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将来への不安を抱える人に読んでほしい「Everybody's Free To Wear Sunscreen」全訳

Dr Sに捧ぐ

この記事では、また私の好きな言葉を紹介したい。それは「Everybody's Free To Wear Sunscreen」という歌/エッセイだ。

このエッセイとの出会いは、高校時代に留学していたイギリスの高校だった。それは全寮制の高校で、毎晩寮ごとの集会があった。15分程度の、日本でいうホームルームのような時間だった。よって主題は単調な連絡事項になるわけだが、週に1度ほど、先生が読み聞かせをしてくれることがあった。あるときは天声人語みたいな新聞の切り抜きだったり、またあるときは『星の王子様』の一節だったりと、バラエティ豊かでけっこう楽しかった。

だが、その中で1つだけ、特段強く印象に残ったのが、寮長先生が朗読してくれた「Everybody's Free To Wear Sunscreen」だった。とても心に響き、どこかに全文が載っていないかと検索したら、YouTubeで見つけ、折に触れては聞くようになった。

これはもともとは歌でなく、大学の卒業生に贈るメッセージ、という設定で書かれた人生訓であるが、これから広い世界へ出ていかなければならないのだ、という意識を持ち始めた10代後半の私の期待感と不安の入り混じった心に、大いなる安らぎを与えてくれた。進路の選択に悩むとき、将来への不安に苛まれるとき、この歌を思い出すと、まるで優しく頼りがいのある先生に導かれていくような気がして、心が安らぐのだ。そしてきっと、私と同じ境遇にある全ての人にも、同じように役に立つと思う。

そこで、この私の大好きな歌/エッセイを日本の仲間たちにも共有するため、翻訳をすることにした。この記事はその成果である。恩師Dr Sが私にしてくれたことを、少しでもペイ・フォワードできれば、これ以上の歓びはない。

【拙訳】

'99年度卒業生の皆さん、

日焼け止めを塗りましょう。

将来へのアドバイスといえば、これくらいしかありません。日焼け止めの長期的な効能は、科学者によって証明されています。しかし、この後の私の話はといえば、私自身のとりとめのない人生経験以外に信頼できる根拠などはありません。では、そんなお話を致しましょう。

若さの美と力を楽しんでください。いや失礼、若さの美と力など、失ってみるまでわからないでしょうね。ですが、信じてください。20年後に今のご自身の写真を見たとき、今の皆さんにどれだけの可能性が開かれていて、どれだけ美しいか、今は想像もできないほどに感じるでしょう。皆さんは、思っているほど太ってはいませんよ。

将来の心配は止めましょう。もし心配するなら、それは風船ガムで方程式を解こうとするような行為であると思ってください。人生の本当の問題というのは、たいがい想像もしていないようなものだからです。暇な火曜の午後4時に、皆さんを不意打ちしてくるようなね。

毎日1つ、苦手なことにチャレンジしましょう。

歌を歌いましょう。

他人の心を、乱暴に扱ってはなりません。そしてあなたの心を乱暴に扱うような人のことは、我慢してはなりません。

歯をよく掃除しましょう。

嫉妬で時間を浪費してはいけません。他人に先んずることもあれば、後塵を拝することもあるでしょう。でもレースは長い。そして、結局のところ、それは自分との戦いでしかないのです。もらった褒め言葉は覚えておきなさい。侮辱は忘れてしまいましょう。これが上手くできたら、私にもその方法を教えてください。

古いラブレターはとっておきなさい。銀行の明細は捨ててしまいましょう。

ストレッチをしましょう。

人生でやりたいことがわからなくたって、後ろめたく思う必要はありません。私の知ってる中で一番面白い人も、22歳の時にはやりたいことが決まっていませんでした。魅力的な40代の人だって、やりたいことなどまだ見つかっていないこともあります。

カルシウムをたくさん採りましょう。膝には優しくしてくださいね。ダメになってから後悔しても、遅いですよ。

結婚はするかもしれません。しないかもしれません。子供ができるかもしれませんし、できないかもしれません。40で離婚するかもしれませんし、75回目の結婚記念日でファンキー・チキンを踊ることになるかもしれません。いずれにせよ、自分を過度に幸運だとおもったり、卑下したりしないことです。皆さんが選ぶ道はどれも保証などついていませんし、他の人が選ぶ道だってそうです。

自分の体をめいっぱい使って楽しんでください。自分の体のことや、それを他人がどう思うかとか、怖がってはいけません。皆さんの体は、皆さんの最高の道具なのです。

踊りましょう。例えリビング以外にやる場所が無くとも。

指南書を読みましょう。例えその通りにやらなくとも。

美容雑誌を読むのはよしなさい。自分のことが醜く見えるだけですから。

親の話はよく聞いておきなさい。いついなくなってしまうか分かりませんから。きょうだいには優しくするんですよ。きょうだいは皆さんの過去を一番よく知っていて、将来に渡って付き合いの続く可能性が一番高い存在です。

友達は、できてはなくなっていくものだと理解しておきなさい。ただ大切な数人だけは離さずにおくべきです。遠くに住んでいても、ライフスタイルが違っても、付き合い続けるよう努めなさい。年を取ればとるほど、若いころの知り合いが必要になってきますから。

一度はニューヨークに住みなさい。でも、お堅い人になってしまう前に離れるのです。北カリフォルニアにも一度は住みましょう。でも緩い人になる前に離れるのです。

旅をしましょう。

避けられない真理は受け入れなさい。ものの値段は上がり、政治家は不祥事を起こします。そしてあなたは、年をとってゆくのです。「若いころは良かった」と思うでしょう。物価は安くて、政治家は誠実で、子供は目上の人を敬っていた、と。

目上の人を敬いなさい。

誰かの援助を当てにしてはなりません。信託にお金がある人もいるでしょう。将来は、お金持ちと結婚できるかもしれません。でも、それらはいつ無くなってしまうか分からないものです。

髪を変にいじってはいけませんよ。やり過ぎると、40ごろには85のような見た目になってしまいます。

誰のアドバイスに乗るかは、慎重に考えてください。ただし、アドバイスをくれる人には辛抱強く向き合うこと。アドバイスというのは、ノスタルジーの一種なのです。過去をがらくたの中から釣り上げて、汚れを拭き取って、醜い部分は塗りつぶして、実際よりも高い価値でリサイクルする、そんな行為なのです。

でも、日焼け止めの話だけは、信じてください。

【原文】

Ladies and gentlemen of the class of '99:

Wear sunscreen.

If I could offer you only one tip for the future, sunscreen would be it. The long-term benefits of sunscreen have been proved by scientists, whereas the rest of my advice has no basis more reliable than my own meandering experience. I will dispense this advice now.

Enjoy the power and beauty of your youth. Oh, never mind. You will not understand the power and beauty of your youth until they've faded. But trust me, in 20 years, you'll look back at photos of yourself and recall in a way you can't grasp now how much possibility lay before you and how fabulous you really looked. You are not as fat as you imagine.

Don't worry about the future. Or worry, but know that worrying is as effective as trying to solve an algebra equation by chewing bubble gum. The real troubles in your life are apt to be things that never crossed your worried mind, the kind that blindside you at 4 p.m. on some idle Tuesday.
Do one thing every day that scares you.

Do one thing every day that scares you.

Sing.

Don't be reckless with other people's hearts. Don't put up with people who are reckless with yours.

Floss.

Don't waste your time on jealousy. Sometimes you're ahead, sometimes you're behind. The race is long and, in the end, it's only with yourself.
Remember compliments you receive. Forget the insults. If you succeed in doing this, tell me how.

Keep your old love letters. Throw away your old bank statements.

Stretch.

Don't feel guilty if you don't know what you want to do with your life. The most interesting people I know didn't know at 22 what they wanted to do with their lives. Some of the most interesting 40-year-olds I know still don't.

Get plenty of calcium. Be kind to your knees. You'll miss them when they're gone.

Maybe you'll marry, maybe you won't. Maybe you'll have children, maybe you won't. Maybe you'll divorce at 40, maybe you'll dance the funky chicken on your 75th wedding anniversary. Whatever you do, don't congratulate yourself too much, or berate yourself either. Your choices are half chance. So are everybody else's.

Enjoy your body. Use it every way you can. Don't be afraid of it or of what other people think of it. It's the greatest instrument you'll ever own.

Dance, even if you have nowhere to do it but your living room.Read the directions, even if you don't follow them.

Do not read beauty magazines. They will only make you feel ugly.

Get to know your parents. You never know when they'll be gone for good. Be nice to your siblings. They're your best link to your past and the people most likely to stick with you in the future.

Understand that friends come and go, but with a precious few you should hold on. Work hard to bridge the gaps in geography and lifestyle, because the older you get, the more you need the people who knew you when you were young.

Live in New York City once, but leave before it makes you hard. Live in Northern California once, but leave before it makes you soft.

Travel.

Accept certain inalienable truths: Prices will rise. Politicians will philander. You, too, will get old. And when you do, you'll fantasize that when you were young, prices were reasonable, politicians were noble and children respected their elders.

Respect your elders.

Don't expect anyone else to support you. Maybe you have a trust fund. Maybe you'll have a wealthy spouse. But you never know when either one might run out.

Don't mess too much with your hair or by the time you're 40 it will look 85.
Be careful whose advice you buy, but be patient with those who supply it. Advice is a form of nostalgia. Dispensing it is a way of fishing the past from the disposal, wiping it off, painting over the ugly parts and recycling it for more than it's worth.

But trust me on the sunscreen.

[原文記事]
Mary Schmich. 1997. Advice, like youth, probably just wasted on the young. https://www.chicagotribune.com/columns/chi-schmich-sunscreen-column-column.html

注)拙訳は歌バージョンに準拠しており、一部内容は異なる。初めの一節は原文では「Ladies and gentlemen of the class of '97:」だが、歌では「the class of '99」と、発表年に合わせてアレンジしたようだ。

加筆)2024/1/7 一部抜け落ちについて加筆

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