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ハウスメーカー設計から町屋の工務店に転職して思うこと

こんにちは。何を思ったか久々の投稿です。noteやってたことすら忘れかけてましたが、少し時間が出来たんで書きました。町屋の工務店というか設計事務所というか、小さな会社に転職して4年が経ちました。数年後に見返した時に同じことを思うのかは分かりませんが、記録の意味でも書き留めようと思います。

こんな人はこの記事興味あるかも?
・ハウスメーカー勤務の建築士の方
・工務店勤務の建築士の方
・設計事務所勤務の建築士の方
・上記どれかに転職を考えている建築士の方
・建築学科在学中で就職先に悩んでいる方
・上記の方々と一緒にお仕事をしている方々

自己紹介にも書いておりますが、私の経歴はざっとこんな感じです。
・大学院卒業
・大手木造ハウスメーカーにて木造住宅の設計
・町屋の工務店で住宅やオフィスのリノベーション物件の設計&現場監理
今日の記事は二つ目との三つ目の違いに関して思うことです。文才があまりないので箇条書きのようにしてます。

先に述べておきますが、今回の記事では具体的な耐震性能や省エネ性能に関する内容は含まれておりません。あくまで主観、転職した事で気がついた事という視点で書かせていただきたいと思います。私自身まだまだ未熟者なので、軽く読み流していただけると幸いです。それでは始めます。

仕事内容の違い

ハウスメーカーと町屋の工務店、同じ設計を行う建築士でも仕事内容は全然違いました。どちらの方が簡単かというと、断然ハウスメーカーの業務です。例外はありますが、ハウスメーカーの設計業務は建築学科を卒業していなくても努力次第で務まる仕事だと思います。(名前を晒してこんなことを書いてしまうと、多方面から非難轟々だと思いますが。。)ただ、勘違いしてほしくないんですが、ハウスメーカーをディスっている訳ではありません!笑 一方で、町屋の工務店兼設計事務所の業務は、こちらも例外はありますが難しい業務が多いと思います。技術的にも、法的知識も、コミュニケーション能力に関しても非常に高いレベルが求められるのではないでしょうか。ただしそれは務める会社にもよるところで、適当にしようと思うとどこまでも適当に出来てしまいます。そんなことを続けてしまうともちろん会社の信用が失われてしまったり、業績が悪くなってしまいますが。大企業だと適当に働いても潰れることは無いと思います。真剣に取り組めば取り組むほど、ハウスメーカーの頃よりも難しい業務をしているなと日々実感しているといった具合です。では具体的にどんなところが違うのか。

まずハウスメーカー設計の説明から。ハウスメーカーの業務区分は非常に良くできており、様々な担当者による分業制が徹底されています。営業、設計、現場の担当がそれぞれおり、最近ではインテリア担当、CADオペレーター(設計補助)がいます。さらに地盤調査の結果を分析する担当や、積算業務のみを担当する技術職まで割り当てられています。メーカーによっては子会社やグループ会社にその業務を委託という形をとっているところもありますが、おおよそ業務だけで区分を分けるとそんな感じです。その中で「設計担当が担う仕事はココからココまで!」と言った具合に明確に決まっているため、覚えてしまえばルーチンワークのように仕事をこなすことができます。業務内容に関しても、徹底した社員研修や業務フロー、チェックリストが充実しているため、どんな人でも迷子になることなく業務を遂行できるのではないでしょうか。そのお陰で、日本中どのエリアで住宅を建ててもほぼ同じ品質を担保できますし、年間に数千棟という数の住宅を効率よく建てることができるわけです。しかも完成するその住宅は、その担当者に深い知識がなくとも、半自動的に高品質の住宅となります。日本中どのエリアで建ててもカタログに記載された品質の住宅が建てられるという事が大手ハウスメーカーの良いところですね。ただし、間取りの良さや本当に建築主の本質的な要望が叶えられているかは別の話です。その点に関してのみ、担当者の力量にかなり左右されると思います。チェック体制が徹底しているとはいえ、一貫して担当する設計者に腕がなければ、使いづらくイマイチな間取りやデザインの家が建ってしまう事になります。街を歩いていても外観を見ただけでそのような家がちらほら見受けられます。(これに関しては住宅の設計に関わる人ならあるあるだと思います。)ハウスメーカーで設計担当を続けるのであれば、怠けていても定年まで良いお給料を貰いながら仕事ができてしまう環境です。しかしそんな環境に甘えるのではなく、そんな中でも知識のアップデートを行い、良い家づくりをする意識を保ち続けることが重要だと思います。

一方、町屋の工務店はどうでしょうか。まずその会社の規模によって働き方や業務区分は様々です。一定の従業員数を抱えており、都道府県をまたいで支店を構えているような工務店では、ある程度ハウスメーカー寄りの働き方かもしれません。しかし、一支店のみで限られた施工エリアを対象に住宅を建てている工務店では、設計者一人当たりの業務範囲は非常に多岐にわたります。私が働く会社は先ほどから"工務店"と明記しておりますが、設計事務所と工務店を兼業している会社です。要するに、設計から現場監理までを一貫して行っているというわけです。建設業法上の言い方をすると、受注者と監理者の2役をになっている状態です。詳しい話は割愛しますが、そのお陰で設計業務から現場監理までを一貫して担当することができ、一人当たりの業務量は多いものの、一物件あたりに関わる人の数がハウスメーカーに比べると非常に少なくなります。設計打ち合わせをする担当者が、現地調査や積算も行いますし、地盤判断やインテリア提案まで行います。そして着工から引渡しまでの監理業務も合わせて行います。もちろんそれだけの業務量をこなすためには、担当できる棟数も限られてしまいます。ハウスメーカー設計者の年間担当件数が20棟だとすると、今勤めている会社では6〜8案件程度です。それだけ1案件あたりの業務量が多いとも考えれらますし、案件ごとにしっかりと時間を取ることが出来るとも考えられます。ちなみに私はどちらも働いてみて、後者の方が性に合っているなと感じました。担当者の引き継ぎがないため、コミュニケーション不足による伝達ミスや言い忘れなどが無くなりますし、お客さんとの信頼関係も構築しやすいと感じています。しかし、完成する住宅に品質に関してはどうでしょうか。これに関しても自由度が高く、案件によってその差は様々となってしまいます。ハウスメーカーのように決まった標準仕様がない為、コストをかけて高品質の住宅を建てることもできますし、他の部分にコストを当てて、品質はハウスメーカーに劣る住宅を建てることもあります。こちらはその担当者の努力も必要ですが、その工務店がどのような理念で建設業を行なっているかという点が非常に重要です。最近では省エネ住宅が話題になっていますが、以前はハウスメーカーの品質に敵う工務店は非常に少なく、高性能を求めてハウスメーカーで家を建てる方が多かったようです。しかし、最近ではその考えが一部逆転しているようです。住宅の性能基準が見直され、一部の"意識高い系"工務店が高性能化に真剣に取り組んでいます。小さな会社ほど、新制度や新技術に素早く対応が出来ることもあり、ハウスメーカーの住宅よりも高性能の住宅を建てられる工務店が非常に多くなってきました。もちろんハウスメーカーの住宅が高品質であることは変わりありませんが、専門知識を持ってしっかりと比較してみると、案外大手のメーカーでも時代に取り残されたような性能表を片方に営業している会社がちらほら見受けられます。そんな"意識高い系"工務店で設計をするのであれば、ハウスメーカーで設計をするよりも、もっと敏感に住宅業界全体の知識や時代の流れを把握しておくことが必要です。ただ、勘違いしてはいけないのは、工務店はどの会社でも"意識高い系"というわけではありません。新たな技術や知識をアップデートせずに、住宅を建て続けている"意識低い系"工務店も多数存在するのが事実です。もし住宅購入を検討したとして、何も調べずに住宅会社を選ぶのであればハウスメーカーを選択しておけばある程度間違いない家が建ちます。しかしたっぷりと時間をかけて調べていくと、もっと良い家づくりができる"意識高い系"工務店は存在しているというのが実態です。

飲食店に例えて・・・

よく建築業界を外食産業に例えることがあります。世の中には様々な飲食店があり、皆さんも外食の際はお店選びをすることがあると思います。住宅会社が飲食店だとすると、設計者はシェフに当たります。もちろん家を造ることと料理を作ることが全く異なるのは承知の上で、あくまで例えとして考えてみましょう。

まずハウスメーカーは全国展開しているファミリーレストランです。どのメニューを選んでもそれなりに美味しいご飯が出てきますし、全国どこの店舗で注文しても同じ品質のご飯が食べられます。ハウスメーカーの中に価格の違いがあるように、ファミリーレストランにも様々な価格帯のお店があり、それぞれ拘っているポイントが異なります。安さを売りにしているレストランでは、もちろん安い材料を使っていますし、一定の品質を担保しているお店では、それなりの値段がしてしまいます。しかしどちらの場合であっても、調理方法や食材がきっちりと決められたルールの元管理されているため、どこで食べても品質が高く安心して食べられます。一方で町屋の工務店とは個人経営のご飯屋さんです。品質も味も悪く価格も安い個人店もあると思いますし、しっかりと食材を選び一流のシェフが開店した高級店もあります。小規模だからこそ細かな要望が反映できますし、融通が効きます。しかし店選びを間違えると、食材の管理方法が劣悪だったりと問題がある場合も考えられます。

シェフの気持ちという視点で考えると、私は町屋の工務店を選んだ身として、やはり今の方がやり甲斐があると感じでしまいます。以前の仕事で学んだことは非常に多く、今でも良かったと感じでいますが、大手であることが足枷になってしまうこともあり、結局町屋の工務店を選びました。大手で働く安心感や福利厚生は失ってしまいましたが、、笑

まとめ

要はどちらにもメリットとデメリットがあるわけです。かくいう私も大学院生時代に就職活動を行うにあたって、安定や福利厚生を重視した結果大手ハウスメーカーへの就職を決断したわけで、その時に設計者としてのやりがいを優先度一位には置いていなかったのも事実です。ハウスメーカーで設計を行うメリットは、上記で書いた通り、"安定"です。一方でメリットは"やりがい"ですね。町屋の工務店で働くメリットは"やりがい"で、デメリットはハウスメーカー程の"安定"がないこと。意識を高く持てない人には向いていないこと、"意識低い系"工務店が多数存在するため注意が必要ということです。

最後までまとまりのない文章で非常に申し訳ないですが、もし読んでいる方の中で参考になった、勉強になったという方がいらっしゃったら是非いいね!などよろしくお願い致しますm(_ _)m

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