評価制度ってどうしてる?【マルイノホンネ #2 二軸評価制度】
社員の本音を探り、丸井グループの実態に迫るマルイノホンネ。第2回となる今回は評価の仕組み(二軸評価制度)についてです! 前回のグループ間職種変更の中でもあったように丸井グループには小売の丸井、フィンテックのエポスカード以外にも10数社の関連会社がありますが、これらグループ会社のどこに所属していて、どの職種であっても同じ制度が丸井グループでは適用されるようになっています。今回、その全社統一の制度の中でも評価の仕組みについて、業種も異なる会社で統一した評価制度をどのように運用しているのか。実際の社員はどのように評価を行っているのかに迫ります。
丸井グループの評価の仕組み
他社の方と評価が10数社あるグループで同じ仕組みを適用しているとお話しすると、「それってどういうことなんですか?」や「本当にうまくいってるんですか?」といった質問を多く受けることがあります。
そんな質問にお答えするために、編集部のざみーが、どのような仕組みなのかを簡単に説明していきます!
丸井グループの評価は「パフォーマンス評価」と「バリュー評価」の2つの評価軸によって評価を実施しています。この制度はVUCA時代に企業が成長していくための原動力として人の成長を後押ししていくための制度として2017年からスタートしたものです。
これまでは数値評価と行動評価という2つの項目を達成度など目標に対してできたかどうかということを評価していましたが、それでは、人の成長を後押しし、企業としての成長に結びつけられないのではないかと考え、数値に関してはパフォーマンス評価としてチームで評価し、一人ひとりの社員がどれだけ成長し、スキルや知識をブラッシュアップして発揮される個々の力をバリューとして上司だけでなく、チームで評価する方法に変更しました。
パフォーマンス評価はその期の賞与に、バリュー評価は、個人の昇進・昇格にそれぞれ反映されることになっています。
執行役員へ突撃インタビュー!なんで評価制度を変更したの?
実際の社員の声を聞いてきましたが、そもそも評価制度を変える必要性がなぜあったのでしょうか?その背景や当時の苦労した話を丸井グループのCHROである石井さんに編集部のざみーが聞いてきました。
- まずはじめに、2017年に評価制度を変更した経緯を教えてください。
当時の評価制度は売上など短期的な目標が振り分けられていて、そうすると「目の前のことをやれば良い」という意識で、先を見て仕事をやる人が少なかったんですよね。 そのため中長期的にどう革新し、そのためにいかにチームビルドをしていくかという大切なマネジメント視点が欠如していました。
当時は、経営戦略も大きく改善を図っていることもあり、グループの社長である青井さんからも「経営戦略と人事戦略が合っていない、今後は個の力ではなく、個の力の掛け算を引き出せるようなマネジメントが求められる」と言われていました。
経営戦略とは、グループ間職種変更や手挙げ文化など、人的資本投資につながる内容で、この戦略の実現には長年同じ部署で培うテクニカルスキルではなく、どの部署でもビジョンを描けたり、パフォーマンスが発揮できるベーシックスキルが必要でした。
そんな時に、他社でバリュー評価をやっている会社の話を聞き、あらゆる伝手をたどって、なんとか話をうかがう機会をつくることができました。実際に話をお聞きして、「これなら資質の評価をしやすく、うちでも取り入れられそう」と直感的に思い、スピード感を持って仕組みづくりをするために「人事企画」という部署を立ち上げ、本格的に始動しました。
- 制度変更にあたって、社員自らが考えるというプロセスを踏んだと思いますが、それはどうしてですか?
評価制度という働く社員への影響が大きい仕組みは、皆に納得してもらわないと制度は出来ても、本当のねらい通り浸透しないという想いがあり、時間はかかるがトップダウンで決めるのではなく、皆で話し合って組み立てる方針を取りました。
そこで、「グループ会議分科会」という、各所属・部署から数名ずつ、計100人以上を集めてプロジェクト化し、対話をしながら決めていきました。結果、約2年の時間がかかりましたが、制度になる前にそれぞれの部署でその考えを取り入れる動きがみられ、少しずつ浸透している手応えがありました。
最終的には全体の9割以上の賛成が得られたことで、これなら目的通り浸透するだろうという判断し、2017年10月に変更に踏み切りました。
- 制度を変えたことでの効果は、どのように感じられていますか?
バリュー評価で言うと、上司の評価も部下から行われるため、一方的なマネジメントでは評価されなくなり、古い一方的なマネジメント体質から、若い人から傾聴して対話の中でアイデアを引き出しつつ、上の人はスキルを提供して、実現していくようなマネジメントに変わってきました。また、本来のねらいにあったグループ間職種変更や手挙げの文化も加速的に進みはじめ、経営戦略を風土面から後押しできるようになりました。さらに、テクニカルスキルではなく、ベーシックスキルで評価を行うため、昇進スピードが上がり、30代前半の若いマネジメント層が増えました。
これまで一定の成果が出たとは思っていますが、今後、知識創造型企業の実現に向けては、さらなる検討が必要になってくると感じています。
今、再び経営戦略と人材戦略がアンマッチになりつつあるので、人材戦略委員会が立ち上げ、検討を進めています 。
実際、評価ってどうやっているの?
では、早速ここからは実際に社員がどのように評価と向き合っているのかを探っていきたいと思います!まずは、パフォーマンス評価の決め方についてです。今回は「OMEMIE」というサービスを運営している(株) 丸井のテナントサクセス推進室の社員に話を聞いていきます。
―テナントサクセス推進室ではどのようにパフォーマンス評価を決めているか教えてください!
清水:テナントサクセス推進室では、OKR(Objectives and Key Results)という目標設定の方法を使って、チームでめざす目標をパフォーマンス評価に落とし込んでいます。 これは、私の前任の方から取り入れていたのですが、引継ぎの際にこのやり方を聞いて、これは続けた方が良いなと思い、継続しています。
―具体的にはどのような進め方なんでしょうか?
清水:年度の初めに年間で成し遂げたい目標をチームの皆で決めるのですが、まずはObjectives(O)として5年後のありたい姿を設定し、そこからKey Results (KR)としてそのために私たちが達成するべき目標を決めていきます。このKRに置く目標は、少しストレッチの効いた目標に設定します。 KRを担当ごとの目標にブレイクダウンして、評価に組み込んでいきます。 年度初めの4月は、1カ月くらいかけて、チームの皆でありたい姿の合意形成をするために意見を出し合い、根詰めて対話をしています。
ここで大事にしているのは、結論までの合意形成をチームメンバーが主体となって行うということです。メンバーが主体でやることで、自分たちが成し遂げなければならないビジョンへの理解が深まると同時に共通言語化されていきます。その結果、チームの結束力が高まり、「何のためにやっているのか?」ということがわかっている状態がつくれると、業務自体も楽しくなると思うんですよね。
―確かに。方向性がチームとして合っていると、走りやすいですね。
清水:そうですね。あと、私の場合は細かく役割を決めて、スコープやタスクごとににリーダーを担ってもらってもらうことも大事にしています!役割を明確にすることで、やるべきことがより明確になって、ありたい姿という大きな目標に向かって自分がやるべきことは何なのか?ということが明確になり、より仕事が自分事になってくると思うんです。
とは言っても、全部がうまく回っているわけではないのが正直なところですし、そもそもOKRのようなやり方もグループ全体で見ても取り入れている部署は少ないように感じていますので、小さいプロジェクトからでも良いから、こういった取り組みができてくると良いなと思っています。
―チームのメンバーとしてこういったやり方を使った評価設定の決め方をどう感じていますか?
今西:最初は、やったことがなかったので正直難しかったです。考え込んでしまうことも 多かったし、抽象的な話をしているので言葉遊びのような形に陥りがちでした。
私たちはカウンターワークスさまと一緒に業務を進めているのですが、このOKRの設定については、初めはカウンターワークスの方にかなりお手伝いいただいて進めていました。今は自走していけるようになり、話し合いも楽しめるようになりました。
また、めざすビジョンの解像度が上がって、腹落ち感がでて、評価に対する意識も格段に上がったと思います。あと、皆で決めることでこの目標を達成するためにはチームとしてどうしたら良いのか?ということも意識するようにもなりましたね。 部署にもよるとは思いますが、私たちのような新しい事業を生み出すチームにはこの評価設定は合うように思います。
編集部でも同じようにチームで話をしながらパフォーマンス評価の目標を決めています!パフォーマンス評価は、正直時間はかかりますが、「何のためにこの数字を追うのか?」など自分たちのやるべきことの目的やミッションなどをチームで話し合うことで、同じ方向で走ることができているように思います。
仕事をするうえで「評価」というのは、自身のキャリアや金銭的な面にもつながる重要なものですが、日々の業務の中でおざなりになりがちであったりもするかもしれません。
今回さまざまな立場の社員の声を聞いて、評価制度においては、社員一人ひとりの意識がとても重要だということをあらためて感じ、しっかりと評価と向き合い、共に働く仲間と一緒に成果を出すために取り組んでいこうと思いました。
また、丸井グループが評価制度を刷新したことで、すべてが上手くいっているということでなく、運用面での課題というのはまだありそうです。そして、社会の変化と共に、会社における仕組みというのも常に変化していかなければならないということも感じました。
※この記事は、丸井グループオウンドメディア「この指とーまれ!」の連載記事として2022年12月に公開されたものです。