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キングダムから学ぶ「やりたい事」の見つけ方~渕副長編~

「やりたい事が見つからない」
年間1,000件を超えるキャリア相談をお受けしていますが、キャリア相談に来られる20代若手人材(大学生含む)のお悩みぶっちぎりNo1がこのお悩みです。

「やりたいこと」が決まらないから動けない。
「やりたいこと」が決まっている友人を見て焦りまくる。
「やりたいこと」を探すことが人生の目的になりつつある。
etc...

「やりたい事が見つからない病」と僕は呼んでいますが、
その病に対する明確な治療法として、クランボルツ先生という方が提唱した「計画的偶発性理論」というキャリア理論があります。

「計画的偶発性理論」はスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって20世紀末に提唱されたキャリア理論で、キャリアに関する理論は星の数ほどあるのですが、このクランボルツ先生の「計画的偶発性理論」さえ知っておけば、他は必要ない。というくらい絶対的なキャリア論だと思っています。

簡単に言うと、
❶個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるぜ!
❷だから偶発的な出来事に常にアンテナ張っておこうぜ!
❸予期しない出来事をただ待つのではなく、計画的に起こそうぜ!
これだけの理論です。

たったこれだけの理論なのですが、
「やりたい事が分からない病」に悩める20代男女の悩みはほぼこの理論で解決します。

この記事では、大人気漫画キングダムの「飛信隊」の渕副長を題材に「やりたい事の見つけ方」を考察していきます。

渕さん表紙


天下の大将軍になる。

飛信隊隊長 信の「やりたい事」は「天下の大将軍になる」事です。
戦争孤児として、下僕として幼少期を過ごした信が、同じ下僕として過ごした漂(ひょう)と掲げた目標です。

下僕は何をやっても下僕。その子供も下僕。
それを断ち切るには「武の力」で成り上がるしかない。二人で天下の大将軍になろう。そう誓い合って日々剣術に打ち込みます。

生まれながらの環境や、下僕として過ごした原体験があり、そこから脱却する唯一の方法として武を鍛えて天下の将軍を目指す。

自身の原体験やコンプレックス等からくる強烈な想いが自分の「やりたい事」に昇華していくパターンです。

社会起業家にはこのパターンが多いですね。

社会の様々な問題をビジネスで解決する社会起業が増えてきていますが、その多くの場合はやはり何かしらの「原体験」が出発点になる事が多いです。

・震災でこんな体験をして、、、
・海外でこんな光景を目の当たりにして、、、
・こんな理不尽な仕打ちを受けて、、、

出発点が社会ではなく、自分の中にある。がポイントです。

「やりたい事」が決まっている。
それを実現するために、逆算してキャリアを積んでいく。これはキャリア論としては王道中の王道の道です。

やりたい事が見つからない病患者」はその王道を進む人を見て、僕も何か見つけなきゃ!と焦るわけです。ただ焦って見つかるものでもなければ、とりあえず決めてみても想いがなくて続かない。となるわけです。

その王道に対して異を唱える理論がクランボルツ先生の「計画的偶発性理論」です。

やりたい事なんて最初から決める必要なくね?という考え方です。
渕副長のキャリアに沿って解説していきます。

渕副長のやりたいことは何?

100人から始まった飛信隊ですが、この記事を書いている2020年3月12日現在では8,000人の大所帯となっています。

その飛信隊の副長を務める渕さんは8,000人規模の会社の副社長といえます。

渕さんは大企業の副社長を昔から目指していたのか?
といえば、答えはNOです。

今でこそ8,000人を抱える飛信隊の副将ですが、彼はもともと信と王宮のただの連絡係です。それが、信から王騎将軍の城に連れていけとお願いされ、お金を積まれて渋々連れていきます。

王騎将軍に鍛えてもらう為に城を訪れた信でしたが、直接鍛えてもらうことはできず、無法地帯の平定というミッションに放り込まれます(正確に言うと蹴落とされる)。

その時、渕さんも一緒に無法地帯に置いて行かれたこと。
そんなつもりは全くないのに、ただ送り届けただけなのに、一緒に平定のミッションに巻き込まれる。これは渕さんにとってまさに「偶発的」な出来事です。

クランボルツ先生の言う、
個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるぜ!
ですね。

しかし、平定というミッションを信と二人で成し遂げて秦国へ戻る時、渕さんの顔つきは明らかに変わっています。そのまま王騎将軍率いる趙との戦(馬陽)に出陣する際には、100人隊の飛信隊の副長として覚悟を決めて参加しています。

戦争には参戦せずに家に帰り、連絡係の任に戻る。
という選択も当時の渕さんにはできたはずです。

しかしここで渕さんアンテナが反応するわけです。

❷偶発的な出来事に常にアンテナ張っておこうぜ!
のアンテナです。

「信殿と一緒にいると、平凡な自分の人生が何か変わるかもしれない!」
と無意識に渕さんアンテナで感じ取った結果、「信殿と一緒に戦場に行く」というアクションを選択します。

このアクションこそ、
❸予期しない出来事をただ待つのではなく、計画的に起こそうぜ!
です。

家で待つよりも、信殿と一緒に戦場に飛び込めば、更なる偶発的な出来事が自分に訪れるはず。色んな刺激がありそう。
だから自分の意志で意図的にそこに飛び込んでみたわけです。

しかも、飛信隊の初戦、秦軍左翼の別動隊として趙将馮忌(フウキ)を討つシーンでは、隊長の秦が敵本陣に迫れるよう、自らの命を犠牲にしてでも信の武功を手助けする役割を買って出ています。

戦場で様々な偶発的な瞬間を重ねた結果、信殿を王騎将軍の城に連れていくことすら嫌がっていた渕さんが、信殿の夢をかなえる為に自身の命を懸けてもいい。と思えるほど覚悟が固まっているわけです。

信殿の為に。が渕さん自身のやりたい事になった瞬間とも言えます。

その後5,000人隊として参戦した対趙国の黒羊丘の戦において、渕さんは自らのキャリアを自問自答するシーンが出てきます。

ここまで大きくなった飛信隊で自分が副長を務めていてよいのか・・・
自分はそもそもただの連絡係だったはず・・・
自分の能力を超えた役割から身を引くべきではないのか・・・

そんな葛藤を乗り越え、見事に飛信隊第三の橋を架ける事に成功した渕さんを見て、元漁師の岐鮑(きほう)は「渕副長にしか見せれない背中がある」と称賛します。

明確な目標を持ってパッション全開で走る信隊長、
圧倒的な武の力で組織を勝利に導く羌瘣(きょうかい)ではなく、
特別な力はなくても、強い責任感を持って目の前の与えられた役割をガムシャラにクリアしていく渕さんの姿こそが、多くの兵が目指すべき姿である。というメッセージです。

この渕さんの背中は、

やりたい事が自分の中になくても、まずは自分のやるべきことを責任感を持って我武者羅にクリアしていくことで、自分の「やりたい事」よりももっと大事なことが見つかる事があるよ。

もし自分の中にやりたい事がなくても、やりたい事を強烈に持っているパッション溢れるリーダーの下で働く事で、それが自分のやりたい事に昇華していくことがあるよ。

という「やりたい事が見つからない病間患者」へのメッセージなのではないかと思うわけであります。

渕さんに限らず、
社会で活躍しているビジネスパーソンや、起業家の多くも、20代のうちから明確にやりたい事を定めていたわけではなく、とにかく与えられた仕事や役割を全力で全うし続けた結果、気が付けば自分の立場や能力が高くなり、その中で「やりたい事」が定まってくる。というキャリアのルートを辿っている人がほとんどです。

天下の大将軍を目指す信を遠目から見て、
「自分は何を目指そうか?」と家でもんもんと悩んでいる暇があったら、
一緒に戦に出て我武者羅に戦ってみたら?という事です。

ちなみに趙三大天の李牧先生も、
山に一人でこもって悶々と「自分の道」を探している龐煖(ほうけん)さんに対して、「その答えは戦場にあります」とキャリアカウンセリングしていますね。さすが李牧先生。。。

ただの連絡係だった渕さんが8000人隊の副長になるまでの道のりを「キャリア論」に沿って考えてみました。

次回は、渕さん同様、特に夢も目標もなく生きる事に精一杯だった河了貂(かりょうてん)が「やりたいこと=軍師」を見つけて、8000人隊の軍師にのし上がっていく道のりを「キャリア」の視点で考えてみたいと思います。

それでは。



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