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[第15節_富山vs広島] ‐浜口HCが不調のエースにしたこと-[20/12/26-27]

第15節。
富山vs広島は富山グラウジーズが84-76、85-70で勝利し、年末の試合を2連勝で締めくくった。
しかし、この2日間はスコアほど楽な試合ではなく、広島の連敗ストップの試合になっていた可能性のある試合だった。

特に1戦目ではグラウジーズのエースである宇都選手の不調が際立った。
1戦目の彼のスタッツは下記の通り。

6pt FG2/6 FT2/2 1R 1A 3TO 1F 1FD EFF2

これは打ち間違いではない。彼のEFFは2に留まったのだ。
そして2戦目、彼はスタートから外れることとなる。

一体彼に何が起こったのか?

今回の記事では宇都選手の不調。
そして、浜口HCとの2人3脚の様子について解説したい。


いつも通りだった1Qの宇都選手

6pt FG2/2 FT2/2 1A 0TO 1F 1FD EFF7

これが1Qの彼のスタッツだ。
全くもって問題ない。どころか、マブンガとスミス中心の組み立てということを考えると完璧な数字だ。

最初のオフェンスでは早いトランジションを仕掛け、エチェニケ選手とのミスマッチになり、そのチャンスを逃さず当然のようにドライブで切り裂き加点し、この試合最初の得点を挙げた。

このプレーで、多くをベンチで過ごした前節千葉戦の悪いイメージは引きずっていないように見えた。

3Qに"それ"はやってくる

3Qの序盤、富山は44-33とリードしていたがそこからの4分32秒間で47-43と追い上げられた。その時間帯の内容はこうだ。

富山 宇都レイアップミス
広島 宇都、マーフィーを見逃し -2点
富山 マブンガ、被ブロック
広島 シュートミス
富山 前田、シュートミス
広島 シュートミス
富山 水戸、シュートミス
広島 宇都、朝山を見逃し -2点
富山 マブンガ、タフショット +3点
広島 宇都、スクリーンで朝山を逃し -2点
富山 ★水戸、シュートミス
広島 宇都、朝山へチェック→外れるもOR -2点
富山 タイムアウト

Qの最初のオフェンスでは、これまでであれば文句なく自分でレイアップに行っていたであろう速攻の場面。
彼は迷った不本意な形でのシュートを打って外してしまう。

以降も多くが宇都選手による失点であることがわかる。
オフボールのDFの時、彼はボールマンへのヘルプの意識が強すぎて自分のマークから目を離してしまう場面が多々あり、そこをマーフィー選手や朝山選手に突かれてイージーな2点を許してしまった。
これにより、3Q出だしの流れは広島へ。

★のプレーでは宇都選手のタイミングの良いスクリーンで前田→水戸へと良い流れでオープンスリーを作ったが、この時にはすっかり広島に流れが行っているため惜しくも決まらない。
逆に最後のプレーでは宇都選手が朝山選手へきちんとチェックをしてシュートを落とさせたにも関わらず、オフェンスリバウンドに繋がってしまい失点が止まらない。

流れが相手にある時はこういうものである。
が、今の宇都選手には堪える事象だ。

浜口HCはタイムアウトを取り、このメンバーにさらに1分半ほど時間を与えたが、それでも流れは変わらない。

やむなくスミス以外の4人を交代させることになる。
(さらにこの6分間、広島はターンオーバー0。全て良い形のシュートでオフェンスを終えており、むしろ逆転したかったくらいの内容だった。)

富山の窮地を救ったセカンドユニット

3Q残り4分で行った選手交代はこうだ。

宇都 水戸 前田 マブンガ → 岡田 松脇 城宝 ソロモン
スコア 49-43

最初こそ悪い流れを引きずりさらに2点詰められるが、まさしくこの4人が流れを変える。

まず、城宝選手と松脇選手だ。
彼ら2人で朝山選手とマーフィー選手のプレーをフェイスガードし、自由にプレーをさせない。

2人のDFによってこの4分間、広島の両ウイングのスコアはマーフィーのタフショット一本のみに留まる。

すると広島の攻撃はセントフォートかエチェニケの1on1になり、対峙した状態から始まる純粋な1on1はスミスとソロモンがしっかり守る。

そしてOF面の立て直しをしたのが岡田選手だ。
なんと富山は3Qここまでのおよそ7分半。得点はマブンガのタフショット5点のみ。
しかし岡田選手が速攻でロールからのレイアップを決め、久々に前向きなシュートによる得点が生まれた。

その流れに続くように、ソロモン選手が華麗なポストムーブを決め、ドライブからのバスケットカウントで加点する。

さらに1on1野郎のスイッチが入った岡田選手の前向きなドライブに引っ張られるように、スミスがオフェンスリバウンドを押し込む。

こうして富山は3Q残り2分半の5回のオフェンスを全て成功させ、一挙11得点で60-47と再び広島を突き放す。(1Q換算で44得点の加点ペース)

それまで7分半で5点しか取れなかったのは一体何だったのかというほどオフェンスが復調した。

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4Qに再び悪い流れがやってくる

4Q残り2分45秒。スコアは74-66で8リード。

富山はここで宇都選手を投入し、岡田選手とのツーガード体制でクロージングを試みた。

しかしその狙いとは裏腹に、この2人の間のパス交換で2回連続でミスが生まれる。
動画観戦での視点ではどちらのミスかわからなかったが、一番問題なのはこれによって宇都選手のセルフイメージが少なからずダメージを受けたということだ。

3Qに悪いイメージのままベンチへ下がり、4Qのクロージングの場面で出場直後に2回連続で痛いミス。
"自分が関わるとミスが生まれる気がする" というような思考に襲われても不思議ではない状況だ。

このミスの直後のポゼッション。
朝山選手にボールスナップでボールを失いまたも危うい場面に。
その後にカウンターで抜き去るのはさすがの上手さだが、その後のパスアウトのタイミングが普段の彼より早いことがわかる。

もちろんこの判断は賢明だ。
しかし宇都選手自身のことを考えたとき、重要なのはこの判断がこの状況において正解か否かではなく、強気な宇都選手が普段とは異なる選択をしたことである。

このパスアウトから、少なからず宇都選手のセルフイメージがダメージを受けた心理が伺える。

ただ、非常に危ない場面となったが、マブンガ選手が課題のフリースローを10/10で決めたことでどうにかクロージングをした。
2戦目でも12/15決めており、ここは非常にプラスな点だろう。

怪我以外では記憶にない宇都のベンチスタート

そして迎えた2戦目。
ついに宇都選手はスタートを外れる事となった。

Bリーグの初年度に彼が富山のスタメンに定着して以降、彼がベンチスタートというのは怪我以外では記憶にないことだ。
(ある意味、身体的なものではなく精神的なものであるだけで、これも怪我といえば怪我なのかもしれないが)

衝撃的なことだったが、しかしこれは罰や喝では無いとすぐに分かった。

浜口HCは第1Qの残り6:30に席を立つと宇都選手の横に付き、彼がコートに出るまでの4分間(ゲームクロックではなくリアルの時間)なにかアドバイスを送っていた。
そして宇都選手は試合を見ながら浜口HCの指示を前向きな表情で聞き、うなずいていた。

ここから宇都選手と浜口HCの2人3脚が始まる。

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