ダイアログ・イン・ザ・ダーク

内なる美、ととのう暗闇
ゆるめながら五感を 研ぎ澄ます

体験してきたので記録

人は世界を知覚する際8割くらいは視覚に頼っている
ノイズキャンセリングイヤフォンをつけながらスマホを見るのが当たり前になってからは9割くらい視覚な気がする

ということで視覚以外の感覚器官を研ぎ澄ましたい、あわよくば第六感のような感覚に出会いたいという気持ちから体験するに至った


暗闇への入り口

会場はホテルの2階で外界と遮断できそうな感じだ
複数人で行うプログラムで軽く説明を受け、順番に更衣室に移動
光や音を出すものを置いて、素足になり、角に灯りが一つある少し窮屈な薄明かりの部屋に入る

壁に沿って小さい椅子に座り、アテンドの方が少しずつ明るさを落としていき、最後の光がなくなった

視覚が無くなった後に1番鋭くなったのは聴覚だった
耳をすまさなくても、まわりの人の呼吸、物音、アテンドの声、いつもより全てよく聞こえた
次は触覚だった、あまり不安などは感じていないつもりだったが手に少し汗を握っているような感覚をつかむ

その中でまずは参加者の自己紹介とあいさつが始まった
はじめに顔は合わせていたが物覚えの悪い私は顔も何も覚えていないので、実質暗闇の中が初めましてだった
声の大きさ、高さから自分がこれまでに出会ってきた人や映像の人たちを混ぜ合わせたような人たちが頭の中で人物像が出来上がっていく
勝手に出来上がった人物像をはらいながら、みんなのニックネームを忘れないようにを心の中で復唱する

自己紹介が終わると躙口からさらに暗闇の奥へと進んでいく


さらに深くの躙口


小間の茶室の出入口。「にじりあがり」「くぐり」などとも呼ばれる。高さ2尺2寸(約67cm)、幅2尺1寸(約64cm)程度のものが多い。客はこのような狭い入口から身体をかがめてにじって茶室に入る。にじり口は俗世間(茶室の外)と聖なる空間(茶室の中)を隔てる結界の役割をはたすものといえる。

表千家不審庵


躙口は身分を置いて茶室に入るための入り口だ
ここでは身分と一緒に視覚も一緒に置いて入ろう

しかし真っ暗な中、躙口に入るのも慣れていないので声かけと手を取り合いながら入る
入りながら聞こえてきたのは水の音
少し離れたところから綺麗な水が流れ、今にもコトっと「ししおどし」が鳴りそうなイメージが浮かび上がった

またその音からそこそこ広そうな空間であることがイメージ出来た
あたりのものを触れてまわる
ジャリっと足元から音が聞こえると同時に足裏には小さくて冷たい郡を感じた
砂利である幼い時お祭りをやっていた時に白い足袋で神社を歩いた光景が頭に浮かんだ
さらに進むと木を触りつける、倒れているものや聳え立つもの、こんなに触り心地があったんだと手のひらが教えてくれる
ようやく水の音の方へ
どうやら丸い手水舎のようだ
手を突っ込むといつもより水の温度がまとわりつく

冷たい

濡れたという感覚がいつもと違い違和感を覚えた
水に触れた皮膚が裏返ったような感じ、もちろん心地よい感じで

後に思うままに探索した後はみんなで並んで足湯を堪能
自分で桶にお湯を入れ、バスソルトを入れてもらう
水を掬うといつもより質量を感じる


暗闇の果てへ


次は遠くまで歩く
どこまでも広がっていそうだがなんとなくの広さがわかるふたつの感覚を感じながら端までいく
どこまで行ったんだろう、わからないけど心地よい
柵に触れ端まで行ったことを確認すると声や音で呼んでくれる少し離れた(10mくらい?)アテンドさんの元へみんな集まり円になる
ここからは味覚と嗅覚も存分に使う体験へと移行していった


ここからはみんな体験してみて



この体験で知った花の名前は自分の中では葉っぱや花の形、柔らかさ、匂いなどで初めて認識した少し特別で愛着が湧いた記憶になった


初めは暗闇に少し不安感があったがすぐに落ち着き、むしろ暗闇の心地よさに虜になった、終わりには出たくないと思うくらい
体験中は何も見えないのだが視覚以外からくる感覚から脳内にいつもより繊細な映像が作られた
体験が終わって外を散歩すると普段より街の音や匂いが良く感じれてた。
そしてなぜか景色も違って見えた

「ゆるめながら五感を 研ぎ澄ます」
体験する前は視覚を除いた四感じゃないの?と思っていたが納得だ


アテンションエコノミーによって視覚を酷使させられている現代の私たちはこのような「何もみない」行為を定期的に行うと注意を跳ね除け、さらに世界を研ぎ澄まして感知できるのではないのだろうか

明日からは良い写真が撮れそうだ





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