見出し画像

審判の「判定プロセス」を理解しよう

はじめに

みなさんこんにちは。いえぽんです。

前回の "ジャッジリプレイ" で使用した判断ボードの解説を note や Twitter 等で公開したところ、たくさんの方から「わかりやすい」「自分も審判になったつもりでこれを使って判定してみたい」といった声をたくさんいただきました。

ありがとうございます。

一方、J開幕後のSNSなどをみていると、「誤審多発だ!!」「なんで!?」「どっちなの!?」「意味わからん」といった不満やモヤモヤをたくさん見かけます。

あるいは、誤解や知識不足からくる発言だったり、解釈の違いを言い争って "空中戦" をしているものも見受けられますし、僕への "強烈なブーイング" もたくさんいただきました。

なぜそういうことになっているのか、僕なりに原因や理由をいくつかの観点から考えてみました。

その結果、競技規則(とくにVAR)の不知と理解不足、人間の特性(誰もがミスをする)への理解不足と不寛容、自分こそ正しいという価値観の押しつけ、審判への誤解や偏見、事象に対する解釈の相違、審判サイドの情報発信が極小といったものが不満や誤解のもとになっていると思います。

ということは、そのあたりを解決すれば、みんながもっとフットボールを楽しめるようになるのではないか、と。

そこで今回は、前回のコラム判定は白黒2択、その前の「判断」は15択あるを含めた「判定プロセス」の話をみなさんに解説しようと思います。

判定プロセスの全体像

まずは、前回のおさらいです。

審判がより良い判定をくだすためにおこなっている "一連のプロセス" は、次のようになっています。

① 事象の発生
② 事象を確認
③ 競技規則と照らし合わせてそれが反則に値するのか判断
④ 競技規則と照らし合わせてそれが懲戒罰(警告や退場)に値するのか判断
⑤ 試合の状況や競技の精神を踏まえて反則として笛を吹く、あるいはカードを出すことが望ましいか判断

⑥ 最終的な意思決定(判定)
⑦ 実行
⑧ 対応

この③〜⑤の部分を「判断ボード」としてみなさんにご紹介しました。

それが下の図です。

見覚えありますよね。

ただ、なにも検証事項を反映させずにこれだけで事象を判断してしまうと、その人の主観や価値観、感情がバイアスとなって客観性や論理性、納得感に欠ける結論を導き出すことになってしまいます。

そこで、結論に論理性や納得感をもたせるために "あるもの" を加えて、全体像を可視化させたものが下の図です。

図を見ればおわかりいただけると思いますが、前回話した "判断ボード" は上の図の「Step2」のところで、今回付加する "あるもの" とは、その前段階に当たる「Step1」のことです。

もう少し丁寧に説明すると、 "事象が発生" してから "最終的な判定" を下すには "2つのStep" を踏む必要があるのですが、事象発生後に審判がやることは、まずは「Step1」にある "4つの観点" から事象を検証し、その検証結果を踏まえて、前回解説した「Step2」にある "15の判断" から一番妥当と考えられるものを選択し "自分なりの最終結論" を導き出す、ということです。

ここから先は

3,979字
この記事のみ ¥ 300

サポートありがとうございます。 「サッカーを もっと 面白く」「サッカーで もっと 繋がる」「サッカーで もっと 豊かに」 を実現していくための活動資金にさせていただきます。