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【エッセイ】柔術の島|柔術家/歌手/海人の独り言 |文:渡辺直由@石垣島

私が代表を務めております石垣島の柔術チーム [Island BJJ Basecamp Ishigaki] (通称アイランドBJJ)から、大阪だいしんアリーナで4/19.4/20.4/21の三日間に渡り開催されたブラジリアン柔術の全日本マスター選手権に出場した関口有貴子、住吉優のニ人の選手の応援として帯同してまいりました。

その全日本マスター(30歳以上)選手権において
・関口有貴子が紫帯階級別と無差別で優勝の2冠
・住吉優が青帯階級別銀メダル→紫帯昇格

という大変優秀な成績を収めましたのでご報告させていただきます。

ブラジリアン柔術とは

詳しくは長くなりますので簡単にまとめますと、古流柔術から生まれた柔道が100年以上前にブラジルに伝わり、より寝技の攻防に特化した競技や護身術/ストリートファイトへと変わっていったものがブラジリアン柔術となります。

日本は今ブラジリアン柔術ブーム

日本では最近俳優の岡田准一さん玉木宏さんがブラジリアン柔術の大会に出るなどしてニュースになり「柔術ブーム」とも言われております。
また、世界では既に20年も前からハリウッドスターたちが柔術を習うなどしており、近年では「Facebookの創始者ザッカーバーグ氏と世界で1位とも2位とも言われる富豪イーロン・マスク氏が柔術(もしくはMMA?)で対戦するかもしれない!?」などというニュースが大きな話題を呼んでいます。
今や柔術の競技人口の伸び率は圧倒的に世界一であり、諸説ありますが競技人口自体も世界一なのではないかとする説もある程の勢いがあるスポーツなのです。

実は八重山のブラジリアン柔術の歴史はかなり古い

日本にブラジリアン柔術のクラスが初めて誕生したのはおそらく1996〜1997年頃で、私がブラジリアン柔術を始めたのが1998年か1999年なのですが、その少し後くらいにはもう八重山に《石垣島BJJ》というチームが誕生しておりまして、その後には西表に確か《山猫柔術》というサークルも出来ていました。

この頃はまだ国内には柔術道場もサークルも数える程しかなく、沖縄県では《沖縄サブミッション柔術》さんと並んで県内では最古と言える歴史があるのが八重山の柔術チームなのです。当時の私はまだ石垣島へ移住する前でバックパッカーの旅行者として練習に参加させていただいておりました。それから数回の休止やメンバー変更、チーム名の変更を経て2019年に現在のアイランドBJJが誕生したと言うのが簡単な流れです。

石垣に移住して来た時はまだ白帯のビギナーだった2人

アイランドBJJが誕生する約1年前くらいのほぼ同時期に関口有貴子(以下アキちゃん)と住吉優さん(以下住吉さん)が石垣島に移住してきまして、当時はまだサークルとして活動していた柔術チームの練習に参加してくれるようになりました。まだ柔術を他のチームで始めて1年前後くらいの二人のスパーリングの動きはまだ荒削りながらも、大きな才能を秘めている事が私には一目でわかりました。

ブラジリアン柔術の帯基準の話

ちょっと前置きが長くなりますが、今回二人が成し得た偉業をご理解いただくためにも、ブラジリアン柔術の帯昇格の基準の厳しさについて触れておかなければいけません。

ブラジリアン柔術では白帯の次の帯である青帯を巻くためにも平均して週3回以上の練習を3年以上(柔道やレスリングなどの経験でもない限りはこれがほぼ最低ライン)で続ける必要があり、ブラジリアン柔術青帯の取得の難易度は他の武道の黒帯の二段以上、紫帯ともなれば取得に5年から10年がかかる方も珍しくありません。
2000年代初頭は紫帯を巻けば、それが道場(チーム)の代表としての資格になる程であり、現在も国内外の有名/名門であるブラジリアン柔術道場でさえ紫帯は指導員を任される事もある、本当に凄い帯なのです。

うちの昇格基準は厳しい方である

ちなみにうちのチームの基準は理由があってけっこう厳し目に設定しています。
離島で練習相手も少なく、現在は最大で週に3回の練習日しかありません。普通に考えたら少し昇格基準を緩めにしても良いのではないかと私も時折思うのですが、やはり石垣島という場所柄、内地や海外からの出稽古の方も沢山いらっしゃいましてスパーリングを一緒にしますので、キチンと世界基準と合わせるように設定しなければならないので心を鬼にして厳しい目で見させて頂いております。

石垣島の柔術環境の話

《全日本》と名の付くような大規模な大会には基本的には週4回以上の練習をこなすような方しか出て来ませんので、その中で週に1〜2回の練習しか出来ないアキちゃんと住吉さんが表彰台に上がった事は快挙であり、柔術に25年以上関わって来た私だからこそ、恐らく本人たちよりも驚いています。

正直な話、アキちゃんに関しては努力はもちろんなのですが女性とは思えないような筋力と俊敏性、技のタイミングや突破可能な空間(隙)を認識する上での極めて高い能力があるので、本人も課題にしている《試合慣れ/メンタル面》の問題(まだ試合経験が少ない)を克服すれば少ない練習回数であったとしても優勝はほぼ間違いないと思っていました。

対して住吉さんは肩の怪我などで半年ほどあまり濃い練習も出来ておらず、加えて国内最激戦区とも言える男子のフェザー級だったので技術はあってもスタミナ的に1回以上勝つのは相当厳しいのではないかと内心思っていました。
しかしフタを開けて見れば初戦を危なげなく、2回〜3回戦も激闘ながら最終的にはしっかりとした差をつけ、決勝でも逆ブロックから圧倒的な強さで全ての試合を秒殺で上がってきた相手に対して、序盤は大量得点を奪いリード、最後は逆転一本負けでしたが石垣島の練習環境や怪我での休養期間を考えると大勝利ともいえる素晴らしい戦いをしました。

2人の快挙の理由

二人が何故このような快挙を成し遂げる事が出来たのか、それは長年指導をしてきた僕にも正直なところ分からない部分があります。しかし確かなのは本人たちの才能や努力と、あとは石垣島の豊かな自然環境、そして石垣島に旅行がてら出稽古に来て下さる柔術家の皆さん、流派や道場の垣根を越えて2人に稽古を付けて下さいました八重山極真空手の田福雄市先生、柔道の仲宗根政門先生のお陰です。
あと先述した快挙に繋がった未知のパワーの部分はきっと八重山の神様のご加護なのではないかと勝手に思う事にして感謝したいです。

で…肝心の私は2人に何かしたのかというと、実はほぼ何もしておりません(笑)冗談ではなく本当にほぼ何もしていないのです。2人の才能や性格を考えての事なので誰にでも当てはまるような再現性がある方法ではないのですが、今の時期はそれ(勝手に伸びてもらう)が良いと思ってそうしました。そしてそれを不満に思わず理解してくれた2人が今回出してくれた結果が答えであり、皆と僕と石垣島の勝利だと思っています👍

皆さんもブラジリアン柔術やってみませんか?

最後になりますが、実は日本国内、いや世界的に見てもブラジリアン柔術の長い歴史がある石垣島で、皆さんブラジリアン柔術を始めてみませんか!?

石垣島が《柔術の島》なんて事で有名にでもなったら岡田准一さん玉木宏さんはもちろん、木村拓哉さん、イーロン・マスク、ザッカーバーグ、キアヌ・リーブス、トム・ハーディ、クリス・ヘムズワース、ガイ・リッチーなどなど、柔術やってる有名人/著名人がきっとみんな石垣島に来ちゃうと思いますよ〜🏝

皆で柔術やって大スターと取っ組み合いしましょう♪
※岡田准一さん、玉木宏さんは全国の柔術道場巡りしているそうですよ(御本人がSNSに上げてます)


この記事を書いた人

渡辺直由(柔術家/歌手/海人)
1975年8月4日生まれ。東京都出身。19歳でメジャーレーベルから歌手デビュー。2004年に盟友早川光由と共にトライフォース柔術を創設。柔術世界選手権や欧州選手権、プロの舞台でも活躍。2011年に現役を退き憧れの八重山に移住。電灯潜り漁師(現在休業中)を経て2022年6月に美崎町にカラオケ&弾き語りバー《アームバー》をOPEN。現在も代表としてトライフォース石垣島支部で柔術クラスを持ち、後進の育成に努めている。


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