見出し画像

[第19節_富山vs東京] ‐結果と課題。両方得られた2日間-【ライト層版】

※こちらの記事はサクッと読みたい方向けのライト層版(120円)です。
詳しい解説、動画付きの記事を読みたい方は完全解説版(190円)をご購読ください。

第19節。アリーナ立飛で行われた富山vs東京の対戦カードはGAME1を97-86で富山が、GAME2を86-90で東京が取り、1勝1敗の痛み分けとなった。

富山はアウェイの会場で、勢いなどではなく、アルバルク東京と対等に接戦を演じていた。
それはリードチェンジの数字にも表れており、去年の対戦では2日間で1回だったのに対し、今節では計17回のリードチェンジが起こった。
(GAME1:11回、GAME2:6回)

ーー4強時代は終わった。

そう証明したといって良いほど均衡した試合内容だった。
いや、むしろ富山の方が東京を圧倒しているようにも見えた。

しかし、だからと言って東京も決して弱くない。
シーズン序盤の負債によって東7位と燻っているものの、先日宇都宮に大勝して調子を戻してきている東京はやはり強い。
そう思わされる場面も多々あった。

今回の記事では、そんな両者の激しい闘い、そして高度な駆け引きについて詳しく解説していきたい。


【GAME1】

1Q  21-25 
2Q  25-21 
3Q  21-21 
4Q  30-19 
    富山  97-86  東京 

【前半】富山のIP vs 東京のOP

名称未設定-2_アートボード 1

富山と言えば先日の記事(富山製モーレイボール)でも解説した通り、IP(ペイント内シュート)とフリースローが非常に多く、逆にOP(ペリメーターシュート)が非常に少ないチームだ。

富山 3P 22.9 OP 6.0 IP 35.7 FT 23.3
東京 3P 20.8 OP 13.5 IP 30.9 FT 16.4

※数字は第16節時点

対する東京は逆にOPが多く、IPが少ないチームであり両チームのショットチャートは対象的である。

そして、この日もこのデータ通り、両者は出し惜しみなく自軍の得意なゾーンで得点を重ねていた。

・富山の2on2DF vs 東京のP&R

東京は1ポゼッションに数回P&R程度を繰り返し、ズレができたところからパッシングと1on1を繰り返し、オープンショットを作るスタイルだ。

この日も一番最初のオフェンスから東京の象徴である田中とカークのP&R、通称"タナカーク"を選択。
以降も一貫してP&Rを主体に攻撃をし、一試合平均試投数13.5本でリーグ2位の数字を誇るOP(ペリメーター)シュートで攻撃する。

しかし、富山は信州に鍛えられた2on2DFで完全に崩されることはなく、東京のシュートに対して常にコンテスト(チェック)をしていく。

富山のP&RのDFは基本的にガードがドリブラーの背後から追いかける形を取り(チェイス)、スミス・ソロモンが一時的にドリブラーをマーク(ハードショウ)。ガードがドリブラーへ追いついたらスミス選手・ソロモン選手が元のマークへ戻るというものだ。

そしてガードが間に合わないとスミス・ソロモンらが判断すれば彼ら手動でスイッチに切り替え、それにガードは連動していく。
特にフットワークの良くなったスミス選手は東京にとっては想定外だっただろう。

しかし、さすがは東京。
この中でも決してオープンでは無いシュートを沈め続け、出だし最初の6回のオフェンスを全て成功させ、連続13得点を記録。
特に東京のOPの多さの要因であるカーク選手のミドルシュートがとにかく落ちない。
この第1Q、東京は25得点を記録した。

しかし、富山に動揺や焦りは見られなかった。
富山は頑張ったDFが失点になっても何事もなかったようにOFへと移り、プレーのクオリティは全く下がらない。
DFも一貫して同じルールでDFしていく。

ーー自分たちのDFに間違いはない
ーーこれを継続していけばいい
ーーできる範囲でハードにDFをしていけばいい

そう思っているのか。
もうそこには以前のような"強豪に喰らいつく中堅チーム"という構図はなく、"同格の強豪同士の好ゲーム"があった。

そしてこの日。以降のクオーターで東京が25得点することはなかった。


・富山のハイブリッドオフェンス vs 東京のダブルチーム

東京同様に富山も自軍の強みであるスミス選手のポスト中心のオフェンスでいくかと思いきや、彼以外のフレキシブルなオフェンスで得点を重ねていく。
前田選手の高さのミスマッチを突いたポストの1on1、松脇選手のスリーとドライブ、スミス選手のダブルチーム崩しである"時間差ペイントアタック"など、前回の対戦同様に多彩なオフェンスで加点していく。

これにより、富山も最初のオフェンス以外は6回連続でオフェンスを成功させ東京にリードを作らせない。
ここまでは東京が1ゴールリードすれば富山が同点に並ぶという展開。
そして5分32秒に曲者松脇が竹内選手からスティールしレイアップを決めて東京の連続得点の流れを切ると、13-15と富山が逆転する。

さらに第2Q。
スミス選手へダブルチームに行っていた東京だったが、富山の多彩な仕掛けにより、DFにエラーが多発。

特に誤算だったのはソロモン選手だろう。
ソロモン選手はここまでFG5/7(71.4%)、FT5/6(83%)、6リバウンド(OR 2本)、ファールドローン4、0ターンオーバーと絶好調。

さらに岡田選手のP&Rからも失点した。
奇しくもそれはかつて富山が信州にやられたオフェンス。
ドロップをされれば岡田がミドルシュートを決め、スイッチをすればクイックネスのミスマッチを突いた岡田のクッキングで3Pシュートを沈める。

これらのことから、ペイント内へ侵入する前のスミスへ安易にダブルチームを仕掛けるのは富山の多彩なオフェンスをノせてしまうため危険。
東京はそう考え、第2Qの残り7分でタイムアウトを取ると、以降はこのダブルチームを解除した。

この第2Qでは富山が逆に25点を取り、前半のスコアを46-46と富山ペースで終了する。

【後半】ソロモン不在の富山が出した衝撃の数字

名称未設定-2_アートボード 1

第3Q残り3分。
試合が27分経過してもやはり両者は59-59の同点だった。

しかし、ここで富山側にアクシデントが起こる。
この日、絶好調だったソロモン選手が4ファールとなった。

ーーまだ試合は13分も残っている

富山はこの大事な時間帯。
スミス1人のオン1で戦わなければならなくなった。

さらにスミス選手もここまで2分しか休めていない。
(というか休んでる最中にソロモンがファールして休憩が中断になった)

さらにソロモン選手のファールによって東京は獲得したフリースローを2本決め、スコアは59-63の4点差に。

ーーソロモンが戻るまでの間、富山は劣勢を強いられる

誰もがそう思った。
しかし、ソロモンが戻る4Qの残り5分。

大方の予想に反し、スコアは82-77になっていた。
富山はなんと逆転していたのだ。


・多才かつ多彩。躍動する"ハイブリッド富山"

試合というのは不思議なものだ。
試合は様々な要因が重なって成り立っている。
そんな状況下では、一見ひたすらに不利に見えるアクシデントも実は見方を変えれば好機だったりもする。

この試合もそうだった。

この状況。
実はソロモン不在がプラスになる要素があったのだ。

それは、

ここから先は

2,460字 / 2画像

¥ 120

この記事が参加している募集

頂いたサポートは、執筆環境、グラウジーズ観戦費に当てさせていただきます。