T. Maruyama

翻訳アカウントになりつつあります。エッセイも少々。

T. Maruyama

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最近の記事

生の暴力性と建築――『東京都同情塔』を読みつつ

この世界に生まれるということは、残酷である。人は生まれてくることに同意したわけでもなく、受動態で生まれる(be born)。サルトルはそのことを「被投企性」と呼んだ。そして人は、否応なく、歓びばかりでなく苦しみや絶望を少なからず与えてくる人生を生きさせられることになる。その不条理を正当化しようとする心理が、仏教における「業」、キリスト教における「原罪」という概念を生み出したのだと考えても、不自然ではない。世の中がどうしようもなく根本的に苦しみに満ちているものだと考えるよりは、

    • 将来への不安を抱える人に読んでほしい「Everybody's Free To Wear Sunscreen」全訳

      Dr Sに捧ぐ この記事では、また私の好きな言葉を紹介したい。それは「Everybody's Free To Wear Sunscreen」という歌/エッセイだ。 このエッセイとの出会いは、高校時代に留学していたイギリスの高校だった。それは全寮制の高校で、毎晩寮ごとの集会があった。15分程度の、日本でいうホームルームのような時間だった。よって主題は単調な連絡事項になるわけだが、週に1度ほど、先生が読み聞かせをしてくれることがあった。あるときは天声人語みたいな新聞の切り抜き

      • ニーバーの祈りのマインドセット

        好きな言葉を聞かれたら、私は真っ先にラインホールド・ニーバーの祈りを挙げる。そのくらい好きだ。この祈りには全ての人生訓のエッセンスが詰まっていると思う。色々なエッセイを読んでいても、いつもこれに行き着くのだ。 しかし、これは最初の部分こそ有名だが、その続きがあることはあまり知られていないように思う。そこで今日は、その全文をご紹介し、また私なりにこの祈りから見出したマインドセットを共有したい。 God grant me the serenity to accept the

        • 高校時代の留学で得たもの

          私は高校時代に11か月間(高2の9月から高3の7月にかけて)イギリスに留学していた。それから2年ほど経ち、大学2年生になった今、その経験の意味を考えている。まだ不完全だが、現状の答えを共有したい。 「寄り道」としての留学いきなりネガティブな話だが、高校時代の留学は明確な利益をもたらすものではないように思われる。高校レベルでは、日本に存在しない価値の高い知識がいきなり身につくことはない。そもそも、現在の日本で手に入らない知識というものも少ない。 また、最近では大学まで含めると

          「宿題を終わらせてから遊ぶ」スタイルの危険性 ━━━ 漁師とコンサルタントの寓話に寄せて

          「夏休みに宿題が終わっていなくても遊べる子」の方が、「先に宿題を終わらせてから遊ぶ子」よりも良い生き方ができるのではないか?「メキシコの漁師とMBA持ちのコンサルタントの話」を読んでそんなことを思った。 この寓話はいろいろな観点から考察できるが、「このコンサルタントのようにはなりたくない」と思われる方も多いだろう。私もその1人だ。しかしながら、実際にはコンサルタントのような「一生遊んで暮らせるお金をためてからのリタイア」に対する憧れを否定することもできない。 振り返ってみ

          「宿題を終わらせてから遊ぶ」スタイルの危険性 ━━━ 漁師とコンサルタントの寓話に寄せて