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第十六釜: お兄様が全部乗せよりうどんが好きなはずがない。

お世話になります。Marunouchi Muzik Mag 編集長 Sin でございます。

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映えますねえ。今年は、私たちが愛してやまないミュージシャンの訃報や病の知らせが相次ぎました。もしかしたら、ロックは緩やかな死を迎えつつあるんじゃないだろうか。そんな不安も頭をよぎります。それでも、彼らの魂はレコードの中に納められていていつでも再会することができますし、きっと残された遺産を受け継ぐ次の怪物が現れてくれる。そんな希望を抱きながら、というよりもそんな希望を叶えるために、滔々とロックの物語を紡いでいくしかないですね。

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今日の運転サウドントラックは、SLASH'S SNAKEPIT が1995年にリリースした "It's Five O'Clock Somewhere"。先日、People In The Box の波多野さんはガンズの "Use Your Illusion Ⅰ & Ⅱ" を真の "ミクスチャー" 作品だと評していました。私もまったく同意見で、グラムからハードコアパンク、クラッシックロック、オルタナティブにポップまでこれほど豊かな混沌にはなかなかお目にかかることが出来ないと常に感じていました。アクセルの脳みそをバンドが喰らったというか。

まさに "幻想" とも呼べる奇跡を後に、スラッシュはどんな旅路を歩むのか。アクセルからある意味 "解放" されたスラッシュはただただ無骨でピュアなロックを創造したんですね。

この無骨なアルバムが無骨なまま終わらなかったのは、ギルビー・クラーク (彼の "Pawnshop Guitars" はなかなかどうして悪くない) をはじめとしたガンズメンバーの躍動、そして何よりあのジェリーフィッシュで活躍していたエリック・ドーヴァーの才能があったからだと思うんですよね。

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最近エリックは、元ジェリーフィッシュのメンバーたちと THE LICKERISH QUARTET というバンドを結成したそうですが、それにしても彼ほどその才能に見合う評価を手にしていないアーティストも珍しいと思います。

とにかく、感情の振れ幅が大きくて、心の底から哀願するような本気の叫びに何かを感じないロックファンはいないでしょう。奇しくもアリス・イン・チェインズのマイケル・アイネスが参加したアルバムですが、彼らの絶望に負けないくらいエリックの漢の憂いは胸を打ちますね。作曲にも大きく関与していたのですから、なおさらこの一枚のみで表舞台から遠ざかってしまったのは残念至極です。新たなバンドに期待しましょう!

それにしても、スラッシュのギターは完コピが難しいですよね。そもそも、完コピから得るものなんてほとんどないと私は思っているのですが、譜面には描かれない、タメの効いた独特のタイム感がギタリストを狂わせます。ジョージ・リンチにしても、先日亡くなったエディー・ヴァン・ヘイレンにしても、本能でギターを身につけた人たちの演奏、タイム感、景色はやっぱり何かが違っています。

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今日の一軒目は、坂出にある七福別館。高松に本店を構える名店です。

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カツヴェジタブルカレー温玉乗せ1260円。うどん基準で考えれば、松坂牛とかトリュフとかアワビの領域ですね。これは贅沢品です。しかし全部乗せの魅力には贖えません。全部乗せは漢のロマン。これぞ SNAKEPIT (混沌)。ただ、おねいさんに粉チーズを勧められて、これ以上の値段になったらもううどんではいられないと恐ろしくなり「チーズまではいりません!」と頑なに断ったのですが、無料でした。

基本的に讃岐の人は、ぶっかけでさえ認めないというかけ原理主義者が多いのですが、このカレーうどんは素晴らしいですね。シャバシャバでしかしコクのあるカレーがコシコシうどんをお迎えする、カレーうどんである必然性を強く感じられます。注文から揚げ始めるアツアツのカツもパチパチと音を立てながらカレーに沈みます。季節の野菜も新鮮そのもの。

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二軒目は空海房。高松空港から少し塩江よりに進んだ空港通り沿いに位置します。

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となりは小高い丘にお寺さんが。こんな風景がふと広がるから、やっぱり田舎に住むんですよね。

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出ました、豚天釜揚げ。迫力が違いますね!このお店は何しろ蒸気釜が強力なので、短時間で茹で上げることができます。うどんを投入しても温度があまり下がらないんですね。その効果は抜群で、ピカピカてコシのある麺が最高の喉越しをもたらしてくれます。豚天もアツアツサクサク。この店が掘って無料で提供しているお水は、空海の水と呼ばれ血圧を下げる効果があるんだとか。

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少し北寄りの風が冷たくなってきましたね。我がホームグラウンド、中西うどんではしっぽくがはじまりました。数種の野菜と鶏肉をゴロゴロと煮込んだ、讃岐の冬には欠かせない郷土料理。昔はどじょうを入れたりもしていたようですね。アツアツのおでんとオコタでいただく至福は計り知れません。

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少し宣伝を。11/10に Daymare Recordings からリリースされる緑の使者、BOTANIST の最新作 "Photosynthesis" 日本盤のライナーを書かせていただきました。今のところ、ここでしか読めない新たなインタビューも掲載しております。ダルシマーという珍しい楽器を使用するメタル世界の植物学者。ただあの Dan Swano をプロデューサーに起用することで、今回はより幅広い層にアピールする快作に仕上がっていると思います。テーマはなんと光合成!よかったらチェックしてみて下さい。

https://diskunion.net/metal/ct/detail/HMHR200831-001

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というわけで、もし第十七釜があればお会いしましょう。シェイクちんぽ!


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