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ヨーロッパ旅行記20〜ミラノ観光③騙される〜

ハトとたわむれて平和を謳歌しているところに笑顔の素敵な男性が声をかけてきた。彼はまずハトのエサを僕にくれた。たくさんのハトが僕の手に集まってくる。oh~センキューセンキューとか言いながら僕は自分の手に乗ったハトをドゥオーモを背景にして写真に収めていた。とても素敵な瞬間だった。それが今回の記事に設定されている写真だ。

1人で写真を撮っていたら彼が写真を撮ってあげるよと言ってきた。僕はこのときかなり迷った。スマホを見ず知らずの人に渡すことになるからだ。ここは日本ではない。スマホをそのまま持ち去られたり、スマホを人質に金を要求される可能性もある。時間としては一瞬だったが僕はかなり悩んだ。
結果、写真を撮ってもらうことにした。万が一があれば走って追いかけて取り返してやろうと思っていた。こっちは大きな荷物を背負って連日の移動で疲れていたが、相手は僕より20くらいは年上に見えたのでダッシュ対決になれば勝てると思っていた。一応その程度の警戒はして彼にスマホを渡した。

まずは片手にエサをのせて写真を撮ってもらう。すぐにハトがやってきていいシチュエーションになる。彼が英語でどこから来たんだ、と聞いてくる。日本だと答えたら日本は最高な国だと笑顔で答えてくる。君は現地の人なのと聞いたらそうだと答えてくる。ホテルマン以外との会話は久しぶりだったのでとても楽しかった。1人旅はやはり精神的に疲れる部分が多い。

彼から次はエサを両手にのせるよう指示される。この時も少し躊躇した。両手にエサをのせると両手がふさがれてしまう。両手がふさがれると人間は一気にできることが限られてしまう。躊躇はしたが結局僕は彼に従った。想定していたことはここまででなにも起こらなかったし、彼の笑顔を信じることにした。

ドゥオーモを背景に一通り撮り終えた後、横にあった建物をバックにして写真を撮ってもらった。即興で始まった撮影会が終わり僕はスマホを受け取るため彼に近づいた。

無事スマホは回収したが、彼が発した言葉はmoneyだった。
やられたと思った。こういう人間の存在にはかなり注意していたがやられてしまった。ドイツに1ヶ月いた時も他の国を旅行していた時も、僕に話しかけてくる人はたくさんいた。だけど僕はそのうちの9割以上の人の話は無視していた。なんらかの形でお金をもっていかれるからだ。しかし、この時は久しぶりに人と話せた喜びや街のきれいさのために警戒心が薄れてしまっていた。

あれだけ笑顔が素敵だった彼の顔からは一切笑顔が消えていた。そして、発する言葉もmoneyとbusinessの2つだけだった。
交渉の余地はないかと僕はいくら欲しいんだと聞く。彼は50と答えてきた。単位は言ってこなかったので分からなかったが僕はぼったくりなので50ユーロと言っているのだろうと解釈した。日本円で6000円くらいの額である。
この時、僕の財布には10ユーロも入っていなかった。これまでの記事にも書いているがこれは極貧旅だったのである。

要求されてもそもそも払えないので僕はそんな金ないとつっぱねる。すると彼は同業者であろうがたいのいい黒人を連れてきた。アジア人バックパッカー1人対現地の人間2人の攻防になった。さすがにこれでは穏便に済ませるしかない。スマホどころか僕自体をどこかに連れて行かれる可能性もある。
僕はなけなしの5ユーロ札を渡して逃げるように去った。

僕は、彼が日本は最高の国だと言っていた理由が分かった気がした。将来の日本の観光客のためにも僕は要求を突っぱねるべきだったが僕にはできなかった。
このことは結構ショックだったが、写真はちゃんと撮ってもらっていたのでカメラロールを見ていたらこれに5ユーロなら安いなという結論になった。

観光地を離れた僕は駅の方面へ向かって歩き出した。サッカーチームのショップに寄ってミラノ駅へ戻る計画だった。

21へ続く。

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