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フランチャイズへ加盟して独立開業する人が失敗する理由

「早期希望退職で退職金上増し」というリストラ話に乗り、フランチャイズに加盟して起業する人が後を絶たない。
しかし、多くの人は失敗する。
なぜか?
今回はその辺りのことを書き綴っていく。


全ての根本は「他力本願思考」

私はフランチャイズに加盟して経営している事業がある。
また、フランチャイズの本部として経営している事業もある。
つまり、フランチャイズの本部と加盟者の両方の気持ちが分かる。

さらに、経営仲間の中にはフランチャイズに加盟して事業を経営している人がたくさんいる。
失敗して撤退した人もいれば、上手く経営を続けている人もいる。

それは、失敗する人と上手くいく人の違いはどこにあるのだろうか?
それは、「他力本願」で有るか否かに掛かっている。

失敗する人の性質

失敗する人には、以下の性質がある。

1.商品やサービスを自分で生み出す能力がない
2.自分で客を呼び込む気がない
3.出店予定地域の周辺調査をしない
4.同業他社の調査をしない
5.経営計画を自分で考えない
6.改善案を考えない
7.本部の言いなりになる
8.本部の指導を無視する
9.本部と敵対する

ざざっと例を挙げたが、他にもまだまだたくさんある。
簡単に説明すると「本来、経営上一番重要なことを自分で考えないし、動かない」ということ。
フランチャイズに加盟さえすれば、後は本部が何とかしてくれると思っている。

フランチャイズ本部をやってみて分かること

フランチャイズの本部をやってすぐに分かったことがある。
フランチャイズの加盟希望者のほとんどは「最初から自分自身は努力する気はない」ということ。

例えば、以下の例がある。

1.商品や材料についての知識を得る努力はしたくない
2.サービスの品質を高める努力はしたくない
3.手離れの良い商品以外は売りたくない
4.手間がかかるサービスは扱いたくない
5.誰でもできる業務以外はやりたくない

それでも、利益を出して儲けたい。
元手資金は少なく、投資金を素早く回収したい。

そんな要望に応えるため、フランチャイズ本部は努力をする。
商品とサービスは本部が開発し、業務をマニュアル化する。
スタッフによってレベル差が出る作業は避ける。
高品質をあきらめ、低価格かつ量販戦略をとる。
当たり障りのないコンニャクビジネスの出来上がりだ。
勝負のほとんどは「情弱マーケティング」に掛かってくる。
後は数の暴力と勢いでフランチャイズを拡大していく。

私は、これらのことが分からずにフランチャイズ本部を立ち上げたので苦戦した。
最初は全くフランチャイズオーナーを集められなかった。
分かってきた頃には、同業他社のプロ・フランチャイズ本部に圧倒されて、あっさりと拡大勝負に負けた。
今は、他力本願な加盟希望者はスルーして相手にしない。
拡大の速度は著しく遅くなってしまうが以下のルールを承諾した加盟希望者のみ、一緒に仕事をしている。

1.商品・サービスの質は提供者のスキルに依存することを承知してもらう
2.仕事の結果を共有し、問題や成功をフィードバックしてもらう
3.フィードバックして改善したノウハウを常にアップデート対応してもらう
4.お互いに嘘をついたり、いい加減なことはしない

加盟者自身が努力してスキルを身につけなければならないため、拡大は亀の子ペース。
仕事の結果を共有する手間も有り、アップデートを頻繁に行う手間もある。
しかし、覚悟を決めて加盟した分、今のところ加盟9社16店舗に対して、1社2店舗しか脱退はない。

「流行りモノFC本部」と「短期回収目的の投資家」

フランチャイズに加盟する人は、2種類に分かれるように思える。
1つは、自分自身の本業として長期的に経営を行う目的で加盟するケース。
もう一つは、投資目的で短期的に経営を行う目的で加盟するケース。
自分自身の本業として、自分自身が事業にフルコミットして経営を行う場合、他力本願思考は危険だ。
しかし、投資目的の場合、他力本願でも上手くいってしまうことがある。

それは、フランチャイズ本部が「流行りモノで一気に利益を上げる」と考えていて、加盟者が「少しの期間で良いから短期で投資金と利益を回収したい」と考えている場合に起こる。
フランチャイズ本部は当初から流行りが終わる頃には利益を持ち越して逃げ切ることを考えるし、投資家も可能な限り初期から加盟して利益を持ち越して逃げ切る。
お互いの目的は一致し、利益感も共有できる。
もちろん、本業として加盟した人は絶望的だ。
フランチャイズ本部が衰退しはじめたら、何をやっても上手くいかなくなる。

フランチャイズを辞めたら、ただの人

良くできたフランチャイズに加盟した場合、その事業に失敗した後が怖い。
フランチャイズ本部から提供される商品、サービス、ノウハウ、ツール、ブランド力、マーケティング戦略、その他もろもろに頼り切っていた人は、そのフランチャイズ本部と縁切ったら「ただの人」になってしまう。

私の経営者仲間にコンビニを最大7店舗経営していた人がいる。
その後、4店舗を手放し、残り3店舗となった。
その時点で、彼はラーメン店を出店したいと言い出した。
また、後々はフランチャイズの本部として、店舗を拡大したいと言っていた。
そして、コンビニのPOSをイメージしたシステムをゼロから開発した場合の相場費用を私に尋ねてきた。
そのシステム構想は、単純なレジ機能だけでなく、オーダー端末、クラウド共有、在庫管理など、多岐に渡るものだった。
私は「3000万でも全く足らないと思う」と伝えた。
彼はびっくりして放心状態になっていた。
100~120万で買える特定業界向けPOSの価格が頭にあったようだ。
フランチャイズには、そのくらい仕事の難易度やツールの価値を麻痺らせる破壊力がある。

ある人は、スポーツ用品店のフランチャイズに本業として加盟した。
後は行政やスポーツクラブに入り込み、そこで売上を上げたいと言っていた。
しかし、2年もしない内に倒産した。
歴史のあるガチガチの保守的な市場に素人の新参者が入る込めるわけがなかった。
フランチャイズは、個人の力を麻痺らせる。
個人の力が試される時、麻痺った感覚との差を思い知らされる。

もしも本業としてフランチャイズに加盟するなら…

まず、多店舗展開を強く視野に入れておくべきだ。
自分が労働者として必死で働くわけでなければ、1店舗の運営が安定しただけで十分な利益が出るほど甘くはない。
業種にもよるが最低3店舗くらいは展開する覚悟で挑んだ方が良い。
1店舗では、何かと安定しない。
仕入、在庫、スタッフなど、ある程度共有ができることで初めて安定感が出る。

あと、SVとは仲良くした方が良い。
そして、小まめに情報の共有と交換をした方が良い。
同じフランチャイズ元の店舗でも、必ず差は出る。
優秀なSVは、その差がどこから来るのかを知っている。
多店舗展開へ切り出すのにもSVの力を侮ってはいけない。


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