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リゾートと冒険、どちらを求めるか ~「旅」と「旅行」の違い~ 2019アウェイ琉球

この日の北口駐車場は「ここはベトナムか?」というぐらい、車が雑然と停められカオス状態でした。試合後、脱出に手間取ったら帰りのフライトに間に合わなくなるかもしれません。

試合終了のホイッスルとともにゲートを飛び出し、車にダッシュします。どうやら一番乗りで駐車場を出られたようです。まだざわつくスタジアムを尻目に、道路に出て安堵のため息。そしてこんなことを考えます。

「フフフ……この風、この肌触りこそ『旅』よ!」


以前、「旅と出張の違い」について書いたことがありました。

新潟アウェイに日帰り遠征に行ってみたら、まるで出張のようで全然旅っぽくなかったという話です。

その時、「旅」と「旅行」にも違いがあるという話にも少し触れました。

『広辞苑』によると旅・旅行はそれぞれ、以下のように説明されています。

旅行:徒歩または交通機関によって、おもに観光・慰安などの目的で、他の地方に行くこと。たびをすること。たび。
:住む土地を離れて、一時他の土地に行くこと。旅行。古くは必ずしも遠い土地に行くことに限らず、住居を離れることをすべて「たび」と言った。

似たような説明ですが微妙に違います。「旅行」は「おもに観光・慰安などの目的で」とされています。全体的に、「旅」の方があてのないもの、「旅行」は目的があり計画的なもの、というイメージがあるように思います。

4月のことですが、柏レイソルのJ2第8節を観戦に、沖縄に行ってきました。この遠征がいかにも「旅行」であり「旅」ではなかったなというものだったので、そのことについて書いていきます。

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著者 円子文佳(まるこふみよし)
Twitter https://twitter.com/maruko2344

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・FC琉球とは

FC琉球は2018年のJ3リーグで優勝し、今年からJ2に昇格しています。鹿児島もそうですが、初めてのJ2昇格、楽しそうですね。
柏は逆に今年久々にJ2に降格したのですが、正直「まあ沖縄とか鹿児島とかに行けるし、1年ぐらいはJ2もいいかな」と思ったサポーターもいるのではないでしょうか。僕はそうでした。6月3日現在、第16節まで消化して柏は7位と、プレーオフ圏外です。どうして「1年ぐらい」を前提に考えてたのでしょう、J2なめてましたね。周囲の他サポ(特にFC東京)からも「沖縄とか鹿児島とか行けるなんて羨ましい!」って、いまだによく言われます。じゃあ代われ! どうせ「1年ぐらい」って思ってるんだろう、他人事だと思ってハードル上げやがって! 軽く毒を吐きましたが、大丈夫、僕はネルシーニョを信じています。

それはともかく。

柏のアウェイ琉球戦は第8節、4月7日でした。もう2か月前のことですね……。当時のチーム状況を振り返ってみます。柏は開幕4連勝後2連敗したものの、東京V戦はシュート数26対4と一方的に押し込んでいた内容でした(スコアは0-2で敗戦)。直前の第7節では長崎相手に3-0の完勝で、シュート数も29対6とフルボッコ、むしろなぜ3点しか入らなかったんだろう?という内容でした。琉球は当時首位でしたが、J3からの昇格直後でもあり「春の珍事」的に考えている人が多く、「むしろ勝てば俺らが首位じゃん」と、リゾート気分で沖縄へ旅立ちました。


・沖縄遠征を「旅行」にした背景

今回の試合は4月7日、日曜日でした。月曜に休みを取っていなければ、試合当日のうちに飛行機に乗って帰らなくてはなりません。試合は16:03キックオフで、終わるのは18時ごろです。那覇空港からの最終便は20:40(JAL)とか20:50(ANA)とかでした。試合会場の「タピック県総ひやごんスタジアム」から那覇空港までは、通常なら車で1時間ぐらいの距離なので、よほどのトラブルがなければ最終便には間に合いそうです。なので、当日の飛行機に乗って帰ることにしました。

一応4月5日、金曜の午後を休みにして、15:45羽田発の飛行機で沖縄へ出発することにしました。それでも那覇空港着は18:20、レンタカー借りたりホテルに向かったりと考えると割と夜遅くなります。2泊3日で、そんなに時間があるわけではありません。いつもみたいにやたら動き回る旅をしても良かったのですが、「沖縄といえばリゾートかな」みたいに考えて、4月6日の土曜日は一日、ホテルから出ずにリゾートとして過ごすことにしました。

沖縄ぐらいの緯度だと、「常夏」というほどではありません。この日の気温だと、海は「ちょっと寒いけど入ってれば慣れる」ぐらいでした。せっかくなので一応海には入ったり、トロピカルドリンク飲んだり、イルカと戯れたり、卓球したりしました。


ここに書けるようなことを何もしていない……。

2か月前の旅行について、ここまで寝かせていたのには理由があるのです。
せっかくの沖縄なのに、人様にわざわざ伝えるような体験を全くしていないのです!ダラダラとリゾートをしていただけでした。それはそれで、「命の洗濯」的なオフの時間としては有意義なのですが、思索がありません。コンテンツになるかというと難しいものがあります。


・改めて考える、「旅」と「旅行」の違いとは

という理由で、これが「旅」と「旅行」の違いです、というまとめ方をする構想を考えつつ、しばらく放置していました。そうしたら、昨日新メンバーの屋下えまさんが「旅とは」的な文章を書いてくれました。


「人生とは旅であり、旅とは人生である」と中田英寿も言っているし、旅はものすごく高尚なもので、結構努力が必要で難しいものなんじゃないか、というか、そうあるべきだと思っているところがありました。

だって、人生がそんなに簡単で手軽だったら、つまらないじゃない?
すぐにできるものはすぐに飽きちゃう。小さい頃からずっとそうでした。

だから、旅を難しいとかややこしいとか、めんどくさいとか、そういうものとして位置づけたい。それが楽しさや幸福感を最大値に引き上げることを知っているから。たぶんそのあたりが、わたしが旅についてのハードルをあげる理由の基本線なんだと思います。


「旅」とは難しい、ややこしい、めんどくさいものである、だからこそ旅である、という話です。そしてそれは「旅」の話であって、「旅行」は似て非なるもの(一部重なりはあるが)だと僕は考えています。「旅と出張の違い」の時に出した概念図を再掲します。

「旅行」は目的があり計画的なもの、「旅」の方があてのないもの、というイメージです(なので業務という目的のある「出張」は「旅行」の部分集合になっています)。「旅」の方が高度で価値がありそうに考えがちですが、それはハイリスク・ハイリターンであることの裏返しです。

世の中結構、「旅」よりも「旅行」の方を好む人も多いです。そういう人は、せっかくの休暇や旅費というコストに対して、安定的なリターンを求めているのでしょう。僕なんかは「旅行」よりも「旅」の方が好きなのですが、ハイリターンを追求する能力を持っているからなのか、単にリスクが見えていないだけなのか、どちらなのでしょうね。

……という感じで、のんびりリゾートで終わってしまいそうな沖縄遠征でしたが、最後に「旅」っぽい不確定要素が待っていました。試合観戦とそこからの帰宅です。


・リゾートホテルを出たら「旅」が待っていた

試合会場の「タピック県総ひやごんスタジアム」から那覇空港までは、通常なら車で1時間ぐらいの距離でした。試合は16-18時で、帰りの飛行機は20:50発です。余程のトラブルがなければ間に合いそうな時間ですが、何があるかわからないので試合前14時ごろに一旦空港に行き、荷物を預けチェックインしておきました。試合後にはもう、保安検査場にそのまま向かえる状態です。

1時間ほどでスタジアムに着く…はずだったのですが、何度か道を間違え、キックオフ20分前ぐらいにようやくスタジアムの駐車場に着きました。そうしたら、駐車場がカオスというか、スパゲッティ・モンスター状態でした。

どう見ても駐車スペースではない場所に、二重・三重に車が停められている……。まるでベトナムのようだ。そして、係の人が誰もいません。諦めて出ていく車も結構ありますが、車の通路部分にも停めてる車があり、通行するだけでも一苦労です。どうしてこうなった……。

どうしよう、今から他に行くには時間ないしな。俺も適当に二重駐車するしかないのかな?とはいえちょうどいい場所もなさそうだし、この辺では普通なのかもしれないけど俺には抵抗あるなあ……。などと考えていたら、奇跡的に一台、出発する車が!!スタジアム以外にもいろいろな施設があるので、そちらの利用者だったのでしょう。空いたスペースに飛び込み、正当な駐車が出来ました。

後から調べたのですが、僕がこの時停めたのは「北口駐車場」でした。それ以外にもいくつか駐車場はあり、おそらくスタジアムから遠い所ならこの日も余裕があったのではないかと思います。係の人もいたかもしれません。

僕は今回、下調べせず「もし混んでたら道路脇に誘導員がいるだろう」ぐらいのつもりで向かってしまいました。駐車場の状況は時間によってかなり変わるし、一人で運転中だと携帯を見れないので、結局リアルタイムの情報は現地の誘導に頼るしかないのです。これまで僕の観戦歴では、J2ぐらいまでならそれで大体問題なかったのですが、琉球はまだJ2クラスの運営に慣れていないということなのかもしれません。この日の入場者数は7913人で、クラブ歴代2位だったそうです。

キックオフ10分前ぐらいに、無事スタジアムに到着出来ました。試合結果は、1-1の引き分けでした。柏は3分に先制したものの、後半は割と攻められ82分に同点ゴールを許す、という展開でした。試合内容については別記事にします。


・生還、そして旅とは

さて、スタジアムからの脱出です。
駐車場があんなにカオスだったので、試合後なかなか駐車場から出られない可能性があります。あまりに遅くなると最悪、飛行機に間に合わなくなるかもしれません。そのため、試合終了のホイッスルと同時にゲートを飛び出し、ダッシュで車に向かい、一秒でも早く駐車場から脱出する必要があります。3分ぐらい走って車にたどり着きました。他はまだ誰もいないぞ。こんなこともあろうかと、すでにカーナビに目的地(レンタカー返却)は入力してあります。出発! 何とか混雑に巻き込まれずにスタジアムを脱出出来ました。頭の中ではインディー・ジョーンズのテーマが流れています。


まとめっぽくなりますが、この駐車場周りの出来事については「旅」要素が詰まっているなと思います。地域による風習の違い(みんな二重駐車している…)を肌で感じ、不確実性(試合に間に合わないかも)に身を投じ、そして生還(無事脱出して飛行機にも間に合った)。これがツアーバスなどで時間が決まった行動をしていたら、「旅行」っぽくなるでしょう。そういう、リスクの少ない旅程の方が好きな人もいるかもしれません。しかし僕は、この駐車場周りの出来事に、今回の沖縄旅行全体の中でも一番ワクワクしました。「旅」が好きな人ならこの気持ち、わかってもらえると思うのですがどうでしょうか?


以上、沖縄で「旅」と「旅行」の違いについて考えた話でした。本文は以上になります。本文だけで完結する文章になっています。
この先はおまけ部分で有料になります。結局空港には早めに到着できたのですが、フライトまでの隙間時間に人類最古の職業について考える機会があり、それについての話です。
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