あくまでも、架空だから、引き込まれる魅力ある殺人犯たち#BUTTER#死刑にいたる病
映画館に行かなくなって久しい。それどころか新規の映画を最近めっきり観ていない。
「新規」というのは、新作を含む、まだ鑑賞していない映画の事。もちろんDVDや動画配信も含まれる。
私は過去にすでに観た映画を、繰り返し見るのが好きなので(無料映画や過去に買ったDVD、レンタルしたDVDなどで)次から次へと新作が出ているのに、なかなか見る事ができずにいる。
時々は、新作DVDを借りたりはしていたが、それも最近めっきりしないし、
映画館となるとそれはもうハードルが上がってしまっている。
コロナの影響、、、といより(一時期よりは入りやすくなっているはずだが)私の場合は金銭的に。(シクシク・・・・)
絶対行けない訳ではないが、ほぼ無職に近い全く儲からない自営業(今のところ・・・と言いたい)になってから、以前のように気軽には観られなくなている。
とはいえ、本当に本当にどうしても見たい映画は観たい。
最近の気になる映画はこれ。
これは、実は原作はもう読んでいる。
なので、原作と、映画とまた違った感じになるのか?どういった演出になっているのか?いろいろ気になるところも多いし、何より私は「孤狼の血」が大好きだったので、同じ監督という事で、また観たいポイント爆上がりである。
こちらも、もちろん原作を読了済。
しかし、今回は「死刑にいたる病」でも「孤狼の血」でもなく
「BUTTER(バター)」の話である。
男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。(本文解説より)
私が本を欲しいと思うポイントが、これは全部詰まった本だった。
出合ってすぐに、何の予備知識もなく購入していた。
まず、装丁。
ご覧のように、女の髪がトロリと溶けるバターのようである。そしてその下にはまさしくバターが、あたかも一品の料理であるかのように供されている。なんだか、気になるし、好きな雰囲気の絵柄である。
次に、題名。
「BUTTER」まさしく、「バター」。その一言のみ。シンプル。そしてなにか気になる。
肝心なのは内容であることは確かなのだけれど、何の予備知識もなく、目的もなく、ふらふらと本屋さんにはいって目を引くのは、この二点ではないだろうか。
そして、手に取りまずは最初の出だしの文章をちらりと読んでみる。
ここでも、私の好きな、気になるものが飛び込んできた。
「・・・・・初めて降りる田園都市線の駅だ。・・・・」
私はやたらと「都会」に憧れているので、都会にまつわる名前が出てきただけで、なんだかワクワクと興味をひかれる。単純である。
そして、基本中の基本、最大の「スキ」ポイントは、ミステリーであり、サスポペンス、そしてホラーである。
実際にあった事件を参考にしている作品なのだが、内容はそれほどサスペンス的要素は感じられない。そして、ホラーでもない。まあ、それは読む人によって違うのかもしれないが。
この作品では、グルメな?被告人のかつての大好物や、得意料理、思い出の食事などなど、とにかく食に関する話のやり取り、描写が多い。
グルメと言っても、ハンニバル的なグルメではなく、ちゃんと食べれるものの話だ(そりゃぁ・・・・)
余談だが、こちらに少しハンニバル話あり〼(本当にすこし)
これは、本当に大好きな映画・・・
話が大いに逸れそうなので、戻るが
被告である「梶井真奈子」通称「カジマナ」は、数件の不審死事件の罪に問われ収監されながらも、高級レストランのフルコースメニューや、有名店のクリスマスケーキ、真冬の真夜中に食べる深夜営業のラーメン店の思い出を、取材の為に訪れる女性記者である主人公に、夢見るように語って聞かせる。
「BUTTER」を読むと、誰でもきっと食べてみたくなる、そして手軽にまねできるもの、、、、と言えば「バター醤油ご飯」だろうか。
乳アレルギーとなってしまった私には二度と(たぶん)食べれない一品だ。
「努力だの精神論なんてどうでもいいの。その時、一番食べたいと思うものを好きなだけ食べるのよ。耳をよく澄まして、自らの心や身体に聞いてみるのよ。食べたくないものは決して食べないの。そう決心した瞬間から心も身体も変わり始めるわ」
いつでも自信たっぷりにふるまう事を怠らない、憎まれ口を叩いて、一見自分自身以外に興味が無いように見えるが、こちらの懐を見透かすような指摘を繰り返す。近づいたと思ったら、離れ、、また近づき。
次第に主人公がこの被告に思いもよらず引き込まれてしまうのは、「あるある」なのだろうか。
『死刑にいたる病』を読んだときに、ふとこの「BUTTER」が頭をよぎったのも、全く話は違うし、被告人である「BUTTER」の梶井真奈子と「死刑にいたる病」の榛村大和は全く容姿もタイプも違うのだが、共通するのが「殺人の容疑者に主人公が惑わされいつの間にか引き込まれていく」ところである。
カジマナに紹介されたケーキを食べた主人公が、その味わいを伝える時こんな表現をしている。
「どこまでもワルツのように回転しながら螺旋を描き、終わらない落下を続けているような美味しさ」
底の見えない狂気を含んだ連続殺人犯の思考に、いつの間にか寄り添ってしまう二つの物語を読んでいると、やはり、そんな感想を抱かずにはいられない。
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