スポーツトレーナー養成専門学校の授業で調理実習をしました
※この記事は無料で読めますが、授業やセミナーで用いるような知識やノウハウをふんだんに詰め込んでいるので、「勉強になったよ!」という場合は投げ銭をいただけると嬉しいです。
スポーツ栄養士×アスレティックトレーナーの後藤優子です。
私はいま、複数のトレーナー養成専門学校でスポーツ栄養学の授業を担当しています。
その中のひとつの学校ではカリキュラムに調理実習が組み込まれているので、喫食対象者の設定や予算、献立の立て方、参考にしたレシピサイト、栄養計算などについて記しておこうと思います。
ちなみに、調理実習当日までに上記の作業は授業2週分の時間を要しました。
1.喫食対象者の設定(摂取エネルギーの設定)
1食あたり何キロカロリーにするのか、どんな競技の、どんな体格の選手が、どのタイミングで食べるのかを想定します。
今回は『身長170cm、体重70kg、体脂肪率15%のサッカー選手が練習後に食べる昼食』としました。
このとき、定められた計算式を用いて1日の推定必要エネルギー量を算出します。
計算式:28.5×除脂肪量×身体活動レベル(PAL)
※除脂肪量=体重ー体脂肪量
→骨、筋肉、水分など
※28.5×除脂肪量=基礎代謝量
※身体活動レベル…種目別、通常練習期
【1日の推定必要エネルギー】
28.5×{70×(1ー0.15)}×2.00=3392kcal/日
これを1食あたりに分けると、約1100kcalとなります。
2.献立の立て方、参考サイト、予算
献立は、主食、主菜、副菜、乳製品、果物の5つのカテゴリを揃えるようにします。
また、練習後の昼食を想定しているので、比較的あっさりと食べやすく、午後の練習に備えて早くリカバリーできるように糖質をしっかり(エネルギーの60%程度)とれるように意識しながら組み立てていきます。
参考にしたレシピサイトは、私が以前勤めていた会社が運営している『ソラレピ』。
このレシピサイトは、調理師や栄養士が作成したレシピを本社社員が試作して、本当に美味しかったものだけが掲載される割りと信頼度の高いもの。
栄養計算もしっかりおこなっています。
私が作ったレシピもいくつかあるので、ぜひのぞいてみてください。
予算は1食あたり500円。主食(ごはん、麺など)、調味料は含まないものとしました。
【献立内容】
▣豚ときのことゴボウの味噌うどん(610kcal)
▣ブロッコリーとささみのごまマヨ和え(125kcal)
▣黒豆チーズ餅(236kcal)
▣フルーツヨーグルト(70kcal)
合計:1041kcal
※当日はうどん9玉で8人前作ったので、1100kcalに到達していると思われます。
栄養計算に使用したサイトは『グラムのわかる写真館』のもの。
身長、体重、身体活動レベル、性別なども入力する必要がありますし、結果が非常に見づらいのですが、使用量が写真で確認できるのが便利なので授業ではよく利用しています。
3.作業工程表
今回のメンバーはふだん料理をほとんどしないようだったので、いつ、誰が、何をするか、流れをしっかりと決めていきました。
ごぼうのささがきやブロッコリーの下茹でがありますが、当日は冷凍食品を用いて時短しました。
4.調理実習当日
エプロンとバンダナを着けて手洗いをしたら、食材と作業工程、担当を確認。
冷凍食品を有効活用したのが功を奏し、学生たちは混乱することなくひとつひとつの作業にじっくり取り組むことができました。
包丁をほとんど使ったことのない学生がおり、しっかり『猫の手』を作って切っていたのがとても愛らしかったです。
また、肉の質があまり良くなかったのか、ささみの筋取りで身がボロボロになったので、茹でてから取ることにしました。
うどんを9玉茹でる際に大きな鍋1つでできればよかったのですが、中ぐらいのサイズしかなかったので4ヶ所に分けて茹でました。
うどんのつゆに使う味噌は液体味噌を利用してみたのですが、通常の味噌よりも薄味だったので味の調整が難しかったです。
麺を入れることを想定して少し濃いめに味付けしてね、と伝えていたのですが、大さじ1杯にも満たない量をちょびちょびと足していたので、味の変化があまりつかず…。
そこで私が一気に大さじ3杯分ぐらい入れると、学生たちは「そんなにやっちゃうの?!」と若干ひいてましたが、いい感じに調整できていたので驚いていました。
一家族分より多めに作る際は思い切りが必要です。
5.完成!
そうして出来上がったものがこちら。
色味が無い笑
どんな器があるのかわからなかったし、こうして作ってみて初めて、栄養価以外に気にしたほうがいいこと(彩りなど)がわかるものです。
例えば、うどんににんじんを入れる、フルーツヨーグルトは混ぜてフルーツの色を見せる、ジャムをかけるなどをすると、もっと美味しそうに演出できたかもしれません。
6.いざ喫食
1100kcalの食事。完食するとかなりお腹が苦しくなります。
栄養士やトレーナー、指導者、保護者の中には、選手に「もっと食べろ」と簡単に言う人がいますが、実際に毎食この量を食べるのって思った以上に負荷がかかるものです。
だからこそ、栄養価ばかりに目を向けるのではなくて、食べやすい大きさ、固さ/軟らかさ、味付け、食欲をそそる香りや彩りに配慮して献立を立てる必要があるわけです。
他にも、予算やかけられる時間など制限される事項もあるので、毎日継続できることを優先しながら、どこを工夫すれば今よりも「ちょっと」良くなるのか考えて取り入れてみてください。
最後に記念撮影。
みんなの安堵した表情をお見せできないのが残念。
いかがだったでしょうか。
今回は授業を例にお伝えしましたが、アスリート向けの調理実習も実施しています。
コロナ禍で現在は開催ができていませんが、ご興味のある方はマルゴトキカクのfacebookよりご連絡いただけたらと思います。
このような状況下で調理実習をさせてもらえたこと、大変感謝します。
学生の皆さんも、お疲れさまでした!
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