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居酒屋サッカー論 ~試合に負けた後こそ、絶対に負けられない戦いがある~

「とにかく勝てない柏」

待っているのは最高の週末じゃなかったのか。わざわざ愛媛まで来てこれかよ……。

サッカーのアウェイ旅に行っても、試合結果が良いとは限りません。だからこそ、試合以外の部分については、自分が楽しめるようコントロールすることが必要です。

そう、居酒屋での注文ひとつとっても、しっかりした準備とゲームプランを用意しましょう。試合に負けた後にこそ、絶対に負けられない戦いがあるのです。



・旅における食事の重要性

今更ですが僕は旅において、食事を非常に重要なものと考えています。

旅は自分の見聞を広げ、また逆に自分について考え直すいい機会です。

今の時代、知識だけならネットで手軽に手に入る世の中です。しかし知識から実感を伴った「知恵」に昇華するためには、五感を通じて物事を実感するのが早道です。食事は味覚、嗅覚、触覚などを通じた……、いや小難しいことはともかく、「おいしいは正義」です。


ところで6月9日、僕はJ2柏レイソルの試合を見に、愛媛に来ていました。

試合結果は1-3での敗戦で、内容的にも惨敗でした。そして試合後、傷心を癒すべく居酒屋に一人で向かったのですが、そこでも満足感があったとは言い難い、不本意な結果に終わりました。とはいえ、食事については店のせいではなく(割といい店だったと思う)、自分の注文の仕方が悪かったためでした。

オーダーの際に、自分がもうちょっと注文の方針などをきちんと立てていれば、結果が変わった可能性もあるのではないか?そう考えてみると、さっきまでのサッカーでひどかった試合との共通点が見えたような気分になってきます。ええ、お酒飲んでるとふと素晴らしいことがひらめいたように感じる、よくあるアレです。でも翌日冷静になってから改めて考えてみても、やはり人生にとって重要なことだと思えるので、一旦ここでまとめさせていただきます。

「ビールは私を裏切らない」

歴史上の偉人による言葉なのですが、いいですね。僕も、ビールは裏切らないと思います。しかし、旅の食事というのは時に、期待を裏切ります。そうならないように「旅の食事というゲーム」をコントロールしていこうという話です。

・旅の食事というゲームの「目的」

サッカーというゲームの「目的」は、試合時間内に相手より多くのゴールを奪う(相手のゴールは防ぐ)ことです。そのようにルールで決まっています。

旅の食事はサッカーと違って、ルールによる勝利条件が決まっているわけではありません。なので、自分で設定する必要があります。

今回は「旅での食事」なので、目的を「珍しい体験を得て、見聞を広めること。かつ、美味しいこと」としておきます。ではその目的のため、具体的にどのように考えてオーダーをしていくべきでしょうか。

・旅の食事における、得点=ゴールとは

サッカーでは0-0の引き分け、2-1の勝利、2-2の引き分け、1-3の敗戦、5-0の勝利……など、様々な得点経過があります。しかし一つ言えるのは、1点も取れなければ勝利することはない(引き分けが結果の上限)ということです。

旅での食事の「得点=ゴール」を設定しておきます。ラーメンや丼ものなどのように一品注文だったり、居酒屋やバルのようにアラカルト注文だったり、和食やフレンチなどコースだったりなど、世間には様々なタイプの飲食店があります。このゲームでは「美味しく、かつ旅ならでは」と言える皿が一つあれば1ゴールとします。まあ1点ではなく3点に値する料理もあるかもしれません。サッカーなのでここは一度に3点入るとかではなく「FWアワビがハットトリック!」のようなイメージで行きましょう。

いずれにしろ、「旅ならでは」なものでなければノーゴールです。例えばビッグマックが大好きな人がいたとして、旅先でビッグマックを食べたとしましょう。でもそれは日本全国どこでも食べられるので、得点ではありません。

逆に、不快な経験があったら失点です。店が汚い、店員の対応が悪い、会計が意外と高かった、周りの客がうるさい……などもそうですが、食べ過ぎて気持ち悪くなった、大量に残して(自分が)気まずくなった……など、自分の主観に則した不快さも失点とします。

失点より得点が多ければ勝利です。1-0の勝利を目指しても良いですが、たくさん点を取ろうとすると攻撃的な布陣(注文)にせざるを得ず、失点のリスクが高まります。

このように真面目に考えていくと、この「旅の食事」というゲームは意外と難しかったんだなと思います。場当たり的に感情に流された注文をするのではなく、事前にゲームプランをしっかり立てて、それに沿った注文をする必要があります。

応援しているチームが上手く行っていない時、「真面目にやれ!」「気持ち見せろ!」などとよく叫びますが、そういうお前はどうなんだ?といういい例ですね。僕ももっとプロ意識を持ってゲームに臨んでいこうと思いますので、これからも応援よろしくお願いします。

・「旅ならでは」とは何か

単に美味しいものを食べたいのなら、毎日銀座に出かければよいです。

このゲームでは、美味しいだけでなく「旅ならでは」が必要です。それはどういう要素でしょう。

ここでは、「その土地に行かないと得られなかった経験」としておきます。例えばですが、今年僕は山口に行った際に「くじら料理」を食べました。この試合は6-0ぐらいの勝利だったのですが、ここまでのクオリティのくじら料理はおそらく下関に行かないと食べられないと思います。これこそが「旅ならでは」の食事の真骨頂です。

そうなると、「松阪牛のステーキ」などはどうでしょう?銀座でも食べられそうですね。この辺は人によって違うところです。日常で松阪牛のステーキに接する可能性のある人にとっては、三重県に行って食べたところで、それは旅ではありません。しかし、普段の生活圏に松阪牛がない人にとって、「せっかくの旅行だし」ということでステーキを食べたら、それはゴールになると思います。

「日常にない」というのは、単にお金の問題ではなく、発想の問題です。例えば今年鹿児島に行った際に、「黒豚のトンカツ」を食べました。鹿児島産の豚肉は別に、東京でも普通に手に入ります。しかし僕にとっては、鹿児島に行かなければ「黒豚のトンカツ」を意識することはなかったでしょう。なのでこの食事は「日常にない」ものであり、旅要素だったと言えます。なおこの試合は、PKによる得点で1-0で勝利したみたいなイメージでした。


・シュートを打つなら居酒屋

このゲームでは、点を取るにはシュートを打つ(注文する)ことが求められます。シュート数が多い方が点が入る可能性が高くなるので、丼もの一品などで守備的に戦うよりも、コースやアラカルトで数多くの皿が出てくる攻撃的な戦い方を、僕は好みます。

数多く注文すれば、どれか一つ二つ「刺さる」メニューがあれば、それで得点になります。そして僕は一人でアウェイ遠征に行くことが多く、一人だとコースでの注文が出来ない店も多いので、どうしても居酒屋に入りがちでした。

食材の「足の速さ」の問題もあります。肉だとどうしても、「その土地ならでは」になりにくいです。特に牛肉などは熟成した方が美味しいので、「富山に行って氷見牛を食べよう!」とは思いません。東京でも食べられてしまう物の代表例です。富山ならではとなると、やっぱりホタルイカとかブリとかになります。魚貝はストライカーです。「足が速いとストライカー」、何だかサッカーっぽくなってきたでしょう?というわけで僕は、刺身などを出す居酒屋を選びがちです。


・お酒を飲む場合(僕は飲みます)

僕の話ですが、旅に行ったら必ずお酒は飲みます。旅での食事において、ディフェンダーのようなものです。

もちろん、車での移動がある場合などは飲めません。そういう試合は、主力ディフェンダーが出場停止のような状況ですね……。ゲームが行えないわけではありませんが、かなり苦戦します。

そして意外と、国内旅行だとお酒はあまり「旅ならでは」にならないのです。

様々な地方の日本酒や地ビール、焼酎など、あるにはあるのですが、どれも今時、通販で買えてしまいます。なので僕の場合、森伊蔵石田屋であっても、お酒単独で「ゴール!」とは感じません。ただ、ないと寂しいので失点の要因になり得ます。不味くてもダメですね。なのでディフェンダーというイメージです。

また、いわゆる「マリアージュ」というものがあります。料理とお酒の組み合わせにより味が広がるというやつですね。例えば大分に行ってとり天を食べる際には、ビールがセットで欲しくなります。珍しい例としては以前、松本(そういえば来週行きます)で発見がありました。松本の日本酒がどうも、甘くて僕は苦手でした。しかしその甘さですが、郷土料理のイナゴの佃煮と合わせると、強い味同士が引き立てあってか見事なゴールが決まりました。攻撃的な選手にパスを出すのも、ディフェンダーに求められている役割ですね。


・愛媛戦、なぜチームは上手く行かなかったのか?

このゲームの概念、以上のような感じですがいかがでしょう。ついて来れてる?
さて、このような壮大な構想のきっかけになってしまった愛媛戦です。サッカーの試合については別記事にしているので興味があれば。ひどい試合でした。

試合会場はこの店でした。

壷々炉
https://tabelog.com/ehime/A3801/A380101/38000341/

適当に見つけて入った店です。その割には店自体は良い方だったと思います。日曜の夜だったのでそんなに混んでいなかったのもラッキーでした。そういう幸運を、きちんと結果に結びつけないといけないのですが……。
メニューを一部掲載しておきます。あなたが監督だったら、このメンバーからどのようなゲームプランを考えるでしょうか?

僕が選んだスタメンは以下の通りです。

生ビール
お通し(切り干し大根的なものだった)
キスの天ぷら
サザエの刺身
アナゴの薄造り
伊予牛のタタキ

一人ですが乾杯!(試合開始)

生ビールが着実にビルドアップのボールを回します。料理は伊予牛のタタキ、サザエの刺身、アナゴの薄造り、キスの天ぷら、の順に出てきました。牛タタキ、まあ普通です。サザエ、肝もしっかりしていて悪くありません。

ぼんやり入った試合でしたが、ゲームプランが全くなかったわけではありません。この試合、まずはストライカーをアナゴの薄造りに任せるシステムでした。普段はあまりアナゴをお造りで食べる機会はありません。そして今治産のアナゴらしいです。結構な旅要素で、ここで1点先制できればゲームを楽に進めることが出来ます。あとは刺身中心に前線を並べつつも、バランスを考えて牛のタタキや天ぷらを周囲に配置し、あわよくば追加点を狙おうという算段でした。

この試合上手く行かなかったのは、まずはこのアナゴの薄造りが期待外れだったことです。薄造りというが、味も薄い……。ちょっとこのフォワードでは、ゴールを奪えそうにありません。むしろがっかりしたので序盤に1失点です。そしてスタメンでは最後に登場となる、キスの天ぷら。揚げ物なのでまあ外れることはないのですが、感動するほどではありません。ここでピッチ上の問題に気づきます。天ぷらと薄造りの量が多いのです。テーブルにも胃袋にも、スペースがなくなる!まるでわがままなブラジル人2トップが、守備もせずボールを要求し中央に居座ってスペースを潰しているようでした。

ゲームプランが上手く行っていないので、新たな選手を投入します。「あこう刺身」「魚貝のとろろ焼」(それとビールもう一杯)。

あこうの刺身は、本日の鮮魚の一番上に書いてあって気になっていました。スタメンのアナゴがハズレだったので、代わりに点を取ってこい!という交代です。魚貝のとろろ焼はバランスを立て直すために入れました。

結果としては、微妙……でした。あこうも淡白な白身の魚で、悪くはなかったのですが(胃袋的に)この時間から投入されてもゴールを奪うのは難しかったです。魚貝のとろろ焼も量が多く、バランスはとったかもしれないがそれだけ、という存在感でした。

このままでは終われない!

最後に「亀の手」(あとビール)を投入します。貝の一種らしいです。サッカーの試合でいうと敗色濃厚になった時に投入される、実力が未知数の謎外国人選手かのようです。何とか、神の手でも何でもいいからゴールを願いたい。

が…………。「亀の手」も結局ダメでした。可食部がほとんどなく、ジャリジャリと貝殻を食べているかのような……。見聞を広めるという点では面白かったのですが、この試合で一発逆転を託された存在としては実力不足と言わざるを得ません。タイムアップで試合終了。スコアは、柏の試合と同じ1-3ぐらいでしょうか。わが軍、愛媛に2連敗です。


・サッカーも旅の食事も、準備とゲームプランが必要

この日のゲーム、一番大きな敗因はアナゴの薄造りだったと言えるでしょう。未知の料理を頼んでいるので、期待したものと違ったことは仕方ありません。ただ、値段からある程度量を推測できたはずです。アナゴが悪かったわけではなく、淡白な刺身で胃の容量を使わされてしまったことが悪かったのです。一人居酒屋で、刺身なら盛り合わせを注文するべきでした。そういうゲームプランを持たずに試合を進めたことが監督としての落ち度でした。

また、そもそも試合に臨む準備が不足していました。今年はJ2で連戦(旅の)が続いているため日程的に厳しいです。そのため愛媛について事前に調べる時間がなく、店選びも適当に見つけたところに入るという体たらくでした。それにしては割と良い店を引いたと思うのですが、準備なしでメニューを眺めてもいいアイデアが浮かばず、チームとして良い崩しが出来ませんでした。スタメンを選んだあとで、メニューでこんなページを見つけました。愛媛の刺身事情についてわかる、なんて親切な……。事前にわかっていればおそらく緋扇貝をスタメンに選んだと思います。


しかしこの学びは、自分にとって有意義なものだったと思います。切り替えて次につなげていきたいと思います。すでにチームとして立てるべきプランも考えているのですが、長くなったのでそれは次回以降にします。読みたい方はリプライなどで教えてください。ツイッターでリプをつけてもらえたらしばらくは全レスしますのでこれからも熱い応援よろしくお願いします!

この記事は、旅とサッカーを彩るWEB雑誌OWL magazineのコンテンツです。もし面白かったら、SNSで拡散にご協力いただけるとうれしいです。より多くの人が読んでくれることが作者の希望です。

著者 円子文佳(まるこふみよし)
Twitter https://twitter.com/maruko2344

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以上、愛媛で「旅の食事」とサッカーの試合の共通点について考えた話でした。本文は以上になります。本文だけで完結する文章になっています。
この先はおまけ部分で有料になります。翌日の昼、スパゲティを食べた話です。その試合のスコアは1-1としておきます。また、旅の昼食と夕食とではサッカーでいうとリーグ戦とカップ戦ぐらいの違いがあるなと考えたのでそのことについても書いていますが、勘のいい人はこの記載だけで何を言いたいかわかるかもしれませんね。

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