が相性が良いのである。
さらに審判視点でここを見た場合、こういうDFが後手になってズラされた分を取り返そうとした結果に起こる身体接触というのは駆け引き上DFの負けと判断しやすく、ファールを吹きやすいのだ。
(そもそもズラされるとファールも難しくなるわけだが)
しかし宇都選手やスミス選手の場合、岡田選手のように綺麗にDFを外す訳ではないのでグレーゾーンなファールをできる余地が残る。
さらに彼らはハッキングやプッシングをされてもある程度構わずシュートへ行けてしまう為、見る角度によっては押されていたのか、腕が引っ掛かっていたのかを見逃すリスクも発生してくるのである。
1人だけ活き活きする岡田選手。
彼は渋谷に対抗できる富山で数少ないレアカードなのである。
2Qも互角だったのは彼の活躍が大きい。
渋谷のDFをかわす岡田選手。
3Q-絵に書いたような堅実で嫌なチームに富山根負け
渋谷は本当に嫌なチームだ。(良い意味で)
DFは必ず間合いを詰めてくる。スイッチの通りすがりにもついでのようにコンタクトをしていく徹底ぶりだ。
リバウンドやルーズボールにしつこく絡み、5人全員がセカンドチャンスに備え、シュートに繋げる。
DFに急いで5人が戻り、守った後も5人全員がリングへ走っていく。ガムシャラなように見えてしっかりフリーの選手へパスを回し、スリーはしっかりと沈める。
(もはやアメフト&ダッシュ+時々バスケ みたいな印象)
富山推しの観戦者まで観ていてしんどい固いバスケに富山はついに根負け。ハーフラインから3Pラインの間の高い位置でのターンオーバーが増え始める。
4Q-しかし富山も我慢強さで喰らいつく-
今度は富山がジリジリと20点差を詰める。
特に渋谷は4人のファールトラブルからかスミス選手のポストアップへのダブルチームをやめるようになり(20点リードしているのでスリーとバスカンを潰すことにフォーカスした可能性も考えられるが)スミス選手の無双を中心に富山はこのクオーター30得点する。
最終的には3ポゼッション差まで追い上げた。
渋谷に負けたが4強には通用するか?
今回渋谷との初試合が平日だったのは良かった。
これが2連戦の初日では修正するにも体力的にかなりキツい。
次回はこの体験を持って渋谷との試合に挑めることはポジティブであり、この強度に慣れてくことは東地区からCSへ進出するには必要なことだ。
12月の強豪との連戦では富山は苦戦すると私は見ている。渋谷然り、他チームには数シーズン積み上げてきたシステムがある。
富山はGMのナイス補強と浜口マジックによって一気に4強と肩を並べる存在になったが、システムの完成度やムラ、これから進んでいくであろう富山のスカウティング等を考えると現段階では1歩及ばないのでは、と考える。
が、東京と千葉も最近は盤石とは言えない試合があり、川崎は富山との相性問題もあるのでやはりわからないというのが正直なところ。(なお宇都宮さん)
しかし逆を言えばこの段階でこの強さである伸びしろのあるチーム。
シーズン終盤にはこの差が埋まっている可能性は十分にある。
審判のジャッジとファール数について
この日の笛は競技規則に沿ったかなり厳格な基準で吹かれていたと思う。
特に序盤のファールコールはかなりシビアだと感じた。
その理由がこれを見るとわかる。
ファール数
渋谷:一試合平均22.5回(リーグ2位)
ファールをもらった回数
富山:一試合平均23.0回(リーグ1位)
おそらく審判員の方々はこれを踏まえ、アンスポや怪我人を減らすべく、初めからファールの線引を厳しめに示そうと打ち合わせていたのだろう。
「今のファールか?」と思ったものも巻き戻してゆっくり見てみると確かにシリンダーを越えていたりと競技規則に則った納得するジャッジが多かった。
例えばこちら。ハンズアップでナイスDFにように見えるが、よく見ると実は左膝を突き出して相手のプレーを妨げている。
...とはいえ誤審も少なくなかった。(特に後半)
というものこの試合はボール付近だけでなく、オフボールでも身体接触が頻発するためファールが起こりうる事象が非常に多い。審判の技量がかなり求められる試合だった。
打ち合わせていたであろうファールのラインを保つことはやはり困難だったのか、厳格にファールが鳴る場面とノーコールで流れてしまう場面とのギャップが大きく、両チームとも最後までアジャストに苦しんでいた。(結果この試合のファールは58回に)
審判員の実直な取り組みは見えたが、選手レベルが急速に向上しているこのリーグを吹くのはやはり大変そうだ。
元NBA選手は来ているが、元FIBAレフェリーのような海外で活躍する審判をBリーグは呼ばないのだろうか?(元NBA選手以上にそれは難しいのだろうか?)
Bリーグの審判事情はかなり心配なところだ。
しかし、この対戦カードで退場者(アンスポ2回とかで会場から出ていくレベルの)や両者の衝突による怪我人が出なかったのは、実は審判の努力の功績なのかもしれない。(山内選手が捻挫していたが、味方のライアン選手の足を踏んでしまった事で起こったことなのでこれは審判が防げる事象ではない)
富山の苦手なチームは○○が多いチーム
2Qの「岡田選手が渋谷と相性が良い理由」でも取り上げたが、富山のスコアラーには「反応された上でねじ伏せる系オフェンダー」が多い。
しかし、こういうプレーは渋谷のようにハードにDFにくる選手達の力を引き出してしまうのである。張り合って頑張れる、そして頑張った分だけ成果が出るのでDFはどんどんやり甲斐を感じて気持ちが上がっていく。
しかし、岡田選手のように「反応させずにかわす系オフェンダー」ならばDFにハードに頑張るきっかけを与えずにスコアできる。
フィジカルなディフェンダーを無効化できるのである。
そして富山は3敗目を喫したが、その数少ない黒星がどの相手だったか覚えているだろうか?
さきほど渋谷はリーグで2番目にファールが多いチームということをお伝えした。では1位は?
なんとレバンガ北海道なのだ。(一試合平均23.2回)
富山が今季初黒星を喫したのは北海道である。
つまり、富山の「反応された上でねじ伏せる系オフェンダー」が多いという特徴と3つの黒星のうち、2つはファール数が多いトップ2チームという統計をふまえると、
富山はファール覚悟でハードにDFしてくるチームに弱い
という式が成り立つと言える。
ブースターの方の為に記事の最後にこのファールランキングを載せておく。
その中でハードにDFをするチームが富山にとって要注意なチームと考えて間違い無いだろう。(ただし、外国籍不在でファールがかさんだ等の事情があるチームはここから除外して構わない)
ちなみに今週対戦する川崎はトップ10に入らないのでそこは安心(?)してほしい。
ファールが多いのは悪いことか?
日本が全敗で終わったFIBAワールドカップのファール数の統計で興味深いデータがある。
なんと日本はダントツにファール数が少なかったのだ。(一試合平均14.0回)
また、NBAのDリーグでプレーした馬場雄大選手は山本柊介選手(三遠)のインタビューでこう答えている。
我々はどこかファールをしないように守っている。でも向こう(アメリカ)の選手は相手を一回で倒せるなら、殺せるなら、どぎついファールにもいく。ファールを惜しまないんです。
この動画の19分のあたり。
ー ナイスDFはノーファールではなく、相手の攻め気を削ぐことである ー
バスケ先進国からそういう理論がある以上、ファールが多いことが一概に悪いとは言えない。今後日本のリーグも渋谷のようなDFをスタンダードに慣れていく必要があるのかもしれない。
=====ファール数ランキング(1試合平均)=====
1位 北海道 23.2
2位 渋谷 22.5
3位 三遠 22.1
4位 琉球 21.1
5位 秋田 20.7
6位 滋賀 20.3
7位 横浜 20.1
8位 島根 20.1
9位 宇都宮 19.4
10位 広島 18.5
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ここまで読んでいただきありがとうございました。
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